小湊悠貴 『ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人8』 ― 2024/10/01
かわいい表紙に癒やされるシリーズです。
なんと、今回はラストチェックイン、完結篇です。
お祝いに、いつもこういう文庫本はまとめて紹介するのですが、特別に一冊だけで紹介します。

地元の名士・高瀬家の娘、紗良は実家を出て独立し、横浜山手にあるホテルクラシカル「猫番館」のパン職人として働いている。
四ヶ月前から同じホテルのコンシェルジュ、本城要と付き合っているが、周りには内緒にしている。
しかし、五月に猫番館でブライダルフェアを開催するので、リサーチのために結婚式場に二人で行ったのを、祖父の運転手に見られてしまう。
運転手から話を聞き、祖父はすわ、一大事と、高瀬家の男性陣を集める。
彼らを前に祖父は、その男が紗良にふさわしい相手かどうか見極めると言い放つ。
猫番館のパティシエをしている叔父からその話を聞き、みんなに付き合っていることを話すことにする紗良だったが、問題は祖父だ。
どうやって祖父と要を会わせるのか。
祖父は要を気に入るだろうか…。
ところが、思いがけないところで、祖父と要は会ってしまう。
最初は友好的であったが、最後には紗良を幸せにできる男かどうか、じっくり見極めさせてもらうと、祖父は要に言渡すのだった。
さて、無事にブライダルフェアは終わるのだろうか。
そして、紗良と要の未来は…。
最初は紗良が作るパンが本当に美味しいのかどうか疑問でしたが、この頃は腕を上げ(というか、作者の書き方が上手くなったのか)、美味しそうです。
紗良が和菓子好きな祖父のために特別に作った桜餡パン、食べてみたいです。
幸せな終わり方で、よかったです。
要と紗良の未来は未確定ですが、後日談でも書いてくれるといいですね。
シリーズの順番を載せておきます。
①『ホテルクラシカル猫番館』
⑧『ホテルクラシカル猫番館 8』
乃南アサ 『マザー』 ― 2024/10/02
五つの短編集。

「セメタリー」
藤原岬樹は自分の家が「ちびまる子ちゃん」に似た家族だと思っていた。
しかし、最初に兄が、その数年後に姉が大学進学と共に家を出ていき、そして一番下の岬樹も大学に入り、上京した。
そんな家に祖父母と父と母が残っていた。
やがて祖母に介護が必要になり、祖父もボケてきた。
心配する岬樹たちに母は大丈夫だから家に帰ってくるな、自由に好きなように生きなさいと言う。
程なくして祖父、祖母、そして父までもが亡くなる。
コロナ禍も終わり、岬樹は久しぶりに田舎に帰ってみた。
すると、うちの墓がない。
「ワンピース」
冴子の兄は元医師。過労から鬱病にかかり、離婚し、仕事もせず、母と暮らしていた。
昨年、母が亡くなり、遺産放棄をして欲しいと言う連絡があり、冴子は同意する。
そろそろ母の一周忌だというころに、兄から再婚したという連絡がある。
相手は会えばわかるからと、どこの誰だか教えてくれない。
冴子が一周忌の法要の前日に兄のマンションに行ってみると、そこにいたのは…。
「ビースト」
柏木美也子のところに縁を切っていた娘の和美から電話が来る。
住んでいるアパートを追い出されることになり、二人の息子がいるというのに、行き場がないと泣いて言うのだ。
よせばいいのに、ついつい越してくることを承諾してしまう。
越してきたらきたで、生活がとんでもないことに…。
「エスケープ」
上川陽希は母の胎内にいるころから、何故かわからないが、「早く。早く。早く、この女から逃げなきゃ。そばにいてはいけない」と思っていた。
大きくなって気づく。何故かを。
「アフェア」
瀧本は定年延長の期間が切れた途端に、妻に離婚を切り出され、退職金と年金の半分と養育費まで取られ、今はマンションの管理人をして暮らしている。
ある日、佐野という女性から結婚する娘が引越しをするので駐車場を使ってもいいかと尋ねられる。
翌日、娘は越していき、佐野は一人暮らしを始めるが、それから一ヶ月が経つか経たないかの頃から佐野の雰囲気がガラッと変わる。
しばらくして、同じマンションの男性たちと親密な交際をしているという噂が聞えてくる。
心配した娘や息子がやって来るが、佐野の行動はおさまらない。
しかし、ある日…。
心の底からぞくぞくするお話です。
長年、母はこうでなくてはいけないという呪縛に囚われてきて、その咎が外れた女は怖い。
我慢は美徳ではないです。
とにかく私は「アフェア」の佐野さんにあっぱれと言いたい。
お勧めですが、読後感はモロ悪いです。
マザコンの人や母に絶大なる幻想を持っている人は読まない方がいいかもww。
「画家ボナール ピエールとマルト」を観る ― 2024/10/04
ナビ派の画家、ピエール・ボナールの映画を観てきました。
ボナールは1867年に父親が陸軍省の局長というブルジョアの家に生まれ、法律を学びましたが、画家になる道を選びました。
ナビ派とは、ゴーギャンの色彩とセザンヌの構成力を参考にした、ポスト印象派とモダンアートの中間点に位置する画家集団のことを指します。
ボナールはナビ派の中でも特に日本美術に影響を受け、遠近法を取り入れていない平面的で奥行きのない構成の絵を描いたので、ナビ・ジャポナール(日本かぶれのナビ)とか、室内情景など、身近な題材を好んで描いたので、アンティミスト(親密派)とか呼ばれています。
この映画に登場するマルトとは1893年頃に出会ったそうです。

ピエールはそこら辺で出会った女にモデルになってもらい、その日のうちに二人は結ばれる。
女はマルトと名乗る。
ピエールは金持ちのパトロンに金を出してもらい、暮らしていた。
やがて二人は一緒に暮らし始める。
それからしばらくして、二人は田舎暮らしを始める。
そこにモネや友だちたちがやって来る。
マルトの喘息の発作が起り、診察に来た医師に心臓が弱いので長く生きれないだろうと言われる。
喘息を治すために一時間は水に浸かっているようにし、時には転地療法に出かけるようにとアドバイスされる。
ピエールはマルトのために浴室を作り、いつでもお風呂に入れるようにする。
マルトは病弱な自分を持て余し、ピエールに近付く女性に激しく嫉妬する。
特にパトロンの妻でピアニストのミシアは気になる存在だ。
1914年頃からピエールは毎週パリに行くようになる。
不安になったマルトがパリのアトリエに行ってみると、そこに美術学校生のルネがいた。
ルネのことが気にいったマルトは、ルネを田舎の家に招く。
ある日、三人の生活に我慢できなくなったルネは家を出て行く。
追いかけるピエールにルネは結婚を迫る。
ピエールはマルトに嘘をつき、ルネとローマに行き、結婚することにするが、ピエールはマルトを忘れられない自分に気づく。
ピエールはルネをイタリアに残し、マルトのところに帰る。
やがて二人は結婚する。
マルトはピエールのいない間に絵を描いていた。
マルトの絵の展覧会の日、ピエールは全く思いもしなかったことを聞いてしまう。
ネットで調べると、マルトのことは「病弱なうえに神経症気味で風呂好き」と書いてあります。
医師に風呂を勧められたのだから、風呂好きは仕方ないですよね。

≪浴室の裸婦≫ 1936年
ピエールはマルトだけを一途に愛したのかと思ったら、全く違い、モデルによく手を出している感じでした。
その中でもルネに対するやり方は、最悪です。
映画であったことが事実なら、よくバスタブに横たわる妻を描き続けて行けたなぁと思います。
(家に帰ってから調べてみると、ルネを見つけたのはピエールで、その後から浴室のマルトを描き始めたそうです。どういう精神構造をしているのかわかりませんわ)
マルトは不思議な人で、出会ってから32年後にピエールと結婚したのですが、それまで自分の名前も家族のことも秘密にしていたそうです。
何故なのかしら?
ボナールにとってはそんなことは些細なことで、彼女が側にいてくれるだけでよかったようですけどね。
マルトは絵を描いていましたが、結婚してからは止めてしまったようです。
映画で見た限りでは、とてもいい絵だったので、もったいないです。
続けていればよかったのに。
ピアニストのミシアが金持ちの男と結婚し、ピアノを止めたことを責めていましたが、マルトも同じですよね。
ボナールに依存して生きていますよね。
72歳で亡くなったといいますから、長生きしましたね。
ピエール・ボナールは「色の魔術師」とか「幸福の画家」とか言われていたそうです。
2018年に日本で「ピエール・ボナール展」が開かれ、見に行きました。
色彩は綺麗だけど…という感じで、それほど絵に魅力を感じなかったです。
映画を観た後は、絵だけではなく、人間的にどうなのという思いが増しただけです。
フランスでは彼の展覧会が2015年に開かれ、歴代二位の動員数だったと言いますが、この映画の後はどうなんでしょうね。
どう考えても、日本ではそれほど人気が出るようには思えません(失礼)。
私は映画の内容か、音楽か、映像のうちどれか1つでも良ければ、満足できます。
この映画はフランスの田舎の風景が素敵で、とても良かったです。
モネが小舟を漕いで遊びに来ていました。
絵に興味があって、フランスの田舎の風景を見て癒やされたい方が見に行くといいと思います。
芸術家の関連する映画を観ていますが、何かスカッとするものを観たいですね。
探してみます。
トリミングに行く♡ ― 2024/10/05
雨が止んでいたので、急いでわんこたちをトリミングに連れて行きました。
ところが少し歩いたところで、小雨が降って来てしまいました。
今から戻るのも面倒なので、そのまま雨に当たりながら歩いて行きました。
わんこたちは全く気にしていません。
雨よりもお散歩できる方がいいんですね。
帰りは小雨が降っていたので、カートを用意して行きました。
パパがいなかったので、医師がわんこたちをカートに乗せるのを手伝ってくれました。
ありがとうございます。

食いしん坊の兄はおやつを貰えると思って下をペロッと出します。

なんだかわかりませんが、興奮気味の弟です。
トリミングの後だというのに、毛が乱れています。
兄と一緒にカートに乗って嬉しかったのでしょうかね?

なんとなくおっさん臭くなってきたような二匹。

兄はあくまでも弟を無視して、おやつを見つめています。

「ママ、こいつ、うざいです。とにかく、おやつください」by 兄
「ぼくも」by ヨーキー弟
わんこたちは狂犬病の予防注射をしたというのに、元気です。
兄、3.4㎏、弟、3.6㎏。
弟が固い物が噛めなくなった兄にやっているウエットの餌を欲しがるので、仕方なくドライフードの上に少しのせてやっているので、食べ過ぎなのか太ってしまいました。
ドライフードを少し減らしましょうねww。
お散歩するわんこ ― 2024/10/06

いつの間にか彼岸花が咲いていました。
暑かったり、寒かったりと、10月だというのに、はっきりしない天気で、ママはうんざりしています。
わんこたちはお散歩に嬉しそうに行っています。
ママの膝と腰は冷えたせいらしく、温めるとよくなりました。
去年ぐらいから寒くなると昔痛めたところが痛くなってきます。
もっと年を取るとどうなるのか、怖いですわww。

先週の休日、お年なのに、ママとは違いグイグイいく二匹。

いつもの休憩場所でくつろぐ兄。
濡れているのはお水がこぼれたのです。

パパのお水をいつものように無視します。

今日も元気にグイグイ行きました。
兄はお散歩が大好きです。
<先週のおやつ>
久しぶりにミスドに行ってドーナツを買ってきました。

フレンチキャットとくりド。猫には見えませんけど。
台湾ゴハン祭りをやっているみたいなので、台湾のパイを食べてみたいけど、またミスドに行けるかな。
アン・クレア 『雪山書店と嘘つきな死体』 ― 2024/10/07
「クリスティ書店の事件簿」シリーズの一作目。

故郷のコロラド州の片田舎の町、ラスト・ワードに戻ってきたエリー・クリスティは姉のメグと一緒に家族が経営するブック・シャレーの書店員をしている。
高校卒業後、様々な場所で本にまつわる仕事をしてきたが、両親が早めにリタイアをして、余生を愛読書にちなんだ土地を巡る旅をして過ごしたいと言ってきたため、世界でいちばん好きな書店で姉と一緒に働きたくて戻ってきたのだ。
エリーとメグの他に書店にはミズ・リッジという店に不可欠な従業員とグランマ、そして看板猫のアガサ・C・クリスティがいる。
書店のラウンジではミズ・リッジの企画で、読書会『ミステリの山々』をやっている。
その日の読書会ではアガサ・クリスティの『シタフォードの秘密』が取り上げられた。(原題:The Sittaford Mystery、米題:The Murder at Hazelmoor)
参加者のモーガン・マリンが本と同じように交霊会を再現しようと言い出す。
モーガンは伝説的ハリウッド・スターで『本棚に夢中』という一万人もの登録者数を誇るオンライン読書クラブを主宰しているブック・インフルエンサーでもあったので、エリーたちは交霊会に反対できなかった。
交霊会の最中に何者かが書店に入って来た気がしたが、誰もいなかった。
ラウンジに戻ると、一人の男がいた。
彼は大切なものを失くしてしまったので、探していると言っていたが、また来ると言って出ていく。
おかしなことにミズ・リッジが店からいなくなる。
次の日、ミズ・リッジは現れず、昨日の見知らぬ男は十時ぴったりに店に現れる。
ある女性を「セセ」という誰かと間違え、グランマによると関係者以外立入禁止の場所に入り込んでいたらしい。
そして、少し前に鞄を置いたまま、急いで出ていったという。
鞄の中にはアガサ・クリスティがメアリ・ウェストマコット名義でサインしている『春にして君を離れ』と白い封筒が入っていた。
書店を閉めた後、エリーとメグがミズ・リッジの家に寄ろうと歩いているときに、鞄を置いていなくなった男がゴンドラに乗るのを見かける。
メグが麓で呼び止めて、鞄を取りに戻る気があるかどうかたしかめようと言い出し、二人は急いで男が乗ったゴンドラのすぐ後ろのゴンドラに乗る。
しかし、降車地点を過ぎようとしているのに、男はゴンドラを下りようとはしない。
駅員がゴンドラを止め、声をかけてから男の肩をつつくと、なんと男は死んでいた。
ゴンドラに乗り込む時は生きていたのに、下りていく途中のどこかで、息絶えたのか?
男はどのように死んだのか?
そして、ミズ・リッジはどこに?
さあ、クリスティ家の出番だ。
ラスト・ワードの町は素敵です。
山の上の集落にはシャレーが立ち並んでいて、広大な風景が楽しめ、スキーや登山が出来ます。このシャレーの一つがクリスティ家の書店なんです。
麓の村には数ブロックの店舗と住宅街、そして峡谷の急斜面があります。
こんなところに行ってみたいですわ。
殺人事件の捜査会議を開いてしまうほど、クリスティ家のみんなは殺人事件が好きなんです。
グランマを侮る勿れ。彼女はいろんなところから話を聞き出すという隠された才能があるんです。いつも書店では居眠りしているのですけどww。
わんこは出てきませんが、ねこちゃんが出てきます。
そういえばクリスティのミステリには犬よりも猫の方が合っているような気がしますが、どうでしょう。
クリスティ好きなら是非手にとってもらいたいコージーミステリです。
二作目(『Last Word to the Wise』)は2023年10月に発売されているようです。
いとこが本の趣味に基づいたお見合い事業を始め、それに登録したエリーとメグ姉妹がブラインド・ダブルデートをした後に、姉の相手が殺されるという展開らしいです。
Victoria WaltersとFiona Leitchのファンにぴったりの本だそうですが、彼女たちの本は日本で出版されていましたっけ?
このコージーミステリは面白そうなので、二作目を期待して待つことにします。
サマンサ・ラーセン 『公爵家の図書係の正体』 ― 2024/10/09
「英国貴族の本棚」シリーズの第一作目。

1784年、40歳になるティファニー・ウッダールはロンドン近郊の村に異母兄のユライアと一緒に住んでいる。
ユライアは薄給の教会区の牧師補をしていたが、半年ほどまえからボーフォート公爵家本宅、アストウェル・パレスで図書係の仕事をしている。
その仕事には兄妹が住むコテッジが用意されていた。
ある日、兄が朝食におりてこなかった。
呼びに行くと、兄は自分の嘔吐物にまみれて部屋の中で死んでいた。
ティファニーは兄が死んだことよりも、はじめてわが家だと感じられたコテッジを失うことが悲しかった。
ティファニーは兄にとって体の良い使用人だった。
父が死んだ時に兄はほんの少しの財産を相続し、贅沢品にそのお金を使ってしまった。
ティファニーにはユライアの葬儀をし、埋葬するためのお金さえないのだ。
このままでは路頭に迷う。
ふとティファニーは思った。
自分は兄とおなじぐらいの背格好だ。
顔立ちはユライアにそっくりで、顔の輪郭は卵形で、薄青の瞳にふっくらした口唇をしている。
学生時代に兄になりすましたら、両親は気づかなかった。
自分がユライアになったらどうだろうか。
ティファニーは屋敷に兄は具合が悪いので休むと告げに行き、暗くなってから、兄をポッキリヤナギの下に埋めた。
次の日からティファニーは兄のふりをしてアストウェル・パレスに通い始めるが、思いもかけないことが起る。
シャーリー牧師からの求婚、屋敷での物の紛失、不可解なメイドの死…。
医師によるとメイドは毒殺されたという。
ユライアがメイドと同じような死に方をしているのに気づいたはティファニーは、自分自身とユライアのために犯人を探すことを決意する。
1780年代はフランスのマリー・アントワネットがヴェルサイユ宮殿で華やかな生活を謳歌していたころで、イギリスも同じようなものだったようです。
貴族の人たちの服装は華やかではありますが、今と比べると大分窮屈だったようです。
でも、服装以上に窮屈だったのは、女性たちの暮らしです。
彼女たちの意思は尊重されず、多くの行動が制限されていて、読んでいくにつれて、ティファニーの苦労が偲ばれ、兄のふりをしたことは仕方がないことだと思いました。
そういえば牧師がなんともキモい、俗物として描かれていますが、当時の牧師はそういう人が多かったのでしょうかねww。
「著者の覚え書き」と「読書会での質問集」は一読の価値がありますので、お話が終わったからいいわと思わずに目を通して下さいね。
作者はアメリカ人ですが、よくイギリスの貴族社会のことを調べています。
別名で歴史ロマンス小説も書いているようです。
原題は『A Novel Disguise(斬新な変装)』というようですが、久しぶりにひどい日本語の題名を見ましたわ(失礼)。
二作目の『Once Upon a Murder』は今年の2月に出版されています。
元召使いの男の死体をティファニーが見つけてしまい、彼女は第一容疑者になるようです。
イギリスの1780年代の貴族の暮らしがよく描かれているので、興味のある方は読んでみて下さい。
「ロール・ザ・ドラム」を観る ― 2024/10/10

1971年、スイス、ヴァレー州の小さな村、モンシュに住むワイン醸造家のアロイスは、村のブラスバンドの指揮者をしている。
今年、三年ごとに開かれる音楽祭があり、オーデション通過を目指して練習している。
これまで一度もオーデションに合格したことがなく、アロイスの指導力を疑問視している楽団のメンバーが、アロイスに内緒で村出身でパリで活躍している音楽家、ピエールを呼び寄せる。
このことを知ったアロイスはピエールを受け入れようというメンバーを楽団から追い出す。
ピエールは医師だった父の家に犬のシボレーを連れて行く。
父の家が火事になった時には帰って来なかったが、金欠なので、母が遺した土地を売るために戻ったのだ。
ピエールは女性や移民など楽器が弾ける人をすべて楽団のメンバーにした。
アロイスはことごとくピエールの邪魔をする。
楽団のメンバー募集の張り紙をはがして回り、醸造所で働くイタリア系移民たちに、ピエールに協力するなら仕事を首にするとまで言う。
イタリア系移民の若者、カルロには首になりたくないなら、ピエールの楽団に入り、スパイをするようにと申し渡す。
アロイスの妻、マリー=テレーズは夫のやり方に腹を立て、腹いせに女性参政権運動に参加する。
昔、アロイスとピエールはマリー=テレーズを奪い合ったようだ。
マリー=テレーズは夫への当てつけにピエールと仲良くする。
アロイスの娘、コリネットは父の醸造所の手助けをしようとして、ワインの配合を考えるが、アロイスに無視される。
村を出ようと決心し、教会の献金を盗み、金を貯めている。
ある日、金を取っているところをカルロに見られてしまう。
やがてアロイスの楽団とピエールの楽団がことごとく対立するようになり、村は二つに分れていく。
はたして結末は…。
ブラスバンドの曲が聴けると思って観に行きました。
ところが期待したほど曲が流れてきません。
対立する二つの楽団が曲を競いあうのかと思ったら、違いました。
話はいつの間にか違う方向へ行ってしまい、最後はハッピーエンドでしたが、私が思っていたのとは違う結末でした。
私のようにブラスバンドの曲が沢山聴けると思って観に行ってはいけません。
ヒューマンドラマが観られる映画です。
ちなみにスイスで女性参政権が認められたのは1971年(連邦)だそうです。全土では1991年だとか。遅いですね。
ワンコのシボレー君が愛嬌があってかわいかったです。

曲は聴けなかったけど、彼(彼女?)が見られたので、よしとしますww。
川澄浩平 『探偵は教室にいない』&『探偵は友人ではない』 ― 2024/10/11
第二十八回鮎川哲也賞受賞作。

「第一話 Love letter from…」
北海道札幌市の発寒に住む中学二年生の海砂真史(ウミ)は高身長の女の子で、バスケット部に入っている。
そんな彼女のところに誰からかわからないラブレターが届く。
仲のいいバスケ部の英奈(エナ)や京介、総士に相談できず、困っていると浮かんで来たのが幼馴染みの鳥飼歩。彼とは九年も会っていないが、頭の回転の速さは大人顔負けという奴だ。中学校に入ってから学校に行っていないらしい。
ウミは甘いものに目がない彼のためにケーキを買って会いに行く。
「第二話 ピアニストは蚊帳の外」
合唱コンクールが近付いていた。
京介のクラスで伴奏をする予定だった女子が入院したため、京介が伴奏を頼まれる。しかし、はじめはやる気になっていたが、やらないことにしたと言う。どうも指揮者の望月と揉めたらしい。
しばらくして京介の様子がおかしいことに三人は気づく。
なにかしでかすつもりではないのかと心配した三人は、たまたまやってきた歩に京介のことを話す。
「第三話 バースディ」
総士の誕生日祝いに四人で海に行った。
そんなある日、総士の他校の彼女がウミたちの中学校にやって来る。
ここ一週間で二度、会う約束を急にキャンセルされたことが気になるらしく、他に好きな人ができたのではないかと心配している。
だが、やって来た総士は今までと全く変わらない態度で彼女と接している。
部活のない火曜日にウミが近所のショッピングモールに行くと、そこで同じ中学校の女子と相合い傘で歩いている総士とばったり出会ってしまう。思わず逃げ出すウミ。学校で総士は来週理由を説明すると言うが、そんなに待てないウミは歩に相談しに行く。
「第四話 家出少女」
ウミの父親が歩が夜遅く家に来たことを聞き、そんな男と付き合うなと言ってくる。ウミは頭に来て家を飛び出してしまう。
歩のところにエナから電話が来る。ウミが家出をして帰れなくなっているので、ウミの行きそうなところに心当たりはないかというのだ。
歩はエナとスタバで会うことにする。スタバにはエナの他に京介と総士も来ていた。
四人でウミの行きそうなところを推理することになる。

「第一話 ロール・プレイ」
ウミとエナがバスケットシューズを買いに行ったときに、バスケ部だった二学年上の鹿取一樹と再会する。彼は小学校の塾で飛び級して小六のクラスに入ってきた歩と親しくしていたらしいが、歩とケンカをしてしまい、歩が塾をやめて以来会っていないという。
鹿取の話を聞き、何かおかしいと思ったウミは歩に連絡を取り、鹿取の名前を出してみると、「話を聞かせろ」と呼び出される。
「第二話 正解にはほど遠い」
この頃、ウミはウミのファンだという鹿取一樹の妹の彩香につきまとわれている。
ある日、彩香がウミに、彼女の家の洋菓子店のクリスマス企画でクイズを出題するので協力して欲しいと言ってくる。
ウミのバスケットシューズを貸して欲しいというのだ。そして、特別に先にクイズを教えるので、解いたら、正解者先着十名にプレゼントするのと同じ<お菓子の家>をくれるという。
結局一人では解けず、ウミは歩を頼ることにする。
「第三話 作者不詳」
美術準備室にウミの右手の甲を描いたと思われるデッサンがあった。誰が描いたのか気になるウミ。
四人で初詣に行った日、美術教師の柳井を見つけ、みんなで尾行することにするが、柳井に見つかってしまう。
年が明けてバスケの練習があった日、彩香がやって来てウミに柳井が元旦から四日まで沖縄旅行に行ったと言う。おかしい。ウミたちが柳井に会ったのは三日だ。
柳井に不信感を持つウミだったが、柳井はそれからもおかしな行動をとる。
ウミは歩に相談したいと思うが…。
「第四話 for you」
四人で総士の姉がバイトをしている喫茶店に行くと、彼女が不思議な話をしてくれる。喫茶店の休憩室に、時計が二つあり、出入り口の扉の上の掛け時計は普通に時を刻んでいるが、部屋の隅にある置き時計は二時で針が止ったまま放置されていた。ところがいつからかはっきりしないが、時計が十二時になっているという。
この頃、店長は奥さんの出産のため、いないことが多いが、止っている時計の示す時刻は、奥さんの出産と何か関係があるのか。
ウミは歩に『止っている時計』の謎を書いたメッセージを送ってみるが、返事は来ない。
男子と女子が出てくるミステリというと、小市民シリーズを思い出しますが、高校生の男女ですし、二人がいっしょに推理しています。
このシリーズでは中学二年生で推理するのは歩だけで、ウミは謎を持ってくるばかり。
そもそもラブレターのことを、九年も会っていない子に相談しようなんて思いますか?
そうしないと話が進みませんがww.
しょうもないことが謎になっているなぁなんて思ったり。
まあ、青春ミステリなので、それも仕方ないでしょう。
年を取ると学校時代に何に悩んでいたかなんて忘れていますから。
青春ミステリが好きならいいのですが、そうでなければ読むのを止めた方がいいかもしれませんね。
私のように鮎川哲也賞を取っているから読んでみようかとか、北海道が舞台なので読もうとか思うならいいでしょう。
私は次回北海道に行くときの参考にしようと思って、北海道が舞台の本をできるだけ読もうとしているんです。
この本では四人で海に行く場面が好きです。
余市に行ってみたいと思いました。
円山公園辺りに住んでもいいかな。
ミュンヘン・クリスマス市などやってるのですね。
(なんでミュンヘンかと思ったら、姉妹都市なんですって。今年は11月25日から12月25日まで大通り公園でやります)
北海道牛乳カステラって美味しいのかな。
まあ、こんな感じですwww。
とにかく、中学校や高校時代の甘酸っぱい思いをもう一度と思ったら読んでみて下さい。
石田衣良 『男女最終戦争 池袋ウエストゲートパーク ⅩⅩ』 ― 2024/10/12
池袋ウエストゲートパークの二十作目。

池袋の西口公園近くの果物屋の息子で、「池袋のトラブルシューター」と言われている真島誠ことマコトが、依頼された事件を、「G-Boys」のキング、タカシやハッカー、ゼロワンの力を借りて、解決していくシリーズ。
今回の依頼は四つ。
一つ目は、マコトが工業高校で教わった中野先生から、三年の生徒三人が電動自転車のバッテリー盗難にかかわっているので、手を切らせてくれという依頼。
二つ目は、Gボーイズの法律顧問をしている葛城法律事務所から、ビジネスとして反中反韓の極右ブログを書いているライターのマンションに脅迫文が届けられたので、脅迫文を書いた男を見つけ、脅迫を止めて欲しいという依頼。
三つ目は、G・ボーイズが世話になった人の関係者の女性がメンズ・コンカフェの男にはまって八十万ぐらい売掛金をためこんだが、その売掛金が別の者に渡り二ヶ月で二百五十万にふくらんでしまったというので、タカシから一円も払わず片をつけるようにという依頼ではなく命令、笑。
四つ目は、女性に硫酸をかけるというアシッドアタッカーが現れ、犯人は人気お笑いコンビ、どっきりビギンズのボケの坂本が立ち上げた女嫌いの童貞集団『純情男魂団』、略してジュンダンの中にいるのではないかと思われるので捜して欲しいと言う、どっきりビギンズとフェミニズム団体『ニューエデン』からの依頼。
警視庁によりますと、電動アシスト自転車のバッテリー盗難は昨年度373件あったそうです。犯行は数十秒だそうで、そんなに簡単に外せるのでしょうか。
自転車本体は防犯登録されていますからわかりますが、バッテリーは自分のかどうかはシリアルナンバーをメモしておかなければわかりませんよね。
私は持っていないので、わかりませんが、バッテリーって高そうですね。
電動アシスト自転車に乗っている方、気をつけてください。
フェイクニュースがあるのは知っていますが、それを書くことを商売にしている人がいて、大金が稼げるというのは驚きです。
どうやってフェイクかどうか見抜くのか、いい方法があったら教えてほしいものです。
「コンカフェ」って知りませんでした。
「コンセプトカフェ」の略なんですって。
メイドカフェと似たものなのかしらと思ったら、メイドカフェもコンカフェの一つのようです。
要するに、「特定のテーマを取り入れて全面に押し出すことで、他のカフェとの差別化が図られたカフェ」(コンカフェ情報サイトによる)のことで、なんと、カフェといいながらお酒も出し、「カフェ&バー」のスタイルが基本らしいです。
例として、石田さんによると、執事カフェ、アニメカフェ、戦国武将カフェ、新撰組カフェ、明治カフェ、男子校や女子校の制服カフェ、作家カフェなどがあり、こうやってみると、何となく安心、安全みたいな感じですよね。
ところがやることがホストクラブと同じらしいです。
怖いですねぇ。
普通のカフェなら、芥川龍之介と語り合いたいと思ったのですがww。
四つ目の短編「男女最終戦争」のように、「現代社会で秘密裡に進行中のゲリラ戦では、悲しいことに男の最大の敵は女で、女の敵は厳然として男」なのでしょうか。
ミソジニー(女性嫌悪)とかミサンドリー(男性嫌悪)が進んでいるのでしょうか。
石田さんが書いているような世の中になっていくかどうかは不確かですが、同じ人間として仲良くしていきたいものですよね。
次はどのような社会問題が取り上げられるのか、楽しみなシリーズです。
シリーズも二十作目なので、一作目から載せておきます。
①『池袋ウエストゲートパーク』(1998年9月)
②『少年計数機』(2000年6月)
③『骨音』(2002年10月)
④『電子の星』(2003年11月)
⑤『反自殺クラブ』(2005年3月)
⑥『灰色のピーターパン』(2006年6月)
⑦『Gボーイズ冬戦争』(2007年4月)
⑧『非正規レジスタンス』(2008年7月)
⑨『ドラゴン・ティアーズー龍涙』(2009年8月)
⑩『PRIDE プライド』(2010年12月)
⑪『憎悪のパレード』(2014年7月)
⑫『西一番街ブラックバイト』(2016年8月)
⑬『裏切りのホワイトカード』(2017年9月)
⑭『七つの試練』(2018年9月)
⑮『絶望スクール』(2019年9月)
⑯『獣たちのコロシアム』(2020年9月)
⑰『炎上フェニックス』(2021年9月)
⑱『ペットショップ無惨』(2022年9月)
⑲『神の呪われた子』(2023年9月)
⑳『男女最終戦争』(2024年9月)
外伝
『赤(ルージュ)・黒(ノワール)池袋ウエストゲートパーク外伝』
(2001年2月)
『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇』(2014年9月)
読んだのは覚えているのですが、ブログに書かなかったのか、見つからないものが多いです。
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