ケイティ・ティージェン 『事件現場をドールハウスに』 ― 2025/11/04

舞台は第二次世界大戦が終わったばかりの1946年10月、バーモント州エルダーベリー。
メープル・ビショップは驚いた。
医師でフランスの野戦病院で亡くなった夫のウィリアムが残した遺産がたったの十二ドル六十七セントだというのだ。
これでは家のローンも返せない。
どうやって暮らしていけというのだ。
いつものように金物屋に買い物に行くと、店主のベン・クレンショーからとてもいい申し出がある。
メープルは法律の学位を持ち、弁護士資格も持っているが、町の弁護士事務所はメープルが女だからと雇ってはくれなかった。
それならば、メープルの唯一の趣味であるドールハウス作りを生かし、ドールハウスを売ってお金を稼ぐしかない。
そう決心したメープルに、彼の店の空いたスペースを使い、ドールハウスを売ってはどうかというのだ。
メープルの最初の客は町のトラブルメーカーのイライジャ・ウォレス。
彼の妻のアンジェラがメープルのドールハウスを気に入って、買ってくれたのだ。
しかし、翌日、メープルが出来上がったドールハウスを届けに行くと、納屋で首を吊って死んでいるウォレスを見つけてしまう。
警察は自殺と判断したが、メープルは納得がいかなかった。
実は彼女には特殊な才能、「一度目にした場面を完璧に覚えて再現できる」という写真記憶(カメラアイ)、があった。
メープルは自分が見た現場を再現したドールハウスを作って保安官事務所に持っていき、保安官を説得しようとするが、聞いてもらえず、事務所から追い出されてしまう。
保安官の甥で保安官事務所で働き始めたばかりのケン(ケニー)・クワークがメープルが置いていったドールハウスを返しに来て、メープルに一緒にウォレスの件の調査をしようという。
この提案にメープルは飛びつくが…。
戦争で家族が亡くなったり、PTSDで働くこともままならない帰還兵たちに対して、アメリカ政府は手厚い保証はしてくれなかったようです。
メープルのように資格を持っている有能な女性であっても、女というだけで採用してもらえませんでした。
アンジェラはDVの犠牲者ですが、その状況に甘んじていなければなりませんでした。
そんな時代に、天涯孤独の身となったメープルは自らの才気煥発さを生かし、どん詰まりに思えた人生を切り開いていきます。
コージーミステリーによく出てくる、主人公と対抗する意地悪な女性が出てきたと思ったら、一巻目で退場となってしまいました。
最後には敵対していた保安官とも仲良くなり、やっとメープルは町の人たちに受け入れられるようになったようですが、最初からうまく行き過ぎではないでしょうか。
一巻目からこれでは後はどうなるのか、結構、私の好きなお話なので、次で落胆しないかと心配になります。
ジオラマで事件現場を再現するということはアメリカで実際にやっていたようです。
「法医学の母」と呼ばれたシカゴの大富豪の娘、フランシス・グレスナー・リーが事件現場のジオラマを制作し、捜査官の訓練に使っていたそうです。
(参考:「極めて精巧、「科学捜査の母」が作った殺人現場のジオラマ」)
詳しくはあとがきにも書いてありますので、興味を持った方は読んでみてください。
二巻目は『Murder in Miniature』で、9月に出たばかりです。
ケニーの幼馴染で消防士志望の若者が小屋の焼け跡から遺体となって見つかり、メープルは火災が事故なのか放火なのか突き止めることになり、小屋のミニチュアを作ります。
英語の勉強のために読んでみようかどうか考え中です。(この頃ペーパーバッグも高いのよねぇ)
コメント
_ ろき ― 2025/11/05 05時34分35秒
_ coco ― 2025/11/05 07時18分25秒
今でもジオラマは利用されているそうです。お金持ちだと仕事を自分で作れるのでいいですよ。
戦勝国のアメリカでもこうなら、敗戦国の日本はどうなのか。今の時代に生まれて良かったと思います。
戦勝国のアメリカでもこうなら、敗戦国の日本はどうなのか。今の時代に生まれて良かったと思います。
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アメリカは戦争で本土は無傷だったとはいえ、たくさんの兵士が戦場で精神を病んでいるので、やはり影響はありましたよね。保障がないと辛い。