アンソニー・ホロヴィッツ 『ヨルガオ殺人事件』2022/01/02

買っていたのに、図書館の本がたまっていてずっと読めずに置いておいた本です。
人気があるようですが、残念ながら面白さが未だ私にはわかりません(恥)。
評判のホロヴィッツの本には作家ホロヴィッツが元刑事ホーソーンと共に事件を解決していくシリーズ(『その裁きは死』、『メインテーマは殺人』)と『カササギ殺人事件』とこの本のように、元編集者のスーザン・ライランドが謎解きをするシリーズがあるんですね。
スーザンよりもホーソーンの印象が強かったので、いつ彼が現れて謎を解いてくれるんだと思いながら読んでいました、笑。


スーザン・ライランドは編集者の仕事を辞め、クレタ島のアイオス・ニコラオスの町で≪ホテル・ポリュドロス≫の共同所有者兼経営者となっています。
編集者の仕事を辞めたのは、『カササギ殺人事件』のせいでした。
『カササギ殺人事件』は担当した最後の本で、著者のアラン・コンウェイが亡くなり、勤務していた出版社が倒産したからです。
ホテルの共同所有者兼経営者でもあるパートナーのアンドレアス・パタキスとは結婚こそはしていませんが、年月を重ねた夫婦にありがちな微妙な状況に陥っていました。

そんなある日、ホテルにイギリス人の夫婦、ローレンス・トレハーンと妻のポーリーンがやってきます。
彼らの言うことには、スーザンの居場所を弁護士のサジッド・カーンに聞いたそうで、ウッドブリッジの近くにホテルを所有しており、ある問題についてカーンに相談したところ、スーザンに会うように勧められたというのです。
用件はフランク・パリスという男の殺人事件に関することでした。
フランクは八年前に彼らの娘・セシリーの結婚式の夜に彼らのホテルで殺され、犯人として捕らえられたのはホテルの従業員、ステファン・コドレスクでした。
ステファンは終身刑を宣告され、いまも刑務所に入っています。
しかし八年経った今になってセシリーがステファンは犯人ではない、アラン・コンウェイの<アティカス・ピュント>シリーズ第三作『愚行の代償』の中に新事実を見つけたと報せてきてから、失踪したというのです。
どうもアランは事件の六週間ほど後に彼らのホテルに宿泊し、従業員たちから話しを聞き、それを材料に、ホテルやウッドブリッジで出逢った人をモデルにして本を書いたようです。
トレハーン夫妻は、スーザンはアラン・コンウェイのことを誰よりも知っているうえにこの本の編集者であるのだから、セシリーが見つけた本の中に隠されていることをみつけられるのはスーザン以外にいないというのです。
トレハーン夫妻はスーザンに娘がいまどこにいるのか、娘にいったい何があったのかを探るために一万ポンドの報酬を申し出ます。
パートナーのアンドレアスとの関係を見直す時期にもきており、ホテル資金が枯渇しそうな状況をも鑑み、スーザンはこの申し出を引き受けることにします。

スーザンはイギリスに行き、トレハーン夫妻のホテルに泊まり、当時の関係者に話しを聞くと共に、再度『愚行の代償』を読み始めます。

『カササギ殺人事件』と同じように本の中に本が入っている構造です。
どこに手がかりがあるのか、スーザンと一緒に『愚行の代償』を読んでいきますが、お手上げでした。
わかった時には、な~んだ、そこかとちょっと意外でガッカリ。
謎が解けた後の解説みたいな所は西洋文学とか文化の素養がないと気づかないように思います。
概して読みやすいのは訳者がうまいのか、原文が平易だからなのかしら。
私にはホロヴィッツよりもクリスティの方が面白いですわ。


お正月の福袋が届きました。


ホットマンのタオルです。
コロナ前には近くの駅ビルで行われる初売りで買うのが楽しみでしたが、昨年から行かなくなったので、ネットで買うようにしました。
なんと数分で完売となりました。
水玉模様のタオルを使ってみました。あまり水を吸わなくて、残念。
福袋だから質がよくないのかなぁ…。

僕たちは元気です♫2021/08/04

犬たちは元気ですが、昨年からずっと自粛生活をしてきたママはお疲れ気味です。
なんか色々と空しくなるこの頃。何もしたくありません。
こんな気分の時は犬たちと遊ぶに限ります。

最初に兄と遊びます。彼はママの汗のついたハンカチが大好きです。
ハンカチを結んで投げると持って来ます。そして結び目を噛み始めます。


そのうちにひっくり返ってのたうち回ります。


この頃はわざとひっくり返ったお腹を撫でてやります。そうするともっとのたうち回ります。


今までは階段でふせをすることがなかったのですが、こういう風にステップでくつろぐようになりました。

弟はおもちゃの持って来いを命を懸けてやっています。
疲れすぎて口でくわえられなくても、おもちゃを追いかけます。


「ママちゃん、僕は用意が調いました。投げてください」


「まだまだ、僕は持って来れます」


「大丈夫です」


「大丈夫ですって」
と言いながら、足が横になっていますよ、笑。


「僕は強い子です」


「でも、ちょっと疲れたなぁ…」


「お前は何でそんなに疲れるまで走るんだよ。バカか?」


「ママ、おやつちょうだい」とねだる兄。
ボーロの袋を取り出すと、すかざず兄はソファの上に上りました。


兄はソファの上で待ちます。
弟には30㎝以上おやつを離して置きます。
ママはケチなので、おやつは1日一粒か二粒のボーロしかくれません。
その点パパはおやつで犬の機嫌を取っているので、ママに内緒でチュールをくれます。


「ママ、僕疲れたので、部屋に戻っていいですか?」
と言っていますので、部屋に戻しました。

昨日はママと兄がベッドでくつろいでいると、弟は部屋から抜け出して、兄のベッドで寝ていました。
兄弟共に部屋からの脱走が流行っているようです、笑。

瀧羽麻子 『株式会社ネバーラ北関東支社』2021/04/10



散歩をしていると、八重桜が満開でした。


これはヤマボウシ?
住宅街なので、散歩してもあまり面白くないので、人様の庭を見て楽しむことにしています。


カメラを向けると、そっぽを向く犬たちです。


お仕事本の中に入っていたので、読んでみました。

弥生は東京の証券会社でバリバリ働き、マネージャーにもなり、6人も部下がいました。同期一番の出世頭と言われていた恋人もいました。しかし恋人の裏切りにより、やる気がうせ、会社を辞めてしまいました。
そして選んだのが、東京で面接をし、業種や職種はどうでもよくて、ただ勤務地が地方という会社です。
健康食品の下請けメーカーで売り上げの八割が納豆。名前がネバーラ。
納豆だからかと思ったら、なんとネバーランドの略だとか。
経営企画部に所属し、スタッフは弥生も入れて5人。正社員は杉本課長と沢森と弥生、そしてパートの西川と事務員のマユミ。
不思議と居心地が悪くない部です。

いつものように7時55分のバスに乗り会社に行くぬるい毎日が変ったのは、土曜日のバス停で桃子というおばさんに話しかけられてからです。
彼女は居酒屋「なにわ」のおかみさんで、会社の人たちがよく利用していて、どうも弥生の噂話をしていたようです。
桃子に気に入られた弥生は、「なにわ」で飲むようになります。

仕事では夏に向けての健康食品の企画を考えることになります。しかし西川さん曰く、「どんな企画を出しても、結局は通らないですよ」。
この言葉でやる気がなくなる弥生でしたが、沢森くんは弥生に力を貸してくださいと言ってきます。

ある日、いつもバスに乗ってくる課長がいません。
玄関口に着くと、課長は佐久間という男性と立ち話をしています。佐久間は研修で東京から来たようです。
彼は何故か弥生が証券会社に勤めていたことを知っており、彼も同業だったそうで、彼にも色々とあったようです。

しらばくして、弥生はネバーラの業績が伸び悩んでおり、支社を切り離して取引先に売り払おうという動きがあることを知り、ちょっと落ち込みます。
取引先との商談に行くと、担当者は最悪の男で、新しい企画を提案すると、返事がなく、変だと思っていると、なんと弥生たちがもちこんだ企画をパクっていたのです。
周りは抗議をしようと言いますが、弥生はこういうことが珍しくないことを知っていたので、彼らのように即抗議という風には考えられませんでした。
ところが今まで黙っていた佐久間が取引先に行って話をつけてくると言って部屋を出て行ってしまいます。

さて、結果はどうなったのか?そして佐久間は一体何者?
弥生の今後は?

お仕事本といいながら、あまりお仕事の話はありません。
気になるのは納豆のことです。
ネバーラでは社員一同毎日納豆を食べているから、みんなのんびりおっとりなのかしら。
納豆の食べ方が出ていますが、本当にこんな食べ方していますか、福島市の皆様。(2020年納豆消費量一位は福島市で、納豆で有名な水戸市は五位なんですって)
歌を歌いながら混ぜるといいとか。明るい歌がいいのでしょうね。
お勧めの歌を知りたいわ、笑。

お仕事に疲れて、違う世界をかいま見たい時に読むと、少し元気をもらえるかもしれません。

篠田節子 『肖像彫刻家』2021/02/19

先日、夕食を食べ終わった夫に、「食器をうるかしといて」と言ったら、「それどこの方言?」と言われました。
夫がからかっているんだと思って一応調べてみると、しっかりと方言でした。(主に東北と北海道で使われています)
東京人だったら、「水に浸けといて」と言うのでしょうね。
〇十年生きていて、「うるかす」が北海道の方言だと初めて知りました。

では、私が標準語だと思っていて、北海道弁だと知った言葉の中から代表的なものをご紹介しましょう。

①「ぼっこ取って」⇒「を取って」
②「これ、投げといて」⇒「これ、捨てといて」
③「あぁ、こわい」⇒「あぁ、疲れた
④「おっかない」⇒「怖い
⑤「これとばくって」⇒「これと交換して」

全部できたら、あなたも北海道弁の権威です(笑)。
他にも色々とありますが、道産子は自分たちの言葉を標準語だと思っていますから(私だけ?)、指摘されるとビックリしますよ。
北海道出身の人がいたら、方言だと知らずに使っている表現を見つけて指摘してあげて下さい。「標準語だと思っていた」と言うと思いますよ、笑。



肖像彫刻家って職業があるんですね。
私は銅像などは彫刻家が作る彫刻の中の1つだと思っていました。

高山正道は美術大学を卒業後、抽象彫刻で展覧会にも入選したのですが、食べていけず、短大の非常勤講師をしてもアルバイト程度の収入で、公立高校の美術教諭をしている妻に食べさせてもらっていました。
彼の両親と同居後17年経って、妻が息子を連れて出て行ってしまいます。
その後、大学と予備校で教えて糊口を凌いでいましたが、四十を過ぎてしばらくして、イタリアで肖像彫刻家として成功した美大の先輩・御園康成から声がかかり、御園が世話になった親方に弟子入りすることになります。
生真面目な性格が幸いして、二、三年で、工房でいなくてはならないスタッフの一人にはなれましたが、「芸術家」にはなれませんでした。
八年が経ち、イタリアで身に付けた技法で生きていこうと思い、日本に帰ってみると、父も母も亡くなっていました。
正道は父が言った「モノになるまで一切、連絡も寄越すな」を律儀に守ったため、知らなかったのです。
姉に親の遺産を分けてもらい、再出発の場として、八ヶ岳連峰を望む農村、山梨県南麓町に移り住み、工房を開くことにします。
しかし、そう簡単に銅像の注文は来ません。それでも家賃がただ同然なので、親の遺産と大家からの施し、富沢鋳造所のバイトでなんとか暮らしていけます。

最初に来た注文は地元の回向院の雪姫の像でした。
一体目は忠実に姿を写した分身を、二体目は個性を付け加えた像を作りましたが、
二体目の像に不思議な現象が現れます。
正道は変った銅像を作るということで有名になってしまい、様々な人が彼に銅像を注文してきます。

うだつの上がらない彫刻家が色々と翻弄される様が面白かったです。
少しのホラーにユーモアが加わった小説です。
御園のモデルは奥村伸之なのかしら?

埜納タオ『夜明けの図書館』終わる2021/02/17

マスクが潤沢に売っているこの頃。色々なメーカーのを買って、どれがいいのか試しています。
今日ビックリしたのが、シャープ、また当たっちゃいました。これで5回目(かもっと)。最初は嬉しいので、買っていたのですが、今は他のマスクもあるので、もういりません。
パナソニックのマスクは、発売当初はなかなか買えませんでしたが、買えるようになっています。
今はネピアの長時間フィットマスク「密リスクの高い予定の日に」が欲しいのですが、なかなか当たりません。
昨年のマスクがない時のトラウマか、マスクを1年間ぐらい買わなくていいぐらい溜め込んでいます。マスクのコレクターか、笑。



図書館の仕事のうちのレファレンスサービスを描いた漫画です。
7巻が出ましたが、これで最後のようです。
市立図書館で働く新米司書・ひなこが、日々利用者からの質問に答えようと奮闘する姿が描かれていましたが、今回は最後なので図書館が行っている他のサービスについて描かれています。(間違いがあったらご指摘ください)

まず学校教育支援サービス。
学校図書館に資料の貸出をしたり、学校図書館司書や先生方に対する支援があるようです。
漫画ではあまり使われていない学校図書館に派遣された司書の苦労する様子が描かれています。
例えば分類番号が統一されていなかったり、同じ本が何冊もあったり、古い資料がそのまま置いてあったりするので、分類番号の統一や配架の見直し、本の除籍・廃棄、選書等色々としなければならない仕事が多そうです。
それ以上に図書の係の先生との関係構築が一番難しそうです。先生も担任をしていたり、授業等で忙しいですから、図書室なんかに関わっていられないですよね。
今は色々な子どもたちがいるので、その対応も大変そうです。図書で調べ学習をしている時に先生が子どもたちを放置している場面が描いてあって、授業は先生がやるものなのに司書に任せられても困るよなぁと思いました。
小学生の低学年の子は図書の時間が好き、特に読み聞かせが好きとか言っていたので、学校図書館司書もやりがいがありそうです。

図書館は地域資料収集とか情報提供サービスというのもしているようです。
漫画では災害史保存について描かれていました。
葵の働く図書館で「暁月豪雨災害記録集」を作成することになり、証言を募っていました。子どもを20年前の災害で亡くした女性がたまたま訪れ、自分の住んでいた花岡地区に2000年の災害以前に災害があったのかどうか聞いてきました。葵は地域資料を当たりますが、どの資料を当たってもわかりませんでした。しかし同僚の何気ない一言により手がかりが得られます。
昔の資料を大切に保存しておくことは大事ですが、保存しておくだけではなく、その情報を必要とする人に的確に渡るようにしなければなりません。図書館は情報発信の場でもあるんですね。

図書館では子育て支援もしています。例えば”赤ちゃんタイム”とか”ブックスタート”とかお話会とか、それぞれの図書館によって名前が変りますけど。
どの図書館でも子育て関係の本(妊娠、出産、育児、しつけ、家庭教育等)はコーナーにまとめて置いてあるので、探しやすくなっています。
お子さんのいる方は児童館もいいけれど図書館にも行って、どんな本があり、何をやっているのか見てみるのもいいかもしれませんね。

『夜明けの図書館』の最後は「お勧めの本」についてです。
あまりよく知らない人に「面白い本ない?」とか「お勧めの本は?」とか聞かれても困りますよね。人の趣味・趣向は様々ですから、色々と質問してその人のことを知ろうとするのですが、子どもなんかは質問をするとすぐに「めんどくさいからいい」とか言って話になりませんよね、笑。
図書館の司書さんはどうやって本を選んでいるんでしょうね。今度聞いてみましょうかしら(きっと嫌がられるわね)。
さて、葵さんが女の子の「社会人になる前に読むような本ってありますか?」にどう答えているのか、そして同僚の大野さんへのお勧めの本は何なのか、お手並み拝見です。

図書館の仕事って本の貸し借りだけだと思っていましたが、他の役割もあることがわかった漫画でした。
レファレンスはそう簡単にはできないことですねぇ。それだからこそやりがいがありそうですけど。
今私は図書館には予約した本を借りに行くだけなのですが、他の使い方も考えてみたいです。近所の図書館を調べてみてもあまりたいしたサービスが無いようですけど…。


弟犬の変顔です。


なんでこんな顔になったのかしら?

南杏子 『ブラックウェルに憧れて』2020/08/16

某医科大学入試で、女子学生が何年にも渡って差別的取り扱いをされていたというニュースがあったのはいつだったでしょう?
それまでは大学入試は純粋に点数で合否が決まっているんだと思っていましたし、命を扱う医科大学でということにショックを受けました。
あれから入試は是正されたのでしょうか?


題名の「ブラックウェル」とは、アメリカで初めて医学校を卒業した女性です。
エリザベス・ブラックウェル(1821-1919)はイギリスのブリストルに生まれ、11歳の時にアメリカに移住します。
ブラックウェル家は熱心なクエーカー教徒で、男女の差別を嫌い、奴隷制に反対だったそうです。
教師として家族の生活を支えるために働いていた24歳の時に、子宮癌の友人が彼女にこう言いました。
「女性のお医者さんがいたら、恥ずかしい思いをしなくてすんだかもしれない」
「なぜ、あなたは医学を勉強しないの?」
この言葉を聞き、ブラックウェルは医師になることを決意します。
12の医学校に手紙を出しますが、ことごとく入学を拒否されますが、ただ1校、ニューヨーク州のジェネルヴァ医学校だけが彼女を受け入れてくれました。
しかし、入学してからも男女差別の壁が立ちはだかります。
1849年に首席で学位をえて卒業しますが、アメリカの病院は彼女を採用してくれませんでした。
仕方なくパリの産院で修行しますが、眼病で右目を失明し、外科医の道はたたれます。
それでもブラックウェルは諦めませんでした。
NYで診療所を開き、女性だけで運営する病院を開院し、女性医師養成学校を設立していきます。
(詳しくはこちらを参考にしてください)

ブラックウェルの意思は受け継がれ、沢山の女性医師が誕生しています。
彼女が受けた男女差別はもはや昔のことでしょうか?

2018年8月、中央医科大学の解剖学教室の教授・城之内泰子の元に『月刊証言者』の記者・原口久和がやってきます。
彼は「長年に渡る女性差別が露見した中で、医学部に入学し、卒業して医師となった女学生たちが、どのようなキャリアプランを掲げ、どのような思いで医療の道に踏み出し、それぞれに闘っているのか」を書きたいので、城之内自身のキャリアに関する話を取材したい。そして卒業生も紹介して欲しいというのです。
城之内は教授になって初めて解剖学実習を受け持った、4人の卒業生を紹介します。
解剖実習の班編制は成績順に決められますが、女性が班に2人になると、男性3人に女性1人となるように操作されていました。
城之内はそういう操作を行わないことにし、その結果として女性だけ4人の班ができました。
女性だけの班を止めるようにと言う圧力がかかりましたが、城之内は自分の辞任をかけて、突っぱねます。
そこには彼女の深い後悔の念があったのです。

長谷川仁美は眼科医になりました。
白内障の手術なら外科手術班の誰にも負けないという自信があります。
次の白内障オペチームのリーダーに自分が選ばれると思っていました。
しかし、思ってもみなかった人が選ばれます。
そしてその後、陰湿ないじめが起こり、彼女は自分のキャリアの変更まで考え始めます。

仁美の話を読んでいるとあまりにも辛くて、途中で読むのを止めて、一息ついてからまた読み始めました。
女性であるというだけでコミュニティーから外され、生理休暇を取るから、少しぐらいオペが上手くても、一回やらせれば手技を教えてもらえるし、いい加減、嫁にいけば・・・。
こういう言葉が心に刺さってきます。
南さんは医師ですから、こういうことを男性医師が実際に言う様々な場面に出会ってきたのでしょうね。
知性と品性は比例しないんですね。

板東早紀は検診医。
かつて母校の病院で循環器内科医として働いてきました。
学生だった頃に出産し、シングルマザーとして父の助けを借り、なんとか働いてきましたが、無理だと悟り、キャリアを捨てました。
市中病院の勤務医をした後、認知症の父の介護のためにアルバイトの検診医となったのです。
父の症状は進み、徘徊、妄想、失禁・・・と大変な毎日です。

椎名涼子は救急救命医でしたが、仕事中に倒れ、閑職に追いやられていました。
そんな彼女に持ちかけられたのが、エスコートドクター。
外務省医務官だった父親の都合で、海外滞在経験があったからです。
私生活では麻酔科医の夫は家を出ていき、離婚届を送ってきました。
まだ夫に未練があります。
エスコートドクターとして関わった人に言われた言葉に救われます。

安蘭恵子はNICU(新生児集中治療室)で働く小児科医。
限られた人数で24時間ケアをしており、ナースもドクターも限界の状態です。
彼女には夫と一人娘がいます。夫は脱サラし、自然派農場経営に手を出しますが、上手くいっていません。
そんな時に、体に異変が起こります。

医師になろうと思う人には真面目な人が多いと思います。
地道に勉強し続けるというのは真面目さが必要ですもの。
おまけに女性医師は仕事の過酷さの他に、職場や家庭での女性差別にも対処していかなければならないのですもの。
女性医師には優秀な人が多いと思っていましたが、艱難辛苦を乗り越える力があるからでしょうか。

まだまだ女性差別のなくならない日本社会ですが、働いている女性たちの一人一人がブラックウェルのようにあきらめずに、次の世代のために働き続けていってもらいたいです。

本の中で城之内教授が言っています。
「人間の脳には、男性脳も女性脳もないというのが解剖学の最新の知見」だと。
脳には性差がない、あるのは個人差だけ。
そう思うと、男はとか女はとか言うのが馬鹿らしくなりますね。
思い込みやステレオタイプの偏見を捨て、人間として生き易い社会を作っていくことができればと思います。

「もし社会が女性の自由な成長を認めないなら、社会の方が変わるべきなのです」

ブラックウェルのこの言葉を噛みしめながら、共に歩んでいきましょう。

M.C.Beaton 『Agatha Raisin and Love, Lies and Liquor』2020/07/23

シャープマスク、来ました。


50枚、こんなかわいい箱に入っています。


中を開けると25枚ずつ2つに包装されています。
右下にSHARPとロゴが入っています。
コロナ感染が広まっている現在、こういう日本製のマスクが買えて嬉しいです。
なにしろ安全ですものね。

順調に読み進んでいるアガサ・レーズン・シリーズの17作目です。


前作の最後に現れたのは、そうです、アガサの思い人のジェームズです。
とうとう夢の中でしか会えなかった彼がやってきて、アガサを休暇に行かないかと誘ってきたのです。
舞い上がっているアガサに友達のミセス・ブロクスビーは言います。
休暇はあなたの思うようなロマンチックものではなくて、ジェームズがしたいと思う休暇なのよと。
それを聞いてアガサは怒ってしまいます。
ミセス・グロクスビーの忠告にもかかわらず、アガサはロマンチックな海辺の休暇を期待し、それに合った服を買いまくります。

ジェームズがアガサを連れて行ったのは、彼が幼い頃に訪れたことのある、思い出の地、Snoth-on-Seaという海辺の町でしたが、今や昔の面影はありません。
天気は最悪、寒くて雨まで降っています。波まで荒いので、おちおち浜辺の散歩もできません。
泊まった海辺の近くのホテルは昔はよかったのでしょうが、今や町と同じように寂れています。
これだけでもガッカリなのに、ジェームズとは別の部屋に泊まるんですよ。
一体何のための休暇なんでしょうね。

夕食でレストランに行くと人影もまばらで、アガサがどんな人がいるかと見ていると変な女に絡まれます。
まずい料理を食べていると、先ほど言い合いになった女の息子が来て、母はハネムーンに来ていたのにアガサのせいで台無しになったと因縁をつけてきます。
その次の日、絡んできた女、Geraldine Jankersが浜辺で遺体となって見つかります。彼女はアガサのなくしたスカーフで首を絞められていました。
アガサは容疑者として警察で取り調べを受けることになります。

自分の無実を証明するために、アガサは探偵事務所のパトリックとハリーを呼び寄せ、ホテルにいた人たち―夫のMr Jankers、息子のWayne Weldonと妻のChelsea、家族の友達のMr Cyril Hammondと妻のDawn―と話をすることにします。
その中でアガサがレストランで落としたスカーフをGeraldineが拾い、がめていたことがわかり、アガサの無実は証明されました。

しかしまたまたアガサの悪い癖が出てしまいます。
誰がGeraldineを殺したのかを自分で解決したくなったのです。
ジェームズはそんなことは警察に任せて、すぐにこの町を出て、フェリーでフランスに渡り、車で地中海に行って休暇をやり直そうと言いますが、アガサは残って犯人を捜すと言い張ります。
言い合いをしているうちに初めてアガサは自分本位のジェームズの本当の姿に気づき始めます。
結局ジェームズは一人でホテルを出て、B&Bをやっているマルセイユの友人のところに行くことにします。
アガサにはハガキを出し、マルセイユの住所を書き、彼女が喜んでやってくるのを待とうと思ったのです。
しかし、アガサはやって来ません。
ジェームズはマルセイユでも楽しめず、Carselyに戻りますが、何故アガサが来ないのか、その理由が全くわかりません。
よくある話ですが、女が男を崇めていると、男はそれが当たり前になり、いい気になって女をないがしろにし、そのうち女がそんな男に愛想を尽かし、去ろうとする。そうすると男が話が違うではないかと怒って大変なことになる・・・。
ジェームズは暴力的ではないのでいいのですけどね。

そんな頃、気ままなチャールズがCarselyにやってきます。
いるはずのアガサがいないので、ミセス・ブロクスビーにどこに行ったのか聞きに行きます。
不思議なのは、ジェームズのことをよく思っていないミセス・ブロクスビーが、チャールズもアガサにひどいことをしているのに、彼のことは好きなのです。
今回もチャールズはやってくれます。
アガサに会いにSnoth-on-Seaまでわざわざ行ったのに、友人が叔母の屋敷に遊びにやって来たからと、彼女に精神的な助けが必要な時だったのにもかかわらず、叔母が病気だと嘘を言って、また彼女を置いて行ってしまうのです。そんな嘘もすぐにばれましたけどね。
とうとうアガサはチャールズに愛想が尽き、その後、冷たい態度を取りますが、チャールズはそれを面白なく思い、アガサに仕返しをしようとします。
そんなチャールズですが、神はいました。ちゃんと彼は罰を受けます。
今回も肉食女性のすごさに辟易しちゃいましたけどね(笑)。
これに懲りてチャールズはアガサのことを正当に扱うでしょうね(たぶん)。

男たちは相変わらずのクソ(失礼)ですが、ミセス・ブロクスビーは心からアガサのことを思ってくれています。
前回はアガサが断ったので泊まりに行かなかったのですが、今回はアガサの窮地なので、夫が何を言おうが自分の意思を通し、アガサに会いに来てくれます。
それだけではなく、容疑者に会ってどういう人物か見極めてくれるのです。
ひょっとして彼女も探偵事務所に入るのかしら?(そんなことはないと思うけど)
彼女のような友達なら欲しいわ。

その後、息子のWayneとその妻が殺され、Geraldineの元夫たちを探っていくうちに色々なことが判明し、アガサはますます捜査にのめり込み、前回以上に危ない目にあいます。
アガサは恋愛と危険の依存症ですね。
愛はもはや尽きそうですが、危険とはまだ離れられないようです。

ハリー君はケンブリッジ大学に進学するので、そろそろ仕事を辞めそうですが、今回も事件解決に結びつくいい仕事をしてくれました。
刑事のビルがあまり出てこなくて残念。
彼もアガサも、ついでにロイも愛には縁がなくて可哀想ですが、そのうちいい縁がやってくるでしょう?

読みやすい英語なので、スイスイ読んでいけます。
問題は語彙ですが、辞書を引かなくてもkindleでは単語を指で押さえるだけで意味が出てきますから、便利でいいです。
読み上げ操作もできるらしいのですが、使えていません。
どうやるのか、そのうち調べてみます。

馳星周 『少年と犬』2020/07/19

図書館に村上春樹の新刊『一人称単数』文藝春秋社をリクエストしたら、予約画面ではアップダイクの『一人称単数』新潮社になっていました。
アレ?村上春樹の久々の短編集で話題になっているのですが・・・?


第163回直木三十五賞受賞作品。
一般に直木賞と言われていますが、正式名称は直木三十五賞なのです。
ちなみに芥川賞は芥川龍之介賞です。
私はこの年になるまで正式名称を知りませんでした(恥)。

シェパードと和犬の血が混じっている犬が駐車場にいました。
中垣和正はその犬のことが気になり、飼い主が見つからないと保健所に連れられていくことを聞き、自分で飼うことにします。
首輪のタグから犬は多聞という名であることがわかります。
多聞を認知症の母親に会わせると、母は多聞をカイトと呼びかけ、一緒に散歩にまで出かけました。
多聞は賢い犬で、和正は彼を守り神だと思うまでになります。
しかし、気づくと多聞はいつも南の方角に顔を向けています。
南の方になにかあるのか?
震災で職を失った和正は母と姉のために犯罪に手を染めていきます。
多聞はそんな和正のことを知ってか知らずか、すぐには南に行かずに和正のそばにいますが・・・。

それから多聞は様々な人たちに拾われます。
スラム育ちの強盗、男を殺した風俗嬢、心が離れた夫婦、末期癌の老人、そして震災で声を失った少年・・・。
釜石から熊本まで。
震災で飼い主を失った彼が目指すのはどこなのか。

犬は人間と一番近いペットかもしれませんね。
心が通いそうと思える何かがありますもの。
でも、多聞は守り神というよりも、死に神、は言い過ぎか、災いを招くもののような気がします。
だってねぇ・・・。(本を読むとわかります)
馳さんがハードボイルド作家だからかもしれませんが。

うちの犬たちはおバカなので、多聞のようにはなれませんわ。


「ママ、何か?僕たちは美味しいご飯をくれる人に着いていきます」

残念ながら読んでも感動はしませんでした。
私の読書傾向と賞とは合わないようです(笑)。

M.C.Beaton 『Agatha Raisin and the Deadly Dance』"2020/07/16

嬉しいことがありました。
あのシャープのマスクの当選メールが来たのです。
なかなか当たらないという噂だったのですが、うちが当たったということは、もうマスクはいらないという人が増えたからということですかね。
今になると三千円もするマスクは高いですが、記念に買っておきますわ。


アガサ・レーズン・シリーズは来年まで刊行されないということで、仕方なく英語で読んでみました。
アガサ、絶体絶命!

休暇でパリに行ったアガサはスリにあい、警察とのやり取りに頭にきて、さっさとイギリスに帰ってきてしまいました。
彼女の悪いところ(良いところ?)はカッとなるととんでもないことをやらかしてしまうことです。
警察よりも私の方が捜査はお手のものよ、と探偵事務所を開いてしまったのです。
なかなかよい秘書候補が現れずヤキモキしていた時に、アガサの家の隣に引っ越してきた67歳、未亡人のEmma Confreyがやって来ます。
彼女はなかなか図々しい性格のようで、面接中に猫を探してもらいに人がやって来たのをいいことに、その猫を探せたら雇うとアガサに約束させてしまいます。
その後、猫探しが上手くいったもんだから、しぶしぶアガサはエマを採用しますが、このことが後からとんでもないことになります。

猫の捜索や浮気捜査などに飽き飽きしていた頃、アガサの探偵事務所に友人のサー・チャールズ・フレイスから紹介されたというMrs Laggat-Brownがやって来ます。
明日の娘の21歳の誕生日パーティで婚約発表をする予定なのに、結婚すると殺害するぞという脅迫の手紙が来たと言うのです。
パーティに出席して怪しい者を捜してもらいたいと依頼されたので、アガサとエマはパーティに行きます。
花火が上がった時に、アガサは屋敷の窓から銃が発射されるのを見て、Mrs
 Laggat-Brownと娘、婚約者の三人をプールに突き落として助けました。
それなのにMrs Laggat-Brownはアガサがパーティを台無しにしたとカンカンになって怒ってしまいます。
しかし、アガサの友人でミルセスター警察の部長刑事・ビル・ウォンはアガサの言うことを信じ、銃が発射されたと見られる部屋を調べ、彼女が正しかったことを証明してくれました。
そのおかげでアガサは調査を続けられることになります。

アガサは50代前半、エマは60代後半ですが、イギリスの女性ってそんなに愛情に飢えているのかしら?
チャールズがエマをランチに2回誘っただけなのに、エマはその気になってしまうんですよ。チャールズは40代だったと思うけど、彼に対しストーカーまがいのことをやっちゃうんですから。
アガサの元同僚のロイなんかは30代なのに、エマは彼と私は恋人同士に見えるかしらなんて思ったりするんです。
エマもアガサのように結婚生活が不幸だったからかしら?
とにかくエマのアガサへの敵対心や上手くいかないのはすべてアガサのせいにするということには驚くばかりです。
エマは危ない人ですね。

可哀想だったのがアガサです。
命を狙われ、誰かそばにいて欲しい時に、牧師の妻のミセス・ブロクスビーが電話をしてきて泊まりにいくわと言ってくれたのに、アガサのことが嫌いな彼女の夫がそばで文句を言うのを聞き、アガサは大丈夫だからと断るんです。
牧師なのに、人が助けが必要だというのに、好き嫌いで行動していいのかしら?
このアガサの遠慮して素直に人の助けを求められないところが、幸せを逃してしまう原因じゃないかしら。
真の友はミセス・ブロクスビー。彼女の言うことを素直に聞こうよ、アガサ。

エピローグのクリスマスパーティは笑わせてくれました。
アガサは手柄をすべて自分のものにして、手伝ってくれた友人のチャールズとロイをないがしろにしたため、彼らを怒らせてしまいました。
やっぱり友人がいないのは淋しいと思ったアガサは仲直りをしたいのですが、なかなか機会がありません。
ミセス・ブロクスビーに相談したところ、クリスマスパーティを開くように勧められます。
クリスマス料理なんて作ったこともないくせに、ミセス・ブロクスビーの手伝いを断って、自分で料理をすることにします。
こういう所がアガサの悪いところですね。
さすがチャールズはアガサのことをよ~く知っていますから、用意がよかったですけど(笑)。
もちろん散々なパーティになりました。
エピローグを読むだけでも読んだかいがあったというもんです。

このままシリーズを読み進んで行けそうです。

中山七里 『ヒポクラテスの試練』2020/07/10

法医学ミステリー、ヒポクラテス・シリーズの第三弾。
10周年記念・12ヶ月連続刊行の6月の本です。
2月と3月の本は図書館の予約待ちです。


浦和医大法医学教室に城都大付属病院の内科医・南条がやって来た。
前日に搬送された前都議会議員の権藤の死に問題がありそうなので、解剖を引き受けてくれないかというのだ。
権藤は9ヶ月前に受けた健康診断では何も問題がなかったのに、肝臓がんで急死したという。
死因に疑問があるということで、浦和医大法医学教室の教授・光崎藤治郎は急遽埼玉県警の刑事・古手川を呼びつけ捜査をさせる。
権藤の甥が事故米を使って毒殺を目論んだ証拠があがるが、解剖してみると死因は肝臓がんではなく、思わぬ感染症だった。
パンデミックの可能性があり、感染源を突き止めなければならない。

その5日後、同じ症状の患者が見つかるが、問い合わせをした前日に亡くなっていた。
この患者は都庁の職員で権藤とは関係がなさそうだった。
しかし、調べて行くと、何年か前に二人はアメリカへ視察旅行に行っていたことがわかる。
二人に同行した五人も判明したのだが、彼らは硬い口を開こうとはしない。
一体アメリカで何があったのか。

浦和医大法医学教室の新米助教・栂野真琴と准教授のイタリア系アメリカ人のキャッシーはアメリカに渡り、視察団が訪れたニューヨーク市検死局の助けを借り、感染源を探っていく。

今回は光崎教授が流石でした。医師とはこうあってもらいたいものです。
しかし、議員たちはクソッタレでした。日本の恥。なかなか口を割らないのもうなずけます。
視察団が行った場所のことを書いたら某国から難癖をつけられるのではないかと心配でしたが、杞憂でした。驚いたことに、本当にそんな場所があったんですね。
そこがNY市警に摘発されたという報道があったはずですが、全く覚えていません。
作家ってこういうことも覚えておいて、いつか使おうと思っているのかしら?

現代社会の病巣を描く、なかなかグロな内容でした。


<今日のわんこ>


マフィンを食べていると「ママちゃん、自分ばかり美味しいもの食べてないで、僕にもください」と兄犬が言ってきました。

兄犬はシニア用餌を食べなくなったので、半分、弟用の療養食を混ぜています。
弟の餌の方が美味しそうだと思ったのでしょう。
この頃はちゅーるをつけないと食べません。口の奢った犬です。


「ママ、僕は餌は何でも食べます。良い子だと褒めてください」
「ハイハイ、良い子ねぇ。足におしっこをつけないと、もっと良い子なんだけどねぇ」
「ママ、そういう褒め方は子供のやる気をそぎます。やめましょう」
弟に怒られてしまいました(恥)。