石持浅海 『殺し屋、やってます。』&『夏休みの殺し屋』2025/04/26



殺し屋シリーズは4巻まで出版されているようです。
私は知らずに4巻目の『夏休みの殺し屋』から読んでしまいました。
読み終わってから気づいて1巻目の『殺し屋、やってます。』を読んだのですが、問題ありませんでした。
このシリーズはどの巻から読んでも大丈夫なようです。
ちなみに2巻目は『殺し屋、続けています。』で、3巻目は『女と男、そして殺し屋』です。

日本で殺し屋というと、古いですが、私は「必殺仕掛人」を思い出します。
現代には、いましたっけ?
あくまでも映画などからの影響ですが、A国やR国、C国にいそう。
この本の殺し屋さんは、なんの変哲もない普通の男の人です。
名前は富澤充といい、経営コンサルティング会社を経営しています。
殺し屋は副業です。

殺しのお値段は650万円。高いか安いか。どう思いますか。
私は安いと思いました。映画の殺し屋はもっともらっていますよね。
この金額には理由があります。
650万円は東証一部上場企業の平均年収で、「日本を代表する社員が1年間懸命に働いてようやく得られる金額を払ってまで、相手を亡き者にしたいのか、依頼人にその覚悟を問うている」のだそうです。
それでも依頼人がとても軽い動機で人を殺そうとしているので、なんだかなと思います。
650万円は安過ぎです。

どういう風に殺しを依頼されるかというと、こういう感じです。
連絡係①が口コミでやって来た依頼人と会い、依頼を受け、連絡係②に標的の名前と写真、住所や仕事場などの情報を渡す。
連絡係②から依頼を聞いた殺し屋は殺される人物が実在し、写真の人物であるかどうか確認し、依頼内容に間違いがないか調べ、三日以内に引き受けるかどうかの返事をする。
殺害を引き受けると、前金の三百万円が払い込まれる。
入金を確認してから二週間以内に実行する。
完了後、残金の三百五十万円が振り込まれる。
このシステムは依頼人と殺し屋の間に連絡係を二人置くことによって、お互いの情報を知り得ないようになっているので、互いに裏切りの心配がなく安全だそうです。(安全かなぁ?)

殺し屋はあくまでもビジネスライクに仕事をこなしますが、いかんせん、依頼人や標的の奇妙な行動が気になるのです。
例えば、子どものいない男がおしめを買う理由や毎晩公園で水筒を洗う女の謎、ベンチャー企業の社長の殺害が二度もキャンセルされたのは何故かなど。
殺し屋の富澤充は仕事をやりながら、見事に謎を解いていきます。

短編集なので、時間がなくてもすぐに読めます。
暇つぶしにぴったりな軽いミステリです。


<今週のおやつ>

美味しいと言うので、買ってみたイギリスのBen's Cookiesのクッキー。
チョコレートチャンク入りのが美味しい、激甘のソフトクッキーです。
飲み物がなければ食べられませんわwww。
一枚310~360キロカロリーぐらいあります。
食べるのが怖いクッキーです。

岩井圭也 『中華街の子どもたち 横浜ネイバーズ6』2025/04/24



ヒトツバタゴ、別名なんじゃもんじゃのきの花が満開です。
先週まではまだ咲いていませんでしたが、暑くなり、いっぺんに開いたのでしょうか。


昨年までは見に行くのが遅くて、枯れかけていましたが、今年はやっと間に合いました。

さて、横浜ネイバーズ・シリーズの最終巻です。


ロンは二十四歳になったが、未だに法律事務所のバイトの身だ。
祖父の良三郎からは家に金を入れろと言われているが、無視している。
友人のマツは料理人を目指し働いている。
大学に入学したヒナは大学生ながら起業しようとしている。
一体自分は何をしたいのだろうと悩む毎日だ。

そんなある日、ロンはマツから問われる。母親の南条不二子のことをどうするのかと。
捜査は警察に任せるとは言ったが、気になり、刑事の欽ちゃんに聞くと、母親の組織は強盗の割合を減らしてフィッシング詐欺に手を広げているという。
ロンは自分のために南条不二子を捜索し、会うことを決意する。

早速、ロンは仲間たちに協力を求め、組織のことを探り始めるが、それは危険な領域に入っていくことでもあった。

今回はロンが南条不二子に会うまでを描いた作品です。
相変わらずの無鉄砲で、考えなしなところが笑えます。
このままでいくと、ヒナのお尻にしかれっぱなしになりそうですねぇ。
将来の目標も決まったようですが、ひょっとしてそれになるのがとても難しいということを知らないのかな。ロンならありえそう。
電話番号さえ記憶するのが大変なロンがなれるのか。甘いんだよ。

まあ、予想できる終わり方でした。(一応ミステリに入れてるけど、謎解きがないのでミステリではないです)
第一シーズン完結と書いてあるので、そのうち第二シーズンが始まり、組織のトップの<アルファ>との対決がメインですかね。
第二シーズンも読むかどうかは今のところ不明ですが、岩井さんの別の本も読んでみようかと思います。

横浜ネイバーズ・シリーズ
⑥『中華街の子どもたち 横浜ネイバーズ6』(本書)

中山七里 『氏家京太郎、奔る』2025/04/23

鑑定人 氏家京太郎』の続編。


東日暮里のアパートの一室で腐乱死体が発見される。
部屋はゴミ屋敷と化し、死後二月が経っており、殴殺された形跡があった。
被害者は天才ゲームクリエイターの九十九耕輔で、現場から採取されたティッシュのDNAから九十九の同僚である御笠徹二が逮捕される。

警視庁科学捜査研究所のOBで、今は民間の<氏家鑑定センター>の所長である氏家京太郎はネットニュースを見て驚く。
御笠徹二は高校時代からの親友だった。

御笠は一度も九十九の家に足を踏み入れていないと主張し、犯行を否認する。
氏家は御笠の無実を証明するために、自ら奔走する。

前作に比べると、ちょっと中だるみかな。
親友のためなら、クールな氏家も本気になり、刑事事件に不慣れな美能弁護士に不安を覚えながらも、きっちり仕事をします。
警察と検察のやり方が汚いですが、何しろ経験値が低い美能弁護士ですから、見くだされても仕方ないです。
最後にやっとドンデン返しがありますので、お楽しみに。

最後の方で氏家の言うことに同意します。

「(前略)犯罪を犯した者を分母としてサンプルを取っているが、経済的貧困や教育的貧困に喘ぎ、家庭内暴力や愛情不足に悩まされても真っ当に育った人間は大勢いる。まともに育っているからサンプルに選ばれていない。こういう統計の取り方をすれば当然、劣悪な家庭環境に育った子どもが長じて犯罪者になる確率は高くなる。数字のマジックだ」

特殊清掃人の五百旗頭(いおさべ)と私立探偵の鳥海が氏家と仕事をし、氏家の頭の中にだけ御子柴弁護士が出てきます。
そろそろ御子柴弁護士に会いたいのですが、五月は高頭冴子シリーズの新刊が出版されるようです。

岩井圭也 『ディテクティブ・ハイ 横浜ネイバーズ5』2025/04/21

横浜ネイバーズ・シリーズの五冊目。


「1.きみはアイドル」
涼花の友だちがメン地下グループのヴェスパーズの郁斗推しをしていて、八十万もチェキ券を買いまくり、最近パパ活を始めたらしい。涼花はロンにその友だちにパパ活を止めさせ、郁斗を成敗してほしいと頼む。ロンはこれは郁斗個人だけの問題ではなく、グループやグループ活動をプロデュースしている事務所にも問題があるので、事務所にこのシステムを止めさせるしかないと考え、引き受けることにする。

「2.柔らかな闇」
ロンの祖父の良三郎が交通事故に遭い、しばらく入院することになる。そういう時にロンはカンさんの件でお世話になった清田弁護士に呼び出される。清田は法律事務所を首になり、開業しようと思ったが、立地がよくて家賃が手ごろな場所が見つからないので、元翠玉楼の場所を貸してほしいという。マツと彼の母親に迫られ、しぶしぶ三週間という期限をつけて貸すことにするが、どうも清田は人柄はよさそうだが、意外と狡猾なようだ。いつの間にかロンは清田の事務所の事務員にされ、三週間で出ていくはずだったのだが引き伸ばされる。
清田は母親が闇金業者から金を借りているという息子からの相談を引き受けるが、警告だけですまそうとする。ロンは納得がいかなく、勝手に動く。

「3.抜け穴と落とし穴」
清田のお使いで小田原まで出かけていたロンは大雪で電車が止まってしまって困っていた。混雑した駅のなかを歩いていると、男とぶつかる。男がプラスチックボトルを落としたので、拾って渡そうとするが、相手は気づかずに行ってしまう。ボトルの中には白いグミが十粒ほど入っていて、ボトルには<カンナビノイド>と記されていた。
<カンナビノイド>をスマホで調べ、とりあえず警察に持っていこうと決めた時に・・・。

「4.ディテクティブ・ハイ」
須藤という警察官が殺された。先月、交番に直接通報があり、その夜の当直だった須藤は一人でマンションへ行き、音がした部屋に駆けつけた。須藤が一向に戻ってこないので、心配した通報者が再度交番に連絡。別の警察官がやってきて、部屋に踏み込むと、うつ伏せに倒れている須藤と拘束された住人が発見されたという。
彼の影響で警察官になった欽ちゃんは須藤を殺した犯人と強盗事件の実行犯と指示役を捕まえ、トクリュウを壊滅させると決意する。欽ちゃんの話を聞いたロンは協力を申し出、欽ちゃんから警察ではできないことを頼まれる。

今回のキーワードは、メンズ地下アイドル、推し活、チェキ券、闇金、大麻グミ、匿名・流動型犯罪グループ(通称「トクリュウ」)などです。

特に推しのグループとかアーティストはいないので、「チェキ券」って何って感じです。
調べてみると、「チェキ」って富士フイルムのインスタントカメラのことで、「チェキ券」とはファンがアイドルやアーティストとチェキで写真を撮るために必要なチケットのことです。
イベントによって、アーティストと会話をしたり、サインやメッセージを書いてもらったりできる様々な種類のチェキ券があるそうです。
要するにファン心理をついた金儲けですね。

ロンは一本ネジが外れているからか、とても無謀で、殺されても仕方ないようなことを毎回平気でやっています。
いつも助けが来るのはお話だから。現実社会で彼のようなことをすると、とっくの昔に死んでいますよ。

六巻目が発売されましたが、第一シーズンの最終巻だそうです。
いよいよロンが母親と対決するのかしら。
今までよりももっと危険な目に遭いそうです。


<週末のランチ>
植木を買いに行くついでにランチをしてきました。


駐車場からお店に入る入り口は緑がいっぱいです。
入ってすぐ右側にレストランの入り口があります。


犬を連れて店内に入れるみたいです。レストランはテラス席なら犬OK。


店内からテラス席を見たところ。


キッシュセットを頼みました。
これにサラダとスープ、コーヒーがついています。パンが美味しいです。
プラス300円でデザートが頼めます。
お店でパンが売っていたので、買って来ました。

岩井圭也 『人生賭博 横浜ネイバーズ4』2025/04/20

横浜ネイバーズ・シリーズの四作目。


「1.名前のない恋人」
春節期間に入った頃、ロンはマツがギャンブルや柔術を止め、就職をしようとしていることを知る。おかしいと思いマツを問い詰めると、マツはアプリで出会ったシオンという彼女の借金を肩替わりしようとしていた。ロンはマツに言わずにシオンの身元を探る。

「2.人生賭博」
マツの人生の恩人で柔術道場の先輩の上林寛之ことカンさんが自殺未遂を起こす。競馬関連の詐欺に遭い、六百万取られ、借金を返せず、行き詰まったらしい。
マツはロンに協力を求め、カンさんを陥れたキシという男を探すことにする。

「3.ブルーボーイの憂鬱」
ロンはある事件で出会った予備校の数学講師のピロ吉から、小学五年の<ギフテッド>、久間蒼太に対人コミュニケーションを経験させてもらえないかと頼まれる。
興味を持ったロンは彼と会ってみると、彼は自分はハッカーだと言い出す。ハッカーにはホワイトハットハッカーとブラックハットハッカーがいて、彼がどちら側のハッカーか当ててみろとクイズを出される。ヒナに彼のことを話し、ロンは答えを得るが、当たっているのか?

「4.排除する者(エリミネーター)」
ロンは大月薫弁護士から<大八リアルティ株式会社>がディープフェイクを使った詐欺被害に遭ったことを聞かされ、プログラミングに詳しい幼馴染みを紹介してくれと言われ、断るが、ロンはある子を思い出していた。彼は最初は断るが、ヒナから説得してもらい、彼に協力してもらい調査を始める。

今回のキーワードは、マッチングアプリ、サブリース契約、競馬詐欺、ギフテッド、ハッカーの種類、ディープフェイクなどです。
色々な詐欺事件があって、もうついていけません。
とにかく被害者にならないように、注意していかなければなりませんね。
今はよくても、もっと年を取ってわけがわからなくなったら、どうしましょうね。

ヒナは横浜国立大学理工学部に、涼花は横浜市立大学の看護学科に合格します。
マツにも何かありそうです。
友だちが次々と自分の進む道を選んでいくのを見て、ロンも焦ってきたようです。
大学に入学したヒナも新しい出会いがあるでしょう。
ウカウカしていられないロンですね。

だいたいの登場人物たちの過去が明らかになってきたので、残るは欽ちゃん。
彼にどんなお話があるのか、楽しみですね。

<漫画の新刊>
私の好きなホテルの紹介漫画、『おひとりさまホテル』の六巻目が出ました。
京都の「丸福樓」に泊まってみたいです。
『本なら売るほど』の二巻目も発売されました。十月堂の店長さんだけではなく、特別な一冊を求めてやって来るお客さんも変わってますわww。

本には関係ないですが、この頃、見ているのが、「Kevin's English Room」です。大学の同窓生三人がやっています。
Kevinはアメリカ育ちの日本人で、「牛肉じゃなければハンバーガーじゃない」とか、彼のアメリカンなこだわりが面白いです。
いろいろなことをやっていますが、「英語の看板シリーズ」とか「ケビンの知らない日本語を探せ」、「CMでよく聞く『アサヒスーパードライ』をカッコ良く発音したい!」など笑ってしまいますので、電車の中では見ないように。
彼らは大学でアカペラサークル出身なので、歌もうまいです。
英語で歌った歌がありますが、お勧めは日英仏三か国語で歌う『水平線』と『3月9日』です。フランス語でネイティブではないやまちゃんが歌っていますが、いいんですよ。
楽しくアメリカの文化や英語が学べます。

岩井圭也 『凪の海 横浜ネイバーズ3』2025/04/18

横浜ネイバーズ・シリーズの三冊目。


「1.ゴッド・イズ・バック」
近頃、ロンは困っている人、悩んでいる人の助けになることが、己の使命だと考えるようになったが、彼にトラブルシューティングを依頼する者は少ない。広告でも出そうかと考えている時に、涼花から相談があると電話が来る。
「佐藤智夫」は「チップ」という異名で活躍するプロゲーマー。活動歴は七年以上で、高校一年の時から日本のプロチームに所属し、プレイ動画の配信もしている。涼花によると、競技ゲームからは引退してストリーマー専業になると言っているという。その理由がチップの仲間が八百長に加担しているかららしい。
涼花はチップに競技を続けてほしいから、ロンに賭博を壊滅させてくれと言う。
ロンはとりあえずチップに会ってみる。

「2.推しの代行者」
ロンは警備員のバイトを始めたが、後悔している。違反をする人々や転売屋にはウンザリだ。ライブの警備から帰り、寝ようとした時に、電話をかけてきたのが、以前特殊詐欺事件で知り合ったコーキの中学の同級生の石森という男だった。
十日前に家の近くでいきなり誰かに殴られたので、警察の代わりに犯人を捕まえてほしいという。詳しく話を聞いていくと、石森が転売屋だということがわかる。
しばらくして、石森のアパートの部屋が荒らされ、在庫を全部持っていかれたという連絡が来る。
これ以上の被害に遭わないために、ロンが犯人を捕まえたら、転売から足を洗うという約束を石森にさせる。

「3.盗人のルール」
競馬で借金をし、どうしようもなくなった吉川は闇バイトをすることにする。
指定されたアパートの一室に行くと、七十五のじいさんがいるはずなのに、坊主頭の体格のいい男がいた。じいさんの孫のふりをして、うまく騙して金の入ったハンドバッグをかすめ取ろうとしたら、別の男が現れる。こいつは誰だ。

「4.凪の海」
川崎のライブハウスでグッド・ネイバーズのライブが行われた。終演後、凪の前にナイフを持った女が現れる。七年前、彼女のサガミ港産に勤めていた夫が高所から落下して亡くなり、第一発見者の凪が犯人だ。夫を殺したのに、一人で立ち直るなんて、許せないと叫ぶ。ロンたちで女を捕まえたが、それ以降、凪と連絡が取れなくなる。
この頃、グッド・ネイバーズがメジャーデビューすることになっていたが・・・。

今回のキーワードは、e-sports、転売ヤー、闇バイト、アポ電強盗、LGBTQ。
凪の過去が明らかになりますが、ハッピーな終わり方でよかったです。
四章で川崎臨海部の夜景を思い出しました。

どの事件もサラッと読み終わってしまいます。
その後のことは追々語られるのかな?
このシリーズはYA向きですね。

東野圭吾 『マスカレード・ゲーム』2025/04/17



ハナミズキが満開です。
急に暑くなり、わんこたちが舌を出すようになりました。
このまま行くと、連休は何度になるのか、不安です。

「マスカレード・ホテル」シリーズの四冊目で最終巻です。


三週間前に、二階建てのアパートの一室で溶接加工会社勤務の入江悠斗が刃物で胸を刺されて死んでいた。
動機を探っていくが、金銭目的はあり得ない。彼が死んで得をする人間もいない。だが、彼を憎んでいた人間はひとりいた。
入江は十七歳の時に、駐輪禁止の場所に自転車を駐めようとして、通りがかりの学生に注意され、かっとなって相手に激しい暴行を加え、現行犯逮捕され、少年院送致された。一年三ヶ月後に少年院から出て更生保護施設に入り、今の会社に入社していた。
被害者の神谷文和は植物状態になり、事件から約一年後に亡くなっていた。

一週間前に、狛江市の児童公園で、産業廃棄物工場で働いている四十歳の高坂義広が殺された。
入江悠斗と同じように鋭利なナイフで正面から胸部を刺されていた。
彼は二十年ほど前に強盗殺人を犯したが、犯行登場は二十歳であったため、それが考慮され、懲役十八年の実刑判決で、昨年千葉刑務所から出所していた。

三日前の夜、吉祥寺の路上で飲食店勤務、三十四歳の村山慎二が襲われた。凶器はナイフで、胸部を刺されていた。
彼は六年前、元恋人の全裸画像などをインターネット公開し、被害にあった中三の少女が自殺。村山は公表罪及び公表目的提供罪で懲役三年、執行猶予五年の有罪判決を受けていた。

三つの事件の殺害方法は同じで、同一犯の犯行の可能性があった。
だが、三件の事件の遺族にはきっちりとしたアリバイがあった。
捜査一課の警部・新田浩介は他の二件の殺人事件を担当する先輩刑事の本宮と梓警部、能勢警部補と協力して捜査に当たることになる。

クリスマスイブの日、一件目の事件の被害者の母親、神谷良美がホテル・コルテシア東京にチェックインする。
新田たちはホテル・コルテシア東京を訪れ、宿泊名簿を調べてみると、リベンジポルノの被害者の父親、前島隆明と高坂義広に殺された母親の息子、森元雅司が翌日に宿泊することになっていた。

三人は共犯で、これは交換殺人もしくはローテーション殺人なのか。
ひょっとして四番目がいるのか。

新田はまたホテル・コルテシアでフロントクラークとして潜入捜査を行うことになる。

新田の行くところになかなか芯の強い、一筋縄ではいかない女性が登場します。
前回は山岸尚美でしたが、今回は梓警部。ホテルではやってはいけない勝手なことをして新田を悩まします。
警察で女性として出世していくためには、普通のやり方ではダメなんですねぇ。

怪しい人がいたのですが、犯人は思いがけない人でした。
最後まで読ませる東野さんは流石ですが、結末はふ~ん、でした。
新田は新しい人生のステージを踏み出します。
ひょっとしたらまた戻ってくるかもしれません。
これもドラマ化か映画化されそうです。お楽しみに。

「マスカレード・ホテル」シリーズの順番
③『マスカレード・ナイト』
④『マスカレード・ゲーム』(本書)

岩井圭也 『横浜ネイバーズ』&『飛べない雛 横浜ネイバーズ2』2025/04/14

暑くなったり、寒くなったりの季節の変わり目で、痛めた腰や膝が痛くなります。
暑いのは嫌ですが、最低気温が20℃ぐらいの気候になってもらいたいものです。


ソメイヨシノが終わると、八重桜が咲きます。この桜の名前が書いてあったのですが、忘れてしまいましたw。
ツツジが咲き始め、ママは再度わんこたちの写真を撮ろうと計画していますが、どうなることやら。

岩井圭也さんの本が面白かったので読んでみようと思い、シリーズ物を選んでみました。
「横浜ネイバーズ」シリーズで、お話の舞台が横浜中華街です。
中華街にある善隣門は「親仁善隣」という「周囲の国や人と仲良くする」という意味が込められているそうです。
こシリーズの表紙、好きです。


小柳龍一、通称ロンは、「翠玉楼」という四川料理の名店のオーナーである祖父、良三郎と店の二階に住んでいる。いずれはこの店を継ぐつもりであったが、良三郎は来月いっぱいで店を閉店させると言う。
二十歳になったのだが仕事に就かずに、週三日のアルバイトをしながらフラフラしているので、毎日良三郎にどやされている。
いつも食事をするのは、保育園からの付き合いの趙松雄(ジャオ・ソンシオン)ことマツの両親が経営している「洋洋飯店」だ。
マツは柔術をやりながらたまにジムのインストラクターとして働き、残りの余暇はギャンブルとゲームに費やしている。
もうひとり、保育園からの幼馴染みに、ヒナこと菊地妃奈子がいる。
ヒナは高校一年の夏以降自宅に引きこもり、自宅から一歩も出ることなく、生活している。ロンとはウェブ会議ツールで定期的に話をしている。
他に地元の先輩で警察の知り合いもいる。欽ちゃんこと岩清水欽太で、神奈川県警刑事部捜索一課に所属している。ロンとマツにとっては兄同然の間柄だ。

「1.墜落少女」
三年前、ロンたちが高校二年の時に起こった「山手心中事件」を解決したことから、ロンはこう言われることが嫌だったが、<山下町の名探偵>と言われている。
ある日、ロンは高校の同級生で、ヒップホップクルー「グッド・ネイバーズ」のラッパー<凪>として活躍している山県あずさから呼び出される。
凪の三歳下の妹のかすみがヨコ西の雑居ビルから飛び降りて、亡くなったそうだ。
警察は自殺と見なしているが、死んだ理由が知りたいので、かすみが死ぬ前に一緒にいた男を探してほしいと言うのだ。
ロンはヒナにSNS経由でその男に関する情報を集めてもらう。
実はヒナは自称「SNS多重人格」。というのもツイッターで十三、インスタグラムで五、ティックトックで二のアカウントを持っていて、アカウントの数だけ人格を持っているのだ。
調べていくと、男は「ヨコ西の管理人」と呼ばれているようだ。

「2.課金にいたる病」
十一月の昼下がり、ロンは普段はデザイン事務所で働いている凪に呼び出され、伊能優理香というグラフィックデザイナーを紹介される。
優理香の生命保険会社に勤める夫の友田克志が七百万もの借金をしているらしく、浮気をしている可能性があるので、突き止めてもらいたいというのだ。
克志がツイッターをしているので、ロンはヒナにアカウントを調べてもらい、自分は克志の尾行を始める。
克志はソーシャルゲームに熱中していた。

「3.ベアードマンの亡霊」
春節が近づいた頃にマツから緊急の電話が来る。この一、二か月、髭の男を描いた正方形のステッカーが中華街の至る場所に貼られていた。マツはそのステッカー貼りの犯人にされたのだ。急いで交番に行くと、商店主たちがいて、ロンにマツが犯人じゃないと証明したいなら、犯人を捕まえてくれと言う。
ロンは欽ちゃんや知り合いたちに協力を求め、犯人を探し始める。

「4.デッドエンド・キッズ」
宮本が特殊詐欺に引っかかり、四百万取られたという。
ロンは良三郎から犯人を捕まえるように命じられる。
欽ちゃんから特殊詐欺の講義を受け、手を引くように言われたが、ロンは友人関係のツテを辿り、詐欺グループを探すことにする。

このシリーズで扱うのは、現代社会の闇です。
キーワードは「未成年買春、P活、市販の咳止めの濫用、薬物依存、ソーシャルゲーム、バーチャルYouTuber、スパチャ、ヘイトクライム、爆弾テロ、特殊詐欺、裏バイト」などです。
「池袋ウエストゲートパーク」と同じようなものかなと思いながら読み進めます。


『飛べない雛 横浜ネイバーズ 2』
「1.そして、女神は消えた」
五月下旬の平日、ヒナに相談に乗ってほしいことがあると呼び出される。
ヒナがファンの美容系インフルエンサー、”えぐちよ”が失踪したらしいので、彼女の居場所を探し出してほしいと言うのだ。
ロンは”えぐちよ”を知っている美容師や雑貨店のスタッフ、バーの店主、美容系インフルエンサーなどとヒアリングしていく。

「2.飛べない雛」
<菊地妃奈子は犯罪者である>という一文がツイッターに投稿され、ロンは凪からその投稿のことを知らされる。
ロンがあらゆる手段でヒナに連絡するが、ヒナから返事は来ない。
ロンとマツ、凪の三人はヒナに会いに行くが、ヒナとは会えず、彼女の母親から間を取り持つことを拒否される。
ロンはツイッターの投稿に反応していた、ヒナの高校時代の同級生らしきアカウントにDMを送り、会って話を聞くと、とんでもないことがわかる。
クラス担任の比良石とヒナが二度横浜駅周辺で会っていたことが原因となり、SNS上でヒナへの誹謗中傷が起こったというのだ。
欽ちゃんから役立つ情報が得られる。
果たしてロンたちはヒナを助けることができるのか。

「3.チートな俺」
友達からQRコードの上に別のQRコードを貼り付け、売上横取りをする方法を教えられ、早速バイトのスーパーマーケットでやってみると、上手くいった。
一ヶ月後にばれないように剥がしておいた。
社員に気づかれたようなので、たまたま入った中華街の「洋洋飯店」という店でやってみた。
すると・・・。

「4.マザーズ・ランド」
ミスティ法律事務所の大月薫のところに神奈川県警捜索一課の岩清水欽太がやって来る。大月が関係している地面師事件で主要な役割を演じた仲介業者の女性が、ある死亡事件に関わっている可能性があるので、大月が顧問している会社が地面師に狙われそうになったら、いち早く知らせてほしいと協力を要請された。
欽太は不幸の根源を見捨てておけないからと、ロンにも力を貸してくれと頼む。
ロンはヒナやマツに相談せずに、ひとりで両親の過去と向き合うことを決意する。

今回のキーワードは、「インフルエンサー、ルッキズム、インスタグラム、ツイッター、QRコード詐欺(クイッシング)、地面師詐欺」などです。
2章ではヒナの秘密が暴かれ、4章ではロンの両親の過去が明かされています。
ロンの家族と中華街のために奮闘する欽ちゃんは格好いいですね。

このシリーズの一巻目でシリーズの主要な人物たちを登場させ、二巻目からそれぞれの人物たちに関係する事件とリアルに起こりそうな事件の両方を描いていくようです。
どの登場人物たちも心に傷を負っています。そのためか互いに思い合う気持ちが強いようです。
ロンはこれから中華街のトラブルシューターを目指していくようです。
取り上げている事件は残酷なものもあるのですが、軽さが岩井さんの持ち味なのでしょうか。それほどずっしりと胸にこたえませんでした。
二巻目から「池袋ウエストゲートパーク」と違う個性を出してきました。
三巻目が楽しみです。

柚月裕子 『逃亡者は北へ向かう』2025/04/10



2011年3月の大震災直後に、二十二歳の真柴亮は一般人の男性と警察官を殺害して逃亡している。
彼の人生は不幸の連続だった。
彼が生まれた日、父親の日沼はひき逃げ事件を起こし、その後に両親は離婚。
母親の実家に身を寄せるが、母親と祖父が亡くなり、児童養護施設に引き取られ、そこを出たあとは親しくする者もなく、町工場で働いていた。
彼は北へ向かう。

さつき東署の刑事、陣内康介は津波で娘が行方不明になるが、娘の捜索よりも職務を優先せざるを得ない。
真柴を直接取り調べた陣内は、真柴を追うことになる。
真柴はどこに行こうとしているのか…。


柚月さんは東日本大震災で家族を亡くしているそうです。
その経験をもとに書かれた描写は真に迫るものです。
読んでいると辛くなります。

真柴のような人がいないことを願いますが、ちょっとした選択の違いで、人生を踏み外してしまうことはありそうです。
彼と行動を共にした直人君は真柴の何に引かれたのでしょうか。
彼の人生が幸せなものであることを願います。
最後はそれしかないことはわかりますが、切ないです。

震災を風化させないためにも読んでもらいたい小説です。


<今週のおやつ>
久しぶりに頼んだお届けものです。物価が高くなり、贅沢ができなくなっていますが、たまにはいいですよねw。


前にも頼んだことのあるMaison KEIのビスキュイブルトンです。
大切に味わって食べますわ。

女性が活躍する日本のミステリ(文庫本)2025/04/08



田村和大 『罪と眠る ヤメ検弁護士・一坊陽子』
十二年前に検察官を辞め、故郷の福岡で弁護士になり、法律事務所を開いた一坊陽子のところに、司法研修所で同期だった桐生弁護士がアポイントもとらずにやって来る。
桐生は二つの事件を依頼する。一つは、十七歳の少女が父親を刺し殺したという殺人被疑事件の共同弁護。
もう一つは桐生が依頼人である懲戒請求事件の代理人。
まったく知らない相手から懲戒請求され、その理由に<桐生晴仁が佐灯昇を殺した>と書いてあったというのだ。
懲戒請求がどうなるのかわからないので、少女の件は共同弁護してほしいという。
なんで私を選んだのかと思うが、陽子は引き受けることにする。
二つの事件を調べていくと、思わぬ事実が・・・。

桐生にちょっと気がある陽子ですが、とんでもないだめんずを飼っていますww。
弁護士というのは気の張る仕事ですから、癒しが欲しくなるのもわかりますけど、それにしてもねぇ…。
とにかく予想のつかない最後のオチでした。

山邑圭 『刑事に向かない女 再会』
荻窪東署から警視庁捜査一課に出向している椎名真帆のストレスは益々増加の一途を辿っていた。というのも、デカは十分足りてるから面倒が見切れないと、一課専属の広報担当にさせられ、雑務処理の仕事ばかりしているのだ。
そんな時に、昨秋からアメリカのワシントンD.C.に出向していたキャリアの有沢香織警部が帰国し、日米合同航空祭に出席する駐米公使の工藤秋馬の身辺警護を頼まれる。工藤に殺害予告がきており、彼は次期都知事選に出馬予定で、航空祭後に出身地の北海道千歳市に寄ってからアメリカに帰るという。
一方、以前椎名とコンビを組んだ大森湾岸署の刑事、村田龍彦は荻窪東署の新堂班長から一年前の交通事故の再捜査を頼まれる。
一見関係のなさそうな二つの任務だったが…。

題名が「刑事に向かない」とはいえ、椎名真帆は刑事に向いています。
椎名真帆も有沢香織も格好のいい女性刑事です。
椎名は警視庁捜査一課で腐っているよりも、荻窪東署に戻って働いてくれる方が人のためになっていいですよね。
一課で頑張り、一課の奴らの鼻を明かすってのも読みたいですが、早く荻窪東署に戻り、活躍するのを楽しみにしています。

シリーズ物なので、順番を載せておきます。
④『刑事に向かない女 再会』(本書)

二冊ともに面白かったです。お暇な時に手に取ってみて下さい。