ドン・ウィンズロウ 『砂漠で溺れるわけにはいかない』2006/08/15

ニール・ケアリー・シリーズの最終巻です。

父親がわからず、売春婦の母親にネグレクトされて育ち、11歳の時から”父さん”と呼ぶようになるグレアムに生きるすべを教えられてきたニール。
カレンとの結婚式が間近に迫っています。
カレンは何故か子どもを欲しがり、ニールは子どもを持つことにそれほど積極的にはなれません。
そういうときに、もう止めたはずの銀行の秘密機関”朋友会”の仕事が入ります。
ラスベェガスから帰ろうとしない、86歳の元ストリップ幕間劇の看板役者ナッティ・シルヴァーを連れ戻すという、一見簡単そうな仕事です。
いい金儲けになると思い引き受けたのですが、何故かナッティは帰ろうとはしません。
口が達者で、ジョークをしゃべり続け、相手をしないとふてくされます。
飛行機に乗せようとすると、飛行機が嫌いだと言って、断固として動こうとはしません。
車で帰ろうとすると、ジープは軍用車で絶対に駄目だ、日本車、ドイツ車のような旧枢軸国で作られた車は嫌だと文句ばかり言います。
やっと乗せて出発したと思うと、トイレに行っている間に、車ごと逃げられてしまいました。
ナッティは放火の場面を見たらしく、命を狙われていたのです。

ハチャメチャなじいさんとニールの掛け合い漫才がおもしろいのですが、ミステリーとしてはたいしたことはありません。
ニールが自分の心と出会い、自分は子どもを持つことが怖いのではなく、父親になることが怖いのだと気づくまでの話だと思った方がいいでしょう。

結局ニールとカレンは結婚するのを止めました。
「お互いの求めるものがちゃんとわかるまで」ということで。
このシリーズはどうやらこれで終わりだそうですが、作者のドン・ウィンズロウはまた書くかもしれないと言っているそうです。
次回会うときに、二人はどうなっているでしょうね。お楽しみとしておきましょう。