江國香織 『薔薇の木琵琶の木檸檬の木』2006/09/08

江国さんの本は『きらきらひかる』と『号泣する準備はできていた』を読んだことがありますが、あまり印象に残っていません。人間の掘り下げ方が浅いように思えたのです。
なんで今回この本を読んだかと言うと、彼女が書いた短編がおもしろかったからなのです。ある兄弟たちの話で、お母さんは子どもたちに手作りの料理を作る人で、自分が出かけるときも、ちゃんと子どもたちのために夕食を作っていきます。しかし、ある日、子どもたちは反乱を起こすのです。お母さんの作った夕食を庭に埋め、いつも食べちゃ駄目だと言われているジャンクフードを食べるのです。この子どもたちの様子がかわいらしくて、読む本が見つからなかったこともあり、彼女の本を手に取ってみました。

なんとも不思議な恋愛小説です。
登場人物たちは、夢の国に生きているかのように、実態のないものです。フワフワとしていて、とらえどころのない人物たちが、実態のない恋愛をしている、そういう感じの本です。
主人公の女性は、結婚していて、日常生活に何不自由していない。家にいるのが大好き。紅茶を入れて、くつろぐ、そういう生活が好き。夫とはセックスレスに近いけれど、同じような趣味をしているので、夫の選ぶ物を着て、夫の喜ぶように行動する。なのに、何故か公園のベンチに座っていた、さえない男が気になる。歯医者でばったり会ったことがきっかけで、毎週会い、話をすることになり、ホテルにまで行ってしまう。
友人の夫は、若い女と浮気を繰り返す。だからといって妻にこれといって、不満があるわけではない。でも、女に子どもができ、ひとりで育てると聞いたとき、男の世界は終わる。
不可解だ。どの登場人物も、恋愛をしながら、そんなに悩むことなく、淡々と日常を生きている。この無機質な感じが、江国さんの描く世界なのだろう。この乾いた感じがいいという人もいるのだろう。
現代の男女の恋愛ってこんなものなのかもしれません。なんとなく、彼女の本を読みながら、思ってしまいました。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2006/09/08/516157/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。