「いつか眠りにつく前に」を観る2008/03/01

原題は『EVENING』。
人生の終わりに、人は何を思うのでしょうか。
人の人生は選択し続けた結果だといいます。
もしあの時、あちらの方を選んでいたらと、ありえたかもしれない過去を思わない人はいないでしょう。
選んだことは過ちなのでしょうか?

美しい海に浮かぶボートに横たわる女性の場面から映画は始まります。
病気で最期を迎えようとしているアン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)は現実と夢の間を行き来しています。
彼女が見る夢は、彼女が一番生き生きしていた時、親友ライラ(メイミー・ガマー)の結婚式の日のことです。
歌手として成功することを夢見、ニューヨークで暮らしていたアン(クレア・デインズ)は、ライラの結婚式に出席して、ブライドメイドをつとめ、歌を歌うために、ロードアイランドのニューポートにやって来ます。
彼女をバス停まで迎えに来たのが、ライラの弟のバディです。
彼はアンのことが好きだったのですが、そのことを隠していました。
ライラとバディは上流家庭の子どもで、家族はニューポートに別荘を持っています。
バディに別荘の周りを案内してもらっているときに、アンは元家政婦の子どもで、今は医師をしているハリスに紹介されます。
バディによると、ハリスはライラの初恋の人で、今でも彼のことが好きだと言うのです。
バディはライラの結婚は間違っている、止めさせるべきだといいはります。

残念ながら、映画ではハリスの魅力がわかりませんでした。
どこにでもいるハンサム青年という感じで、どうしてライラ兄弟やアンが引かれるのか、私には理解できませんでした。
ハリス役のパトリック・ウィルソンが私の好みじゃないだけかしら?

結婚式の前夜、泥酔したバディを一緒に介抱したアンとハリスは、互いに引き合うのを感じ、キスを交わします。
結婚式の朝、アンはライラに言います。
一緒に逃げだそうと。しかし、ライラはハリスに告白をしたのだけれど、ふられた。
だから結婚するとアンに告げます。
結婚式の夜、ライラ達がハネムーンに出掛けた後に、キスをしているアンとハリスを見たバディは、アンに告白します。
バディの心に答えられないと告げるアン。
バディは自暴自棄になり、崖から海に飛び込み、しばらく浮かんでこなくて、みんなを心配させます。
彼がケロっとして現れた時、頭にきたアンは彼に自分の人生をちゃんと生きなさいと怒鳴り、それからハリスに誰もいないところに連れて行ってくれるようにと頼みます。
二人は知らなかったのですが、バディは二人の後を追っていたのです。
恋に狂った男は恐ろしい。まるでストーカーですね。
ハリスの秘密の場所に連れて行かれたアンは、そこで彼と結ばれます。
一方、二人を追っていたバディは…。

死の床で、アンは"Where's Harris?" とつぶやきます。
ハリスこそ、彼女の人生で唯一の人だったのです。

アンの現実世界には二人の娘、コニーとニナがいて、それぞれ父親が違います。
コニーは結婚していて、仕事を持ち子どももいます。
自分たちの面倒も見ずに、仕事に行く母親を理解できなかったのですが、自分が子どもを持ってから、それは仕方がないことだったのだと気づき、今はアンのことを許しています。

ニナは満たされない思いを抱いて生きています。
男も仕事もとっかえひっかえで、幸福が何かがわからないのです。
母親が知らない男性の名前を言ったことで、ニナは心を乱されます。
歌を歌いながら娘達を育てたアン。
そのアンの姿を見ながら、寂しい思いをしてきた娘達。
一体母の人生は幸せだったのだろうか?
ニナは現在の恋人ルークとの仲に悩んでいました。妊娠したのです。
彼と一緒にやっていけるのかどうか、確信が持てないのです。
ニナは思いきってアンに妊娠を告げます。
するとアンは「赤ん坊はすばらしい存在」であると言い、妊娠を喜んでくれました。

思いがけない人物が現れます。ライラ(メリル・ストリーヴ)です。
看護師が彼女に電話をしたのです。
アンのベットに一緒に横たわり、話をするライラとアン。
映画のハイライトです。
ライラは結婚式で歌を歌っていたあなたはすばらしかった。
そのことがどれほどそれからの人生で励みになったかを話します。
帰り際にライラはハリスのことを問うニナに言います。
あなたの母親の人生はすばらしいかった。
あなたがいるんだからと。

アンがニナに言うように、人生は選択の連続で、その選択には過ち(ミステイク)なんてないのです。
それは過ちではなくて、自分の人生に必要なこと、それをただやっていくだけなのです。
こう思うと人生を肯定して生きていけるのではないでしょうか。
そうは言っても、ニナのように自分に自信が持てず、ゆえに選択できず、混乱してしまうことが多いのが人生なのですがね。

この映画の中にヴァネッサとメリルの実の娘がいます。誰なのか、わかりますか?

佐藤多佳子 『しゃべれども しゃべれども』2008/03/02

『しゃべれども しゃべれども』は落語家の話です。
邦画には興味がないので知らなかったのですが、TOKIOの国分太一が主人公を演じて、評判になっていたそうです。
本を読んだ感じでは、ちょっとエ?かな。

古今亭三つ葉は二つ目の落語家です。
古典落語が好きで落語家になったようなもの。
普段も着物を着て歩いているほどです。

彼の親友にテニスコーチをしている綾丸良がいます。
彼から話したいことがあるから、テニスクラブまで来てくれと言われ、出掛けていきます。
彼からお願いされたのは、この頃コーチをしていて吃音がでるようになったので、どうにかしてほしいということでした。
このままでは卒業後にテニスクラブに就職できなくなるというのです。
とりあえず、師匠がカルチャースクールの話し方教室の講師で行くから、行ってみればといいますが…。

話し方教室で猫のような女に出会います。
彼女はキッと前を見つめ、師匠が話し始めると、怒ったように席を立って出て行ったのです。
彼女を追いかけ、なんで席を立って出て行ったのかと聞くと、師匠が本気でしゃべっていないからだといいます。
そんな彼女に何故か自分が次の寄席に出るから来てくれという三つ葉でした。
良からも相変わらず、吃音にならないようにするにはどうしたらいいか、教えてくれとせっつかれていました。

そんなある日、いじめにあっている、関西弁しか話そうとしない小学5年生、村林優に落語を教えることになります。
こうなったらやるしかない。
一人も大勢も同じだ。俺は噺家だから落語しか教えられない。
落語を教えてやろう、てなもんで、村林優、良、猫女の十河五月、そしてプロ野球の解説で上手く話せないという悩みのある、元プロ野球選手湯河原太一の4人に、「まんじゅうこわい」を教えることにします。
優は関西弁でやるといいはり、良と湯河原はまるっきりの下手、五月は意外と上手くて正統派。
4人とも、それぞれ訳あり。彼らはどう変わっていくのでしょうか。

前に読んだ三浦しをんの『仏果を得ず』に似た物語です。
『仏果・・・』を読んでいなかったら、結構気に入っていたかもしれません。
その後だったので、私の中では評価は下がってしまいました。
映画、DVDで出たら借りてみましょうかね。

北尾 トロ 『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』2008/03/05

北尾トロの本はかれこれ5冊ぐらい読んでいますが、今回の本が一番おもしろかったです。

今までやってみたかったことを、トロさんはやってみます。
その中の一つが題名になっている、鼻毛が出てますよと教えてあげることです。
鼻毛が出ている人って、特に男性に多いですよね。
なるべく見ないようにしますが、結構気になります。
でも、自分の恋人でもないし、別にいいや~という感じでほっときます。
ホント、変なことにチャレンジしますね。トロさんは。
たまたま運が良く、トロさんに会った後にデートがある人だったので、感謝されていましたが、実際はどうなんでしょう?

他にも電車に乗っている人の中で気になる男性と話そうとしたりします。
ところがなんとトロさんに話しかけられた男性はみな逃げていくのです。
電車は単に通勤するために乗るものだから、話しかけられると嫌なのかもしれません。
それにしても逃げなくてもと思いますが。
電車で暴力にあっている人を助けないと言われていますが、他人に対して無関心な風潮が広まっているのですかね。
前に常磐線では酒盛りをしている人たちがいるとか言われていましたが、そういうのと乗り合わせると困るけれど、人間的かもしれません。

世の中そんなもんと思ったのが、42歳のルポライター、トロがハローワークに行って、就職先を探すというものです。
40歳を越しているだけでも仕事がなかなかないそうです。
その上トロさんは会社に勤めたことがないのです。
ここは大丈夫だろうと思って行った鉄スクラップなどの加工処理の会社でも、即断られたそうです。
求職者の最後の砦がタクシー運転手だそうです。
そうなんだ。免許の持っていない私はどうなるの?
世の中、甘くはないですね。

センチメンタルジャーニーでは、初恋の人に告白したり、母親に父親とのなれそめを聞いたり、高校時代にいじめた教師に謝りに行ったりします。
唖然としたのは、いじめられた教師が全然気にしていなかったことです。
この教師問題かも。
生徒が授業を全然聞かないというのに、何にも思わないで、教師を続けていたというのは、どういう奴だなどと思ってしまいました。

そうそうと膝を叩いたのが、人に二千円を返してと言うことです。
二千円って、半端なお金で、相手が忘れているようなら、なかなか返してって言えないですよね。
微妙な値段です。
五千円なら、堂々と言えますよね。
私なんか結構根に持つ人間なので、未だに人に貸し返ってこない1800円や本を覚えています。 
言えないよな…。もう貸した人には会ってないしね。

なんと言っても、私的におもしろかったのが、最後の番外編「消えたフリーター持馬ツヨシの行方を追う」です。
トロさんにお世話になっていた持馬ツヨシというライターが、行方不明になってしまい、彼の居所を探すというものです。
持馬は稼ぎ以上にお金を使ってしまう、見栄っ張りのとんでもない奴です。
サラ金からの借金まみれで、今までは親からお金をもぎ取っていたのですが、親からお金を取れなくなったので、どうしようもなくなり、蒸発したのです。
こんな人って本当にいるんですねぇ。
簡単に読めて、笑えるルポです。お暇な時にどうぞ♪

ジェニファ・チョールデンコウ 『アル・カポネによろしく』2008/03/08

サンフランシスコ湾のど真ん中にあるアルカトラズ島って知っていますか?
知っている人は、サンフランシスコに行ったことのある人か、アメリカの犯罪史に詳しい人なのでしょうね。
この島に、初めは灯台、そしてアメリカ軍の要塞があったのですが、その後脱出不可能の監獄が作られました。
そう、題名にあるように有名なギャングのアル・カポネが入っていたことで知られています。
現在は観光名所になっているそうです。
フィッシャーマンズ・ワーフに行かれることがあったら、定期観光船に乗って行ってみてください。

この物語は、父親が刑務所の電気技師になったので、島に引越をするはめになったムースのお話です。
ムースは野球好きの男の子です。
お姉さんが一人いて、彼女は今でいう自閉症。
何故かボタンと数、レモンケーキが大好きで、気に入らないことがあると、かなきり声をあげ、暴れまくります。
このお姉さんのために、家族は、特にムースは我慢を強いられています。
刑務所に引っ越したのも、お姉さんのナタリーのためだったのです。
ナタリーを普通の子のようにするために施設に入れるといいと聞いた母親と父親が、そのお金のために島にある刑務所に引っ越すことにしたのです。
ナタリーは16歳になるのに、お母さんは頑なに10歳だと言い張ります。
16歳になってしまうと、施設に入れないと思い込んでいるのです。
島には看守やコック、医師、電気技師などとその家族が住んでいます。
刑務所長の娘のハイパーは美人ですが、いけすかない女の子です。
無理矢理ムースをある企みに引き込みます。
その企みとは、学校の友達に、アル・カポネが洗濯をすると言って、お金を取るということです。
実際、島にいる職員の洗濯を囚人達がやっていたそうです。
結局、誰が洗濯したかわからない洗濯物を渡され、怒った友達に告げ口され、こっぴどく怒られることになります。

そんなこんなで、徐々に島に慣れていくムースですが、家族の心配の種・ナタリーはなかなか施設に引き受けてもらうことができません。
ナタリーばかりに母親の目が行っていることで、傷ついているムースですが、ナタリーを思う気持ちにけなげさを感じます。
さて、家族の悲願、ナタリーを施設に入れるためにムースはあることをします。
アル・カポネがここで関係してきます。

自閉症の子どもを持つ家族の悲哀が、よくわかる本です。
作者のジェニファー・チョールデンコウさんのお姉さんが実際に自閉症だったそうです。

上橋菜穂子 『蒼路の旅人』2008/03/09

「守り人」シリーズを前に紹介しましたが、『旅人』はその外伝です。
一番最初に書かれた『精霊の守り人』で、用心棒バルサに救われた新ヨゴ王国の皇太子チャグムがバルサと関係しないで活躍する話です。
主に、皇太子としての苦悩が書かれています。
くれぐれも「守り人」と関係ないからと言って読まないことのないようにして下さい。後の話に関係してきますから。
『蒼路の旅人』は、最終シリーズの『天と地の守り人』に繋がる話です。

チャグムは皇太子として認められてはいても、父の帝からは疎んじられており、いつ暗殺されるのかわからない状況です。
その頃、タルシュ帝国が周りの国を征服し枝国(属国)にしていました。
その脅威が新ヨゴ王国にまで迫っています。
父の帝は、自分は神の子、国を導く力を神から授けら、新ヨゴ王国は天ノ神にまもられていると思い込んでいます。
そのため、新ヨゴ王国は神聖な国なのだから、周りの国と同盟を結んでまでして、タルシュ帝国と戦うなどというようなことは考えられないのです。
鎖国をして、生き残ろうと考えています。
チャグムはタルシュ帝国が攻めてきた時のことが想像できます。
父は国と共に滅びるなら本望なのでしょうが、それは民のことを考えていないのです。
民が苦しむのです。
心優しいチャグムはそれが許せないのです。
あくまでも平和な解決法を探っていくのです。

そんな時に、サンガル王国から援軍を送ってほしいという親書が来ます。
罠であるとチャグムは感じるのですが、上手く説明できません。
帝はサンガルへ戦闘帆船を二十隻、援軍として送り、チャグムの祖父であり、海軍大提督であるトーサにその艦隊をみちびくように命じました。
サンガル王家のサルーナ姫からチャグムに文書が来ます。
それはせざるえない裏切りをわびる内容でした。
帝に見せるのですが、それが裏目になり、チャグムはトーサを助けるようにと命じられるのです。
ここからチャグムの長い旅が始まります。

「守り人」シリーズは「サグ」という人がくらす世界と、「ナユダ」というサグとふれあって存在するもうひとつの世界の間で起こる話だったのですが、この『蒼路の旅人』から、チャグムが皇太子としてどう国を守っていくのかという話に変わっていきます。
私はよりファンタジーっぽい前の話の方が好きですが、チャグムがどう活躍するのかにも興味があります。

『天と地の守り人』は三部作で、いよいよシリーズの最終巻です。
バルサがチャグムを助けに行きます。
さて、どういう終わり方をするのでしょうか?

上橋菜穂子 『天と地の守り人』2008/03/10

この本は昨日紹介した外伝の『蒼路の旅人』を読んでから、読んでください。
外伝だから、「守り人」とは関係ないと思わないでください。
話は『蒼路の旅人』と繋がっています。

タルシュ王国からの帰路、チャグムは新ヨゴ王国が戦乱に巻き込まれない道はないかどうか考え続けていました。
枝国になった国の民は重税に苦しみ、徴兵され、苦しんでいました。
そんなめに自分の国の民を遭わせたくなかったのです。
そして考えついたのが、タルシュ王国の見張りの目を欺き、ロタ王国に行くことです。
そのために父の帝の命じた暗殺が成功したと思わせることにします。
計画は上手く行き、チャグムは海に落ち死んだと思われ、国では葬式まで行われます。
バルサはチャグムの死の噂を聞き、本当にチャグムが死んだのかどうかを調べ始めます。
しばらくするとチャグムが生きていることがわかり、チャグムの身を案じ、探しに行きます。
バルサと会ったチャグムは彼女の助けをかり、ロタ王国までの旅を続けます。
無事ロタ王に会えたのですが、ロタ王はただの皇太子でしかないチャグムの同盟の申し出に応じることができない、ただし、カンバル王を説得させることができたなら、同盟を結んでもいいと言います。
チャグムはロタ王国からカンバル王国へと行かなければならなくなります。
チャグムが旅を続けている時に、新ヨゴ王国は鎖国をして国を守ろうとしますが、タルシュ王国への回答の期限は迫っています。
戦いが始まろうとしています。

一方異界「ナユラ」に春が来ました。
その影響で、人の住む世界「ナグ」の気温が上がり、山の万年雪が溶け始め、川の水位が上がってきました。
このままでは大洪水が起こります。
各国の呪術師たちが集まり、村人たちに注意を促すことになりました。

チャグムは国を救えるのでしょうか?
国を思うチャグムの苦悩と、国と国の駆け引き、陰謀など息をのむ展開です。
絶対におもしろいです。是非、読んでください。

「潜水服は蝶の夢を見る」を観る2008/03/12

久しぶりに夫と有楽町でデートをしてきました。
お互いに早く職場を出られたので、新しくできたビッグカメラの8階にあるシネカノン有楽町1丁目で映画を観たのです。
彼はあまり映画を観ない人なので、フランス映画はどうかなとは思いましたが、無理矢理観せることにしました。
観たのは『潜水服は蝶の夢を見る』。
雑誌の書評を見て、本を探しているのですが、たまたま書評にこの本が紹介されていて、読んでみたいなと思っていたのです。
本の前に映画になってしまいました。
普段行く映画館は都心から少し離れた所です。
そのため意外と空いていて、椅子もいいので気に入っていたのですが、今回の映画館は後から作ったものなので、座り心地ちがあまりよくありませんでした。
夫は『アイ・アム・レジェンド』でいい椅子に座っていたのが記憶にあるらしく、「椅子が悪くて尻が痛くなった」と文句を言っていました。
贅沢な奴だ。
さて、映画ですが…。

ジャン=ドミニク・ボビーはファッション雑誌「Elle」の編集長で、きままに生きていました。
妻(籍は入れてない)と三人の子がいるのに、家族と別居して愛人とくらしています。
子ども達に会いに行った日、新車に息子を乗せ、ドライブをしている最中に気分が悪くなります。
脳梗塞を起こしていたのです。
気がつくと、病院にいて、耳は聞こえ、目は見えるのですが、体が動かず、しゃべれなくなっていました。
locked in syndrome(閉じ込め症候群)になってしまったのです。
絶望する彼ですが、彼の係になった言語療法士アンリエットはまばたきを使い、人とコミュニケーションを取る方法を考えます。
そうして書かれたのが、この本なのです。

何回も潜水服(古い方のです)を着て、海の中にいる姿が映され、彼の不自由な姿を暗示しています。
そのような姿になっても、想像力と記憶力は衰えません。
きれいな女性の胸を見たり、変な夢想にふけったりと、性欲も衰えないのです。

たんたんと描かれているので、アメリカ映画に慣れた人には盛り上がりにかけるように思えるでしょうが。
夫は内容を知らずに行ったので、ジャンの状況についていくのが大変だったようです。
私としては、ジャンが勝手気ままに生きてきた様子がかいま見られるので、あまりかわいそうには思えませんでした。自業自得?

一番最初にジャンに会いに来て、それ以来子どもを連れて会いに来る妻には感心しました。
子どもにこんな姿になった父親の姿を見せたくないなどと思う母親もいそうですから。
愛人が電話をかけてきて、そんな姿になったあなたを見たくはない。
でもいつもあなたのことを思っていると言った時に、「毎日、きみのことを思っている」とまばたきで答え、それを妻に取り次がせた時は、妻に対してそれはないでしょうと思いました。
「Elle」の編集長のわりに、服装がダサイと思いましたが、それもご愛敬ですかね。

重い内容の割に、そんなに暗くならない映画です。
あ、そうそう、映画で使われている「La Mer」は私の好きなシャンソンです。

レスリー メイヤー 『トウシューズはピンクだけ』2008/03/13

『メールオーダーはできません』(2007年10月24日)で紹介した主婦探偵ルーシーのシリーズ第二弾です。
今回はアメリカ社会の暗部である、DV(Domestic Violence)が詳しく描かれています。
ニュースなどを見ていると、日本でも結構多くなっているように感じます。新聞によるとDV被害が過去最多の二万件で被害者の三割が三十代だそうです。怖い世の中になりましたね。
DV被害者の特に夫の職業が社会的地位の高い、医師とか弁護士の場合は、体面を繕うのが上手い人が多いのと、まさかそんなことをするはずがないという私たちの思いこみのために、妻の訴えを信じないということが起こります。
この本に出てくるのですが、家族がその訴えを信じないときには、救いがないですね。

ルーシーはなんと妊娠六ヶ月。
そう、そのために前に勤めていた通信販売会社は辞めた。
暇をもてあましているかといえば、さにあらず。
いろいろと主婦にはやることがある。
そのひとつが、娘達のバレエ発表会。
なにしろ初めてなので、とても心配。
子供達の世話ばかりしていると、夫ビルの機嫌がよくない。夕食もこの頃手抜きばかりだし…。
ところが、バレエ教室の教師タティアーナの恩師、キャロラインがいなくなる。
新聞やテレビで探したのだが、なんの手がかりもない。

そんなこんなで忙しくしているルーシーの所に、フラニーがビデオカメラを借りに来る。
彼女が勤めている金物店のお金がなくなることが多く、犯人を映すためにビデオカメラを借りたいと言うのだ。
娘のバレエ発表会のリハーサルまでに返してくれることを条件に、しぶしぶ貸したが、貸した次の日、ビデオカメラを金物屋の店主、モリル・スラックに取られたと言ってくる。
冗談じゃない。娘の姿を写せないじゃない。
怒ったルーシーはモリルに会いに行く。
そこでルーシーは、貸したビデオカメラで殴り殺された店主を見つけ、フラニーが容疑者として逮捕されてしまう。
ルーシーの本領発揮。

前回よりおもしろい内容で、お勧めです。お暇な時にどうぞ。

「ファンダンゴ」を観る2008/03/15

アマゾンで売っていたので、買ったDVDが『ファンダンゴ』です。
この映画、どこかの映画評に載っていて、10年以上も前にビデオで観ていたのですが、何度観ても古さを感じさせません。
大学を卒業して、新しい社会に旅立とうとしている人にお勧めの映画です。

「ファンダンゴ」とは、スペイン語で①スペイン、中南米のダンス ②ファンダンゴ調の曲 ③騒々しいパーティー ④愚行、ばかな(子供じみた)まねという意味です。

時はベトナム戦争末期。
大学の卒業式記念パーティーの真っ直中に、ワグナーがやってきて、召集令状が来たので、結婚は取り消しだと言い出します。
召集令状はガードナーの所にも来ていて、二人とも学業不振のため、兵役を免除されなくなったのです。
ガードナーはルームメート5人組「グルーバーズ」で最後の旅に出掛けようと言い出します。
実はガードナーはワグナーの婚約者のデビーと昔付き合っていて、今も未練タラタラ。密かに、ワグナーと結婚しないことを喜ぶのですが…。

さて、馬鹿騒ぎの始まりです。
フィルは成績優秀で軍に中尉として入隊予定。
両親がパーティーをやっている時に現れ、ワーグナーと間違えられ、きたない男達の尻を見せつけられて、目を白黒していました。
笑ってしまいました。
この両親にこの子あり。フィルは真面目すぎて、ガードナー達のいいカモになっています。
ドーマンは髭もじゃの太った愛らしい笑い顔の男性で、私のお気に入りです。
真面目かと思えばさにあらん。彼のすっとぼけた行動がいいんです♪
 卒業後牧師になるという変わり種です。
もう一人、レスターがいますが、彼は会計学の首席で、会計士になる予定なのですが、結婚式まで酔っぱらってずーと寝ています。
なんかちぐはぐな、共通点なんか何もありませんという5人組が、フィルのキャデラックに乗り、メキシコ国境を目指します。
実はそこには「DOM」が埋まっているのです。

旅が調子よいのも初めだけ。
ガス欠になって車を押すハメになります。
ちょうど汽車が来たので、汽車に車を運んでもらおうとしますが、悲惨な結果に。
車を壊され、頭にきたフィルとガードナーが喧嘩を始めます。
それでどうなったかというと、フィルは弱虫ではないことを証明するために、スカイダイビングをやることになってしまいます。
かわいそうに。
クレイジーなスカイダイビング・スクールの先生、トルーマン・スパークス(マーヴィン・J・マクインタイア)、最高です。
パラシュートじゃなく、洗濯物を持っていったなんてことが後でわかって、フィルはどうなるのか…。

もちろん最後はしんみりと。
町の人を騙し、ワグナーとデビーの結婚式を行ってしまう所なんて、ガードナーは詐欺師になるといいかも。
もちろんこの結婚式の所でも、クレイジーなトルーマンさんが活躍しますよ。ホント、彼っていいわぁ。

「DOM」の場面と別れの場面、この二つで馬鹿騒ぎが許される期間(モラトリアム)の終わりが描かれています。
この旅が終わると、それぞれが社会に出て、直面しなければならないことがあるのです。

ちょっぴり、昔が懐かしくなりました。大学時代の友はいずこ?

「チャーリーとチョコレート工場」を観る2008/03/16

いつも行く映画館で観たい映画がやっていないので、アマゾンで買っておいたビデオを観ました。

ジョニーはやっぱり変でした。
 監督が、嫌~な予感がしたのですが、あの『スウィーニー・トッド』のティム・パートンですよ。
私と彼、相性悪いのよね。
奥さんのヘレナまで出てます。(映画では普通の奥さんでした)
児童書『チョコレート工場の秘密』をある程度忠実に描いているそうです。
チョコレート工場のオーナー、ウィリー・ウオンカは変な服装(シルクハット、杖、燕尾服、手袋)をした、エキセントリックな人です。
父親は歯科医で、息子に矯正器具を付け、お菓子は虫歯の素だからと絶対に食べさせません。
ハローウィンでもらったお菓子を、息子の目の前で、暖炉に投げ捨てるということまでします。
たったひとつ焼け残っていたお菓子を食べてから、ウィリーはお菓子に魅了されます。
息子がお菓子作りをしたいことを知った父親は、息子を勘当してしまいます。
そのためにウィリーは「parent」と言えません。
彼はチョコレート工場を作り、成功しますが、企業スパイにレシピを盗まれ、猜疑心に捕らわれ、人嫌いになり、チョコレート工場を封鎖してしまいます。

何年かして、またチョコレート工場が再開されます。
しかし、町の人は誰も雇われませんでした。
一体誰が働いているのか?

そんなある日、ウォンカバーを買った人の中から5人だけ、付き添い一人と一緒にチョコレート工場見学に招待するという告知があります。

チャーリーは、貧しい家の子供で、とっても家族思いの優しい少年です。
両親と4人の祖父母と一緒に、町はずれの崩れ落ちそうなボロ家でくらしています。
夕食はいつもキャベツの入ったスープ。
父親は歯磨き粉工場で働いていたのですが、合理化のために失業。
チョコレートなんて、誕生日にしか買ってもらえません。
でも、チョコレート工場には行きたい。
次々と招待される子供が決まっていきます。
最初は毎日チョコレートを食べているデブの肉屋の息子。
二番目はスポーツ好きで、勝利に妙にこだわり、ガムをかみ続ける少女。性格がメチャ悪い。
三番目はナッツ工場の社長令嬢で、なんでもかんでも欲しがり、親が与え続けるとんでもない少女。
招待チケットもチョコレートの買い占めをして手に入れます。
四番目はいつもテレビゲームをしている、ハイテクオタクの少年。
ショーティング・ゲームが好きらしい、攻撃的な奴です。
さて、五番目は…。
もちろんチャーリーです。それじゃなきゃ映画になりませんものね、笑。

チャーリーはおじいちゃんと一緒に工場見学に行きます。
5人のうち1人にはすばらしい副賞があるらしいので、みんな狙っています。
工場で働いていたのは、なんとルンパランドに住む小柄な人々、ウンパ・ルンパ。
これが笑っちゃいます。みんな同じ顔をしているのです。
彼らはしゃべらないのに、歌とダンスはするのです。
子供達が一人ずつ、馬鹿なことをするのですが、その後、ウンパ・ルンパが登場して、即興で歌を歌い、踊りを踊ります。
これが馬鹿らしくて笑っちゃいます。
お決まりのように登場すると、お、今度はどんな歌詞で、どんな踊りをするのかな…と。

話は単純。副賞はもちろんチャーリーに。
これもお決まり。いい子にしていれば、ご褒美があるよ~。
この映画、お笑い系の好きな人には向いてるかも。
私はティム・パートン映画はこれからも避けますわ。