江國香織 『落下する夕方』2008/05/10

ココで告白します。
江國さんの小説のことでいろいろと書いてきましたが、実は・・・好きです。
なんなんでしょうね。独特の空気が、癖になるんですかね。
なんか普通の日常生活を、淡々と書いているだけなんですよ。特にたいした事件が起こるわけでもないし、ヒロインはどちらかと言えば、あまりお友達のいなさそうな女の人だし、男は線が細く、ハンサムらしいけれど、浮気性。
何がいいんでしょうねぇ。

『落下する夕方』も、くだらない話ですよ。
八年間同棲していた男、健吾が20代の若い女の子、華子が好きになったと言って、部屋を出て行きます。
梨果は健吾のことを思いきることができず、二人で暮らした部屋を出ていくことができません。
彼の残り香をかぐように、二人で暮らした部屋で、前と同じように暮らしていきます。
彼が出て行かなかったように。
そこへ、なんと健吾を取った華子が、部屋代払えないんでしょう、私が一緒に暮らしてあげるわ、何て感じで現れます。
そして始まる、変な女二人暮らし。
健吾は嬉しそうに、女二人の部屋にやって来ます。
もちろん華子に会うのが目的ですよ。華子に冷たくされているので、梨果を利用しているんです。

華子は生きているという実感の感じられない、空気のような不思議な子です。
毎日グータラとしていて、何をしているかと言えば、ラジオを聞いていたり(今時ラジオを聞く子いるかよ!)、一番多いのは寝ていることですねぇ。
急に家出をして、しばらく帰ってこなかったりするし、どうも男が健吾の他にもいるようだし。
一番好きなのは、弟などと言ってるんですよ。
わけのわからない華子です。
梨果はそんな華子のことが結構好きだったりして・・・。
二人の生活はうまく行っていました。
でも、そんな生活も長くは続きませんでした。華子が自殺をしてしまうのです。
華子が死んで、やっと健吾とのことを終わらせることのできた梨果です。

女は時が経つと、卒業できるけれど、男は・・・?
水槽の中の熱帯魚みたいな、そんな日常に迷い込んだような話です。