矢口敦子 『家族の行方』2008/05/19

矢口敦子さんの本は、近くの書店に行くと積んであったので、試しに読んでみました。
若い作者かと思ったら、さにあらず。
1953年生まれで、北海道函館出身の方でした。
心臓病で小学五年生から就学猶予になったそうで、病気が彼女の作品に影響を与えているようだと、後書きに書いてありました。
一見ミステリーのようですが、読んでいくと、深いものがあります。

推理作家の有村靖子は、知り合いの編集者から、黒部美保子と会って欲しいといわれます。
靖子は持ち前の推理力を駆使したために、編集者に霊能者だと勘違いされていたのです。
美保子には、いなくなった息子、高瀬明を捜して欲しいと頼まれます。
断ろうとしたのですが、たまたま側にいた靖子の息子の勇起が余計な口出しをしたために、引き受けざるえなくなりました。
息子の意図がわからないまま、靖子は勇起と共に明の行方を捜し始めます。
始めは勇起の行方を捜すだけだったのですが、はからずしも自分たち親子の関係を見直すよい機会になっていきます。

これ以上書くと、ネタバレになるので書きませんが、よくある二番煎じかな、と思って読んでいました。
失踪者を探すミステリーってよくありますよね。
例えば、佐藤正午の『ジャンプ』とか。
ところが、違うんですよ。一筋縄でいかないところが、矢口さんのすごいところです。
本当のところはどうなの?と思えるところもありましたが、次の作品も読みたくなりました。