劇団四季 「南十字星」を観る2008/07/19

木曜日の夜にミュージカル『南十字星』を観ました。
ちょうど上演200回の日でした。
前の作品より、より個人的な意味合いの強い作品です。
歴史に翻弄される主人公の悲しみが涙を誘うのですが、今回は戦争という悲劇に巻き込まれてはいても、その生き方に感情移入ができませんでした。

<キャスト>
保科勲    阿久津陽一郎
リナ・ニングラット   樋口麻美

保科勲は京大で法科を学んでいました。
彼はリナというインドネシアから兄と共に留学していた女性と、互いに思いを寄せていました。
太平洋戦争の最中に、インドネシアでオランダ軍による民族独立運動の粛清が激化したため、活動家の父を助けるために、リナ兄弟はインドネシアに帰っていきます。
その後、保科は姉の夫の原田とともに南方へと出征していくことになります。
オランダ軍に囚われていたリナの兄、ニングラットを救出時に傷をおい、傷の手当てをするためにニングラット邸に運ばれ、リナと再会します。

日本軍はオランダからインドネシアを奪い、穏和な軍政を布きますが、戦況が悪化するにしたがい、現地住民に食料供出や労役を強制するようになり、支配者がオランダから日本に替わっただけになっていきます。

一方、捕虜収容所では、食料不足や虐待が行われており、オランダ人捕虜たちの怒りがつのっていました。
保科は捕虜達に誠心誠意を尽くすのですが、些細な誤解が誤解を生み、捕虜達に恨みをかってしまいます。

やがて日本が敗戦。
インドネシア独立義勇軍の志士が保科達の所に来て、オランダ軍との戦いに勝つためには武器が必要なので、日本軍の武器を譲ってくれと言ってきます。
義兄原田は、終戦協定を破り、義勇軍に武器を渡すようにと言います。
原田はインドネシア独立のために、一肌脱ぎたいと言い出し、連合軍から呼び出しが来たときには保科が代わりに出頭してくれと言い置き、行ってしまいます。
保科はBC級戦犯として裁かれることになります。
罪は捕虜虐待と終戦協定違反でした。

処刑当日、監獄に忍び込んだリナと保科は会い、歴史の流れに身を捧げることが自分の運命だと告げ、未来の若者達に日本の明日を託し、十三階段を昇っていきます。
BC級戦犯として処刑されたのは934名だとのことです。

インドネシアの舞踏やガムランが随所に取り入れられています。
今までよりも踊りの場面が長いので、四季の方がS席でなくてもいいと言っていた訳がわかりました。
二階席から舞台を見ると、舞踏がよく見えていいようです。

納得のいかないのが、保科の義兄原田の行動です。
義勇軍に参加すると言った時など、そんなにインドネシア独立に思い入れがあったのかと思いました。
私はセリフをよく聞いていなかったのかと心配になったのですが、どう思い返しても、原田がインドネシア独立に思い入れがあったような場面がないように思うのですが。
自分が生き残るための方便だったのでしょうか?
すごいと思ったのが、空襲の様子がリアルだったことです。

戦争を知らない世代に是非とも見てもらいたい作品です。
昭和の歴史三部作は三作すべてを観ることをお勧めします。