海堂尊 『イノセント・ゲリラの祝祭』2010/07/04

海堂尊さんって日本の医療の現状に対し、色々と言いたいことのある人なのです。もちろん、彼が医師だからってこともありますが。エンターテイメント的なものを求めると『チーム・バチスタ』に行くのでしょうが、今回はちょっと行き過ぎたようです。
はっきり言うと、議論が高尚過ぎて私の頭にはついていけませんでした。


『チーム・バチスタ』から何回も登場しているのが、Aiという「死亡時画像診断」です。
Aiに何でこだわるのかと思って、彼のことを調べてみると、千葉大学医学部出身で外科医から病理専門医になり、ブログでAiに関することを色々書き、名誉毀損で訴えら、現在控訴中のようです。
だからなんですね。彼の心情(信条?)がこの本につまっているんですね。

厚労省主催の会議が主たる内容です。厚労省の欺瞞溢れる様子など克明に描かれていて、こんなもんなんだろうなぁと思えてしまうところが、ちょっと悲しい現実です。

それにしても、日本の異常死体(伝染病、中毒または火災により死亡した疑いのある死体、その他死因が明らかではない死体)の司法解剖率が2%ですって。意外と少ないのです。司法解剖もどこでも行なわれるのではなく、大都市しかできないというのを聞いたような。

監察医制度を調べてみると、1947年に人口上位都市の東京23区、大阪市、京都市、名古屋市、横浜市、神戸市、福岡市に導入されました。現在、京都市と福岡市では廃止されたので、残る5都市のうち正常に機能しているのが東京、大阪、神戸のみと言われているとか…。
ようするに、東京都23区内で異常死体が見つかると解剖しますが、どこかのちっちゃな町で異常死体が見つかると、表面に暴行などの跡がなく、事件性がないと判断されると「心不全」などと診断され、解剖されないようです。
テレビドラマで監察医なんか見ていると、どこにでも監察医がいるのだろうと思ってしまいますが、違うんですねぇ。

さて、どうしたらいいのか。
そう思った人は『イノセント・ゲリラの祝祭』をお読みください。海堂尊さんの熱い思いが感じられます。
でも、ミステリーと思って読んではいけませんよ。