ピーター・トレメイン 『修道女フィデルマの洞察』2010/07/16



七世紀アイルランド王国の王女にして、法廷弁護士(ドーリー)の資格を持つ修道女、フィデルマの活躍する短編集です。
フィデルマは「長身で均整のとれた姿、被り物からこぼれ出ている一房の赤い髪、緑色の瞳がきらきらと輝く、若く魅力的な容貌」です。
この容貌のため、最初は軽んじられるのですが、彼女が一旦自分の身分をあかすと、他の人々は恐れをなしてしまいます。
水戸黄門の印籠みたいなもんでしょう。
いえいえ名奉行大岡越前みたいなもんですか。
若いとはいえ、事件を解く頭脳明晰さと、どんなことにも左右されない冷静な態度といい、すばらしいです。
彼女のような美貌の持ち主の修道女が旅をしていたら、危険な目に会うんではと思いますが、彼女は武道のようなものもできるのです。
短編ですから読んでみてよかったら、他のフィデルマ作品を読んでみて下さい。短編とは違ったよさがあります。
この短編集では最後の「晩祷の毒人参」が私のお気に入りです。
事件が解決し、最後に修道院長に

「院長様、私には、あなた罪に赦しを与えてさしあげることはできません。どなたか、同情的な聴聞司祭様に告解を聴いておもらいになるよう、お奨めいたします」

なんて言うなんて、フィデルマ、格好よすぎです。