コーディ・マクファディン 『暗闇』2010/07/19

スモーキー・パレット、FBIロサンゼルス支局国立暴力犯罪分析センター主任。追っていた犯罪者に夫と子供を殺され、顔と身体にその時の傷痕が残っています。同じような悲劇に見舞われた親友の娘ボニーを引き取り、二人で助けあい傷を癒しあい、なんとか暮らしています。


ある日、スモーキーはFBI長官に呼び出されます。ある人物に呼んで欲しいと頼まれたからと。
男性から女性に性転換した人物が飛行機の中で殺害されたのです。彼女の名はリサ(デクスター)・リード。次期大統領候補指名争いの本命と見なされているリード下院議員の娘(息子)でした。スモーキーはリサの母親ロザリオから、同じように子どもを殺された母親として事件にかかわるようにと指名されたのです。
リサの右脇腹にはシルバーの十字架が挿入されていました。
同様の事件を探していくと、ローズマリーという元売春婦殺しが浮かび上がってきました。彼女も死後、十字架を挿入されていたのです。
十字架には番号がふってありました。ローズマリーは142、リサは143。犯人はひそかに人を百人以上も殺していたのでしょうか?

そうこうするうちに、ある動画サイト上にリサのなくなった日記を読み上げる男の動画が投稿されていたのです。他にもローズマリーを含む、無理やり秘密を告白させられている女性達の数百本の動画もありました。
恐ろしいことに、次は子どもを殺すと男は言うのです。彼は自分のことを”伝道者(プリーチャー)”と名乗っていました。
スモーキーたちは間に合うのでしょうか。

スモーキー以外の女性がすごいです。
結婚することになったスモーキーの部下のキャリーと、キャリーの結婚式の手配をするボディガードのカービー。この2人の女性がいたら、男性は確実に逃げ出しますよ。
養女のボニーが将来スモーキーのような仕事につきたいと言い出したり、ボーイフレンドのトミーとの関係も複雑になっていきます。
犯人があっけなくわかってしまうところが読んでいて残念なところです。

この本で重要な鍵になるのが罪と告解です。告解のことがどうもよくわかりません。キリスト教では根本的に人間は悪である。罪深いものであるという考えなのでしょうから、そのために告解が必要なのかもしれません。もっと詳しく知るようになると、深い意味がわかるのでしょうが・・・。

スモーキーは神に対し懐疑的です。それでもイエーツ神父にどうすれば自分を許して幸せになれるのかを聞きます。

「つぐなうんですよ。自分のしたことを胸に刻みつけ、正当化しない。自分を変えるんです。あなたは友人の娘を引きとりました。心をつくして育てなさい。よき母親になるんです。人生を愛することを教えてあげなさい。あなたには、大切に思っている人がいるんですか?ならば、彼を愛しなさい。(中略)どうしても自分を許す気になれないのなら、そろそろだれかの許しをうけいれるべきでしょう。私はあなたに贖罪行為を課しました。罪をあがなうには、一生かかるかもしれません。わたしはここで、父と子と聖霊の御名において、あなたに罪の許しをあたえます」

まあ、いろいろとわからないところや、文句をいいたいこととかありますが、ミステリとは関係なくなるので、ここら辺で止めときます。
でも、海外のミステリにはキリスト教的なものが多く含まれているので、そういうことを知って読むのと、知らないで読むのとでは、理解の面で違いがあるように思います。
日本では”伝道師”なんて、ただの頭の変なおじさんになっちゃいますものね。