村上春樹 『辺境・近境』2010/10/06

村上春樹が日本の、そしてアメリカ大陸の旅に行きます。
 
なんか口調が椎名誠化していると思えるところがあり、たまに誰の旅行記を読んでるのかわからなくなることがありました。(私だけ?)


表紙の写真は文庫版では白黒で、戦車の上にしゃがんでいるものです。(↓)


写真を撮った場所は、モンゴル。ノモンハン事件って聞いたことがありませんか?そのノモンハンってモンゴルだったのです。私は中国だとばかり思っていました。
 
ノモンハン村の近くにある集落スンブルはノモンハン戦争でいちばんの激戦地のひとつだったそうで、その近くの「ノロ高地」と思われるところに、この戦車が置き去りにされています。どうもソ連軍もものらしいです。空の青さがモンゴルらしいですね。
 
モンゴルもいいのですが、この本の中でなんといっても面白かったのが、「讃岐・超ディープうどん紀行」と「メキシコ大旅行」です。
 
秋葉原の駅中のフードコートにうどん屋があるのですが、そこも讃岐うどんだったと思います。この前食べました。讃岐と言えばうどん。一度は本場で食べたいとは思いながらも、実際に行くなんて、ちょっと考えられません。
 
村上さんは安西さんと「ハイファッション」の編集者と一緒に、ただうどんを食べるためだけに、香川県に行ってしまうのです。
 
まあ、取材なので、物好きも許せます。
 
結論。うどんは香川。一度は食べたい「中村うどん」。うどんも奥が深~い。
 
 
メキシコには、私、全く興味がありません。
ずーと続く砂漠と、たまに植わっているシャボテン。アメリカに不法侵入する人が多いんでしょ、ということしか知りません。
 
もし旅行しても、「あなたはどうしてまたメキシコに来たんですか?」と聞かれたら、「別に・・」としか答えようがないものね。
 
メキシコに何かありましたっけ?
 
こんなメキシコを村上さんは旅するんです。
 
なぜか無くなる物。ただうるさいだけのメキシコ歌謡曲。暑さ。「ロシアン・ルーレット的な嘔吐と下痢(最悪!)」。ほど遠い近代化・・・。
読んでいるだけで十分メキシコを堪能しました。うっぷ。

最後の「神戸まで歩く」で、村上さんはこうつぶやきます。

「僕らは今、何故このように深く、そして絶え間なく、暴力の影に晒されているのだろう?」

阪神大震災、地下鉄サリン事件など、今は記憶の彼方に行ってしまいそうな事件ですが、西宮から神戸まで歩いたということが、後の村上さんの『アンダーグラウンド』や『約束された土地で』に続いていったのですね。
 
久々におもしろい旅行記でした。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://coco.asablo.jp/blog/2010/10/06/5385984/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。