S.J.ローザン 『シャンハイ・ムーン』2011/10/05



好きなシリーズの一つです。

リディアがカリフォルニアから戻って来たところから話は始まります。
久しぶりに家で夕食を食べようという時に電話がはいります。
リディアに探偵のなんたるかを教えてくれたジュエル・ピラースキーからでした。
スイスの弁護士から、ユダヤ人難民の持っていた宝石を持ち逃げした上海市文化局の中間管理職を探してほしいとの依頼が入ったので、リディアに手伝って欲しいというのです。

歴史で知らないことがたくさんあります。
そのひとつがユダヤ人難民のことです。日本占領下の上海にもユダヤ人難民がいたということを知りませんでした。
ローザンは日本のことを悪者として書いてはいませんが、日本のことが出てくるたびに胸が痛みます。

「1943年の前半、日本軍はユダヤ人難民に対し、虹口に移ることを命じた」
「日本はもともと中国人に好感情を持っていなかったうえに、ドイツと同盟関係を結んだことによってさらに冷酷になっていた。しかし、ユダヤ人には敬意を抱いていたのです。ゲットーをこしらえはしたが、ドイツにとって当然の行為、つまりユダヤ人の抹殺は拒否した。身分証明書や門限によってゲットーを厳格に管理したとはいえ、共同租界に対するそれに比べれば温情があった」

アジア人にたいしては残虐な行為をしたというのに、ユダヤ人に対しては温情があったとはどういうことなのでしょうか?
西洋人に対する劣等感の現れでしょうか?

題名の「シャンハイ・ムーン」とは伝説の宝石です。
ユダヤ人難民のロザリー・ギルダーと中国人青年のチェン・カイロンが結婚した時に両家に伝わる宝石を使い作ったペンダントです。
いつしかこのシャンハイ・ムーンは苦難の時代に生まれたロマンティックな作り話として受け入れられるようになっていました。

シャンハイ・ムーンを巡る60年前の出来事をリディアが掘り起こし、悲しい家族の歴史が暴かれていきます。

このシリーズの中で私が一番興味を持って読んだ本です。