とりのなん子 『とりぱん1&2』2012/03/01



和み系漫画です。
北東北にお住いのとりのなん子さんが、日常を描いた4コマ漫画です。
一応ベッドタウンの町と言っているのですが、思った以上に自然に恵まれています。
とりのさんは庭に餌台を作り、パンの皮や牛肉の脂などを餌にして、そこにやってくる鳥を観察しています。
や~、こんなに鳥っておもしろいものだとは思いませんでした。
それぞれ性格ってもんがあるんですねぇ。
一軒家に住めたら庭に餌台を作ってみたいですが、これからもマンション住まいですから無理です。
彼女のような暮らしってあこがれます。

鳥に関してはあまり思い出がありません。
一度インコを飼ってみたことがありますが、すぐに死んでしまいました。庭に埋めようと思って堀ったのですが、雪が積もっていたのでいい加減に埋めたら、春になって雪が解け、鳥の死体が現れてしまい、祖母に怒られたことがあります。
鳥は飼うより、見る方がよさそうですね。

とりぱん』のモーニング公式サイトがありました。
もう12巻も出ている人気物なんですね。

畠中恵 『ちょちょら』2012/03/02



図書館に畠中さんの本がたくさんあったので借りてきました。
今度の江戸物は武士の話です。

自害して亡くなった兄の代わりに多々良木藩の江戸留守居役になった間野新之助は仕事がわからず右往左往。
同じ留守居役組の先輩たちにいいようにいじられています。面倒をみてもらっているのか、仕事をしこまれているのか?

留守居役ってどういう仕事なのか知りませんでした。実は2種類あるそうです。
まず、旗本で任じられる職では最高の職役職の留守居役。そして新之助のやっている中程度の諸藩の藩士がなる留守居役です。
新之助たちの主な仕事は「藩主が江戸藩邸にいない場合に藩邸の守護にあたったほか、藩主が江戸在府中であっても御城使として江戸城中蘇鉄の間に詰め幕閣の動静把握、幕府から示される様々な法令の入手や解釈、幕府に提出する上書の作成」です。留守居役たちは「前例に従って落ち度のない事が第一と考えられており、それに資する先例を捜査するために」組合を作り、適時情報交換をおこなっていました。(ウィキペディアより)

留守居役の他の重要な仕事として、この本に書かれている、接待をしわいろを渡し普請が当たらないようにと根回しをすることです。接待にとんでもない出費がかかりますが、その出費を惜しむと普請が回ってくるのです。
新之助が驚いたことに、彼の前の多々良木藩の留守居役は接待もわいろも何もしていなかったのです。
どうも兄の千太郎が自害した理由はこの辺にありそうです。

そんな時に一大事が起こります。
大きなお手伝い普請があるというのです。
財政難に苦しむ多々良木藩は次の普請を命じられると破産してしまいます。なんとしてもお手伝い普請から逃れなければなりません。
さて、新之助がどうやってお手伝い普請を逃れるのでしょうか。

接待もここまでやると芸術的といいたくなります。
どんな世の中になろうと、人間のやることは変わらないのですね。
いいキャラの登場人物がたくさんいるので、シリーズにしてもらいたいものです。シリーズにできなければ、せめて一作書いて、次の信之助の仕事を教えてもらいたいですわ。気になって仕方がありません。

畠中恵 『アイスクリン強し』&『若様組まいる』2012/03/03



畠中さんの明治物です。
時は明治になってそんなに経っていない頃。
ミナこと皆川新次郎は横浜の居留地育ち。何故かというと、彼の親が早くに亡くなってしまったため、孤児となってから宣教師館や洋館でお端仕事をしていたからです。この時に外国人や料理人から面倒をみてもらい、外国の菓子を習いました。
最近、彼は西洋菓子店『風琴屋』をひらいたばかりです。
今は外国人向けの予約販売をしていますが、ゆくゆくは店売りをし、西洋菓子を広めたいという野心を持っていました。

お世話になった宣教師夫妻の結婚記念日パーティーに料理とお菓子を作り、パーティーの参加者たちに腕が本物と認められたら援助をしてもらえることになっていました。
パーティーの用意をしている頃、ひょんなことから追手から逃げていた小弥太を助けたのですが、彼が災いをもたらします。

そんな時に不思議な手紙がミナと彼と親しい若様組の面々に届きます。
さて、手紙は一体誰が出したのでしょうか。

若様組ってこのころに本当にあったのかどうか知りませんが、元武士や旗本の若様が維新後巡査になり、自分たちを若様組と呼んでいたそうです。



『若様組まいる』は『アイスクリン強し』の姉妹編みたいなものです。
『若様組まいる』は若様組ができる前の話です。

元旗本の若様たち、長瀬や園山、福田たちは困窮し、巡査の採用試験を受けようと決心します。
無事になんとか全員が合格したのですが、巡査になる前に巡査教習所に入って講習を受けなければなりません。
これが意外と大変なのです。
武士ですから武道は大丈夫なのですが、頭を使う方がなかなか難しい。それ以外に若様組の他に薩摩出身者、直参で徳川について静岡に行った士族達、商家の子息達がいて、これらの人たちの間で反目があります。その上、教習所では何やら犯罪が行われているらしいし・・・。

明治も悪くないのですが、あまりロマンを感じないのは何故でしょう?
この2冊は漫画チックでドタバタ劇がありで、それなりにおもしろくはありますが、なんか続きを読もうという気にはなりません。
江戸物と比べると明治物は作者の身になっていないという感じです。消化不良なのでしょうか?
表紙はかわいいのに残念です。

角川庭園・幻戯山房 「すぎなみ詩歌館」2012/03/04

大田黒公園に行ったついでに角川庭園まで足を延ばしてみました。
大田黒公園から歩いて約5分。


俳人で、角川書店創設者の角川源義(げんよし)氏の邸宅を改修してできた公園のようです。
残念ながら庭が大田黒公園ほど広くはなく、手入れもよくないという印象です。
咲いていた睡蓮がすべて倒れていました。風のせいでしょうか?
邸宅の方は茶室と集会所があり借りられるようで、ちょうど何かの会合をやっていました。


入り口には猫柳がありました。


玄関のようです。


枯れた芭蕉。垂れさがっているのは実でしょうか。


福寿草が咲いていました。



まだ蕾の馬酔木。



人がいたので、邸宅にはそれほど近寄れず、庭でコソコソと写真を撮りました。




ここは茶室でしょうか。
白と赤の梅が咲いていました。





左下の丸い輪の中は水琴窟だということです。訪れた時は知らなかったので、試していません。次回行くことがあったら音色を聴いてみたいものです。

宮部みゆき 『誰か Somebody』&『名もなき毒』2012/03/05

杉村三郎は今多コンツェルンの会長の娘と結婚したため、勤めていた児童書の出版社を辞めて、今多コンツェルンの広報室に入り広報誌の編集をしています。
妻菜穂子は実は会長の愛人の子で、15歳の時に母親が亡くなり、父親と暮らすようになりました。
彼女には心臓の病気があります。
異母兄弟が二人いますが、菜穂子は今多コンツェルンの「資産」を分け合うような存在ではないとされているため、彼らとは快適な距離を保っています。
三郎は菜穂子と結婚することによって今多コンツェルンの一角に乗り込もうと言うような野心は全くありません。そのために菜穂子と結婚できたようなものです。
ところが、周りは彼のことをやっかみ半分で見ています。
そんな三郎には特技と言うべきものがありました。この特技を知っている義父は三郎に難題を持ってきます。


妻に義父からの頼まれ事を告げられます。
この前自転車に轢かれて亡くなった、義父個人の運転手梶田の娘が父親の伝記を書きたいというので会ってやってほしいというものでした。
梶田には娘が二人いました。
本を書きたいと言うのは妹の方で、どうも姉の方は乗り気ではないようです。
妹はまだ父を轢き逃げした犯人が見つかっていないので、自分の書いたものが犯人逮捕の助けになればという思いから本を書きたいらしいのです。
後で姉と話をすると、どうも梶田には人に言えないような過去があり、それを妹に知られたくないというのです。

妹と姉の間に入って振り回されつつも、お人よしの三郎は意外な梶田の過去を掘り起こすことになります。

  

三郎シリーズ、二作目です。
たまたま雇ったアルバイトの女の子がとんでもないトラブルメーカーで、ひと騒動ありそう。
義父の命を受け、三郎が彼女の過去を調べ始めます。その過程で三郎はまたまた事件に足を踏み入れてしまいます。無差別毒殺事件に・・・。

ホント、三郎はお人よし過ぎる。いい人過ぎる。その割に、何で事件を解いちゃうんでしょうか。
現代の暗部を描いているのに、それほど暗くならないのは三郎という浮世離れした人を探偵にしたからでしょうね。
              

東野圭吾 加賀恭一郎シリーズ2012/03/07



図書館に『麒麟の翼』があったので借りてみました。
よくわからずに借りたのですが、これはシリーズ物の一冊だったのですね。

日本橋の麒麟像の下で男がナイフで刺されて死んでいました。男は『カネセキ金属』勤務の製造本部長青柳武明55歳。調べていくうちに別のところで刺されたらしいことがわかります。
近くで挙動不審の男が見つかりますが、声をかけて職務質問をしようとしたところ、男が逃げ出し、通りかかったトラックに撥ねられてしまいます。この男が潜んでいた場所から、青柳の書類鞄が見つかります。
犯人はこの男のように思われたのですが、日本橋署の警部補加賀恭一郎は疑問を持ち、従兄弟で警視庁捜査一課の松宮修平と共に地道な捜査をして犯人を突き止めていきます。

東野圭吾はつまらないと思っていたのですが、この本、好きです。純粋なミステリーファンにはつまらないのでしょうが、私のような謎解きよりもストーリーを読むのが好きなものにとってはおもしろい本です。

加賀恭一郎シリーズを最初から読んでみることにしました。
が、その前に、阿部ちゃんで映画になった『新参者』を読んでしまいました。(『麒麟の翼』も阿部ちゃん主役で映画になってますが)


小伝馬町で一人暮らしの45歳の女性が自宅マンションで首を絞められて死んでいるのが見つかります。
日本橋署の加賀恭一郎が人形町界隈を聞き取りに歩き回ります。
人形町には一回だけすき焼きを食べに行ったことがあります。その時は町を歩くという感じではなかったことを今さら悔やんでいます。
この本で人形町界隈がとても魅力的に書かれているからです。
犯人逮捕にどこで繋がるのかと思いながら、加賀の推理に感心しつつ読んでいくと・・・うまく繋がっていきます。

この2冊を読んでから初めに戻って読むと、全く趣が違うのにびっくりします。


シリーズ一作目。
加賀の大学生時代に起こる殺人事件が描かれています。
東野の初期の作品なので、バリバリの推理小説です。私はあまり好きじゃないのですが、加賀のことを知りたいので読んでいきました。
一昔前の学生生活が描かれていますので、今の大学生はびっくりするでしょうね。
部屋にはお風呂もついていないし、携帯電話もないなんてね。

加賀って剣道が強く、学生チャンピオンになるほどです。それなのに、高校時代に茶道の心得があり、茶道部には入っていなかったのですが、茶道部の人とは仲がよく、大学に入ってからも付き合いがあります。
七人のお茶友達の一人、祥子が自室で死んでいるのが見つかります。彼女は自殺なのか?それなら何故彼女は死んだのか?
加賀たちは祥子の死の謎を探ろうとします。
そうこうするうちに第二の事件が起こります。高校の恩師の茶道部顧問の家で、彼女の誕生日に「雪月花の式」を行っていた時です。

「雪月花の式」とは、数字の他雪月花の3つの役札が入っている札を次々と引いていきます。お点前が始まると雪の札を当たった人がお菓子を頂き、月の人はお茶を呑み、花の人が次ぎのお茶を点てる。これを繰り返し何度もして、一人に雪月花の札が揃って当たると終るというものです。

祥子の死と第二の事件はどういう繋がりがあるのか。加賀が謎を解いていきます。

『新参者』ではひょうひょうとして人形町界隈を漂流しているような加賀が、大学では結構情熱家だったことがわかっておもしろかったです。まだ大学生ですからねぇ。

二作目は『眠りの森』、三作目『どちらかが彼女を殺した』、四作目『悪意』、五作目『私が彼を殺した』、六作目『嘘をもうひとつだけ』、七作目『赤い指』、八作目『新参者』、そして『麒麟の翼』となります。

図書館に全部あるといいのですが。探してみますわ。

東野圭吾 『眠りの森』2012/03/10

加賀恭一郎シリーズの二作目。
なんとバレエ団の話です。この本を書くために東野さんは一年間で20回以上もバレエ公演を見たそうです。作家も大変ですねぇ。


高柳バレエ団のレッスン場に無断侵入した男が、たまたまそこにいたバレリーナに殺されました。正当防衛がなりたつでしょうか?
その後、演出家の梶田が『眠りの森の美女』のゲネ・プロの最中に死にます。
どうも毒針に仕込まれたニコチンによる中毒死のようです。
この二つの事件には何らかの関連があるのでしょうか。
加賀が解明していきます。

なんか意外なのが加賀。彼はバレリーナの浅岡美緒に惹かれていくのです。
う~ん、なんか『新参者』の加賀とは一致しないですぅ。
これ以降もこんな感じなのでしょうか・・・。ちょっと心配。


今日は元同僚の送別会に行ってきました。運よく公務員試験に受かったので、母親が一人で暮らしている大阪に帰ることにしたのです。
大阪と言えばハシズム(言いえて妙ですね)。大丈夫でしょうかね。
毎年京都には1回は行くので、また会えるでしょう。彼の活躍を期待しています。



御茶ノ水駅からスカイツリーが見えないといいましたが、見えました。聖橋の上から見ると、ビルとビルの間に見えるではありませんか。意外と人間は見ているようで見ていないんですね。あ、私だけ?

モナコ公国モンテカルロ・バレエ団 『シンデレラ』――3.11 東日本大震災復興支援特別公演2012/03/11

昨夜、元同僚がつぶやいていました。「本当だったら今日が震災一年目なのに」
うるう年なので一日ずれてますが、モンテカルロ・バレエ団が特別公演をやるというので、今日のチケットを取りました。

14時30分から特別セレモニーが始まりました。プリンシパルである小池ミモザさんの『La  Vie』という踊りとマイヨーのスピーチ、モナコ大公アルベール二世殿下からのメッセージの紹介。そして14時46分に一分間の黙祷。

小池さんはインタビューでこの踊りのことをこう言っています。

「人間は一人ではなく、みんなで生きているのだということ。悲しい出来事だったけれども、何よりもそれを乗り越えて"生きる"との意味を込めて、『La Vie』というタイトルを考えました。プリンシパルのガエタン・モルロッティによる、チベットの楽器(シンギング・ボール)の生演奏に合わせて、春の芽吹きを思わせる、弱いようで強いものを表現し、皆さんに"希望"を感じていただけたらと思います」(NBSより)


振付: ジャン=クリストフ・マイヨー
音楽: セルゲイ・プロコフィエフ
装置: エルネスト・ピニョン=エルネスト
衣裳: ジェローム・カプラン
照明: ドミニク・ドゥリヨいvc

≪キャスト≫
仙女:小池ミモザ
父:クリス・ローラント
シンデレラ:ノエラニ・パンタスティコ
王子:アシエ・ウリアゼレカ
継母:カロリン・ローズ
義理の姉たち:モード・サボラン、アンヌ=ラウラ・セイラン
儀典長たち:アシエ・エデソ、ラファエル・ボシャール
4人の友だち:
ピョートル・ツォボヴィッチ、ブルーノ・ロケ、
ラモン・ゴメス・レイス、エディス・アルゴチ
4人のマネキン:
ジョヴァンニ・モンジェリ、ジェローン・ヴェルブルジャン、
ダニエレ・デルヴェッキオ、サブリ・ガレム=シェリフ
異国の人たち:
カタジェナ・クチャルスカ、カルメン・アンドレス、
シモーヌ・ウェブスター、レネケ・ヴォス
舞踏会:モンテカルロ・バレエ団

『シンデレラ』は新国立劇場バレエ団パリ・オペラ座バレエ団ベルリン国立バレエ団と見ましたが、全部振付が違いましたし、内容も違いました。一番童話の『シンデレラ』に近いのが新国立のです。どの『シンデレラ』もそれぞれいいので、どれがいいとは決められません。ゴージャスさはオペラ座。コミカルさはベルリン。幸せな気分になるのは新国立・・・かな?

モンテカルロ・バレエ団の『シンデレラ』は永遠の愛がテーマです。

愛する妻が亡くなり失意の父は別の女性と結婚します。
娘のシンデレラは継母と義理の姉たちにいじめられていました。
父はそのことを知りながらも、継母の言うとおりになっていました。

王子は虚しい毎日を過ごしていました。何をしても楽しくなく、どんな女性を見ても満足できず。

舞踏会の知らせが届き、喜ぶ継母と姉たち。
彼女たちが舞踏会に行った後に仙女がシンデレラのところにやってきます。
実はこの仙女は死んだ母親なのです。
母親が最後の舞踏会で着た衣装を着て、シンデレラは舞踏会へ行きます。

シンデレラを一目見て、王子は恋に落ちます。
父親は仙女が愛する妻であることに気づき、妻と踊り続けます。

真夜中になり、シンデレラは階段を駆け上がり、帰ろうとします。
その時、彼女の裸足の足が光の中に浮かび上がります。

シンデレラを探し歩く王子。
そこに仙女が現れ、王子をシンデレラへと導きます。

シンデレラを見つけ、二人で父親の元を去ります。
残された父は仙女(妻)と踊り続けます。


小池ミモザ(↑)の踊りを始めてみたのですが、いいです。
彼女は身長もあり、身体も柔らかく、体型も日本人ばなれしています。
モンテカルロの男性ダンサーは体格がいい人が多いのですが、その中にいても遜色ないということが驚きです。
Aプロのゾベイダを踊る彼女を見たかったです。(体調が悪かったため、行けなかったのです)今まで見た現役日本人ダンサーの中では一番好きかもしれません。

マイヨーの振付も衣装も舞台装置も独特です。古典作品というよりもコンテンポラリー色の強い『シンデレラ』でした。


東野圭吾 『どちらかが彼女を殺した』&『私が彼を殺した』2012/03/12

加賀恭一郎シリーズの三作目と五作目です。
二つ一緒に紹介するのには理由があります。この二作、実は犯人が最後まで読んでもわからないのです。どうしても犯人がわからない場合は、袋とじの「推理の手引き」が最後にありますので、それを利用して推理することになります。
純粋なミステリー好きには最適な本です。


愛知県警豊橋署に勤務する和泉康正が東京に住む妹に会いにいくと、妹は部屋で死んでいました。一見自殺に見えますが、他殺であると気づいた和泉は現場を偽装し、自殺したと思わせ、独自の捜査をして復讐を果たそうとします。
しかし、彼の前に練馬署の加賀が立ちはだかります。



禁じられた関係の兄妹である神林貴弘と美和子でしたが、美和子が結婚をすることになります。
結婚式が明後日に迫った日、婚約者の流行作家・穂高誠の家に行った貴弘は美和子が席をはずした時に、庭に白いワンピースを着た幽霊みたいな女がいるのを見ます。それは穂高の昔の女でした。穂高に裏切られたことを知り、女は穂高の家の庭で服毒自殺をします。女との関係を美和子に知られることを恐れた穂高たちは死んだ女を女のマンションまで運びます。

結婚式の日、鼻炎のカプセルを飲んだ穂高が死にます。そのカプセルは自殺した女の家にあったもののようです。
穂高を殺したのは一体誰なのか。カプセルを手に入れられたのは三人。
加賀が真相に迫ります。

はっきり言って犯人捜しの本であって、殺しの動機は全然目新しくありません。
私がミステリーを読むうえで楽しみにしているのが、謎解きではなくて動機とか事件の背景なのです。その点で物足りない本でした。

もっと人間加賀をしりたいですわ。

東野圭吾 『悪意』&『赤い指』2012/03/14

この2冊は加賀の過去を垣間見られるものです。


有名小説家の日高邦彦が自宅で殺されました。
調べていくと、日高の友人で児童小説家の野々口修が当日家に来ていたことがわかります。野々口は加賀が大学を卒業してから勤めた中学校の同僚でした。彼は日高の口利きで児童小説を出版できたのです。

真実は一体どこにあるのか。最後までわかりません。

私が興味を持ったのが、加賀の中学校教師時代の出来事です。
『麒麟の翼』や『新参者』の30代?40代?の加賀が教師になったと思ってはいけません。大学時代に剣道をバリバリやっていた22歳の加賀が教師になったのです。体育会系ですから、なかなか生徒にはハードな先生だと思います。
彼のクラスで起こったいじめの対応をみると、それはまずいでしょうといいたくなりました。自分は教師に向かないと思って辞めたのはいいことだと思います。あのまま続けていると、不幸な生徒が増えますから。
恭一郎、初めての挫折でしょうか。


親の介護や子供の教育、引きこもり、機能不全家庭などの現代の社会問題が取り上げられています。

自分の息子が女の子を殺してしまったら、親はどうするでしょうか。
前原と妻がしたことは、愚かともいえることでした。
加賀はそれを知りつつ、落としどころを探していろいろと手をうってきます。
後の人情に厚い恭一郎の片鱗がうかがえます。

事件と同時進行しているのが、加賀と父親の関係です。父親は病気で長くはありませんが、加賀は会いに行こうとしません。
そこにはある事情があったのです。

加賀恭一郎シリーズも七作目になると、キャラも固定してきますね。

『私が彼を殺した』と『赤い指』の間に5つの短編が入った『嘘をひとつだけ』があります。

出版されている加賀恭一郎シリーズを読んで、私的に好きな順番をあげていくと、まず一番好きなのは『麒麟の翼』、二番目は『新参者』、三番目は『赤い指』でしょうかね。
人の好みもそれぞれですから、一度シリーズ全部を読んでみるとおもしろいと思います。