村岡恵理 『アンのゆりかご』2014/03/25

「獣の奏者」や「精霊の守り人」シリーズを書いた上橋菜穂子さんが国際アンデルセン賞の作家賞に選ばれたそうです。
おめでとうございます。
これからもいい作品を書いてください。楽しみにしています。



NHKの朝の連続小説で『赤毛のアン』を翻訳した村岡花子さんのことをやるそうです。
その基になったのが、この本。
『赤毛のアン』の児童版は私の愛読書でした。
アンが間違ってダイアナにお酒を飲ませてしまったり、屋根に上って落ちたりしたことは未だに記憶に残っています。
私がアンが好きだったのは、実は私も赤毛だったからなんです。
大人になってから英語で読んで、『赤毛のアン』のすべてを理解していなかったことに気づきました。
やはり子供用は子供用。
原作に忠実なものも読まなければね。

山梨県甲府市の安中家の長女として生まれたはな(後に花子となる)はクリスチャンで文学好きの父の意向で、平民の身分にもかかわらず給費生としてカナダ人宣教師によって設立されたミッション・スクール、東洋英和女学校に入学します。
この学校ではなは独特な英語教育を受け、本人の努力もあり優秀な成績を収めることになります。
『赤毛のアン』は第二次大戦中に日本を去りカナダに帰る婦人宣教師ミス・ショーにより贈られました。
出版するあてもないままに花子は『赤毛のアン』の翻訳を続けます。

花子は英米では青春読み物が長く読み継がれてきているのに、日本にティーン・エイジャーが読む適当な本がないことを遺憾に思っていました。
そのため「健全で清新な家庭文学を広めよう」と奮闘していきます。

本の中で心に残った言葉。

「我と共に老いよ 最上のものはなお後に来たる」(ブラウニング)

「今から何十年後かに、あなたがたが学校生活を思い出して、あの時代が一番幸せだった、一番楽しかった、と心底から感じるなら、私はこの学校の教育が失敗だったといわなければなりません。人生は進歩です。若い時代は準備のときであり、最上のものは過去にあるのではなく、将来にあります。旅路の最後まで希望と理想を持ち続けて、進んでいく者でありますように」

ミス・ブラックモアが卒業式の日に女学生時代が一番楽しく、このような時代は二度と来ないと言った生徒に向かって言った言葉です。
このような信念を持って教育に当たっていたカナダ人婦人宣教師たち。
こんな教師と出会えた生徒は幸せですね。

翻訳家を目指す人には・・・。

「豊富な語彙を持ち、その中の微妙なニュアンスを汲んで言葉を選ぶ感受性は、翻訳の上では英語の語学力と同じくらい、あるいはそれ以上に大切な要素だと思う。季節や自然、色彩、情感を表現する日本語の豊かな歴史を思えば、日本の古典文学や短歌や俳句に触れることも大切」

この本は村岡さんのお孫さんにあたる人が書いた本です。
村岡花子と市川房江や石井桃子などの同時代の女性たちの関係を知ることができて良かったと思います。
私たちはこういう女性たちのおかげで今の色々な権利や自由を獲得でき、享受しているのです。

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