帚木蓬生 『悲素』2016/02/07



精神科医をしているので、お金の心配をしなくていいから好きなものを書いているという帚木さんの書いたものは、1998年に起きた和歌山毒物カレー事件です。
ジャーナリストが書いたものとは一線を画しています。
帚木さんはこの事件に関わった医師の目線から書いています。

夏祭り会場でカレーを食べた人たちがつぎつぎと強烈な吐き気と腹痛に襲われ、病院に搬送されます。
最初は食中毒ではないかと思われたのですが、あまりに早い症状の出現のため青酸化合物の混入が疑われましたが、後に砒素であることがわかります。
被害者は67名で、そのうちの4名が亡くなりました。
逮捕されたのが現場近くに住む主婦。
調べていくと、彼女の周りには夫を初めとして不審な通院や入院をしている人たちがいて、彼女はそのたびに高額な保険金を手に入れていたのです。

九州大学医学部衛生学教室教授の沢井直尚(モデルは九州大学名誉教授井上尚英)は事件から一カ月後、和歌山県警から要請を受け、この事件に関わることになります。
彼は松本サリン事件や地下鉄サリン事件に関与していました。
大学の同僚たちの助けを借りながら、彼は福岡と和歌山を何度も往復し、被害者を診察して急性砒素中毒の症状を確認していきます。

ノンフィクションと思うような内容です。
こういう医師たちの存在が日本の医療現場の希望になってくれます。
被害者の方々は未だにカレーが食べられなく、給食にもカレーはでないそうです。
何年経っても被害者とその家族は事件を忘れることはできないのです。



犬たちは寒くても遊ぶのが大好きです。


いつ外に行けるのか、ママが立ち上がるたびに期待します。