宮崎誉子 『水田マリのわだかまり』2019/04/04

お仕事本かと思って軽く考えて読んだら、重い本でした。


2つの話が入ってます。

『水田マリのわだかまり』
宗教狂いの母が嫌になったのか、父が出て行った。
水田マリはちょうど高校に入学する時で、自暴自棄になり、三日で高校を辞めた。
それから祖父が昔勤めていた洗剤工場のパートをやることにした。
パートの現場は女たちのいじめがはびこるとんでもない所だったが、唯一、フィリピンの女性たちは優しい。

中学校の時、マリの友達が自殺した。
いじめには加担しなかったが、黙ってその様子を見ていたマリと友達のニコは未だにそのことにやましさを感じていた。
そんな頃、工場で一緒に働いている、いじめの首謀者の母親が娘の誕生日に家に来てもらいたいと言い出す。
仲もよくなかったのに、一体何のために?

『笑う門には老い来たる』
45歳の笑子の中二の娘は急に携帯を解約し、ケーマー(懸賞マニア)になった。
そんな娘の行動をおかしく感じながらも、何も言えずにいた。

実家は電車で二時間かかるところにあり、久しぶりに帰省することになる。
夫は風邪をひいてしまい、娘と二人で帰省したが、父はパーキンソン症候群で認知症状も出てきている。
母も老いている。
これからどうなるのか・・・。

今の日本の問題が書かれた作品です。
今の時代に学生ではない自分はよかったなぁとつくづく思います。
たぶん私、いじめには加担しないけど、いじめの対象になるわ。
いじめはやる方もやられる方も、そして傍観していた人にも心の傷を残すものです。
どうしてこんなにギスギスしちゃったのかしらねぇ、日本も・・・。

介護の問題はこれから益々増えていくでしょう。
両親共に亡くなっているので、親のことは考えなくてもいいのですが、私が介護される立場になった場合、どうなるのか。
夫とは介護が必要になったらすぐに施設に入ろうと話していますが、入れる施設があるかしら?
笑子さんと同じようにこの先どうなるかわからないけど、なんとかなるだろうと思わなければ生きていけませんわね。

どちらの話も最後にささやかな希望があったので、読後感はそれほど悪くないのですが、この本を若い人に読ませると働きたくなくなるでしょうね。
働くことに喜びもあるんだと言いたいけど、通勤電車の人々を見てるとそうも言えないか・・・。

マリたちの会話についていければ、読んでも大丈夫でしょう。
作家さんが若い人かと思ったら、40代で意外でした。