横山秀夫 『ノースライト』2020/01/29



昨年から気になっていた本です。
ポイントがあったので買ってみました。

一級建築士の青瀬は彼自らが住んでみたい家を建ててくれという施主の吉野の強い要望で、信濃追分に家(Y邸)を設計しました。
この家は評判になり、建築雑誌でも取り上げられ、同じ家を建ててくれという人まで現れました。
わざわざY邸を見に行った人から、誰もこの家に住んでいないようだと聞き、青瀬は不思議に思い、吉野に電話してみるのですが通じません。
青瀬は設計事務所のオーナーの岡嶋とY邸を訪れますが、越してきた跡はなく、二階に一脚の椅子が残されていました。
岡嶋によるとその椅子はドイツの建築家ブルーノ・タウトの椅子ではないかとのことで、熱海の旧日向別邸で見たことがあると言います。
青瀬はこの椅子が吉野を探す手がかりになるのではないかと思い、熱海に行くことにします。

一脚の椅子からタウトの生涯を描き、青瀬の父親の死の真相までが絡んできて、サクサク読ませられる本でした。
吉野失踪の謎を知ってしまうと何だという感じがありますけど。
今までの横山さんのような話(警察物など)を期待して読むと物足りなく思うかもしれませんが、美術好きな人なら、タウトの椅子を見に行きたくなるでしょう。
私も旧日向別邸に行きたくなりましたが、2022年3月まで休館だそうです。
題名のノースライトのように静謐な空気感溢れる美しい作品でした。