森谷明子 『涼子点景1964』2020/03/12



1964年、東京。
「もはや戦後ではない」と言われ、オリンピック開催が目前でした。
競技場近くに住む健太は書店主から漫画を盗んだと疑われ、自分の無実を証明すべく、証人としてその日にたまたま話をした涼子お姉さんを捜し回ります。
彼女は同級生の太郎の姉だと思っていたのですが、姉ではなく、太郎は住んでいる場所を知らず、近いうちに遠くへ引っ越すと言っていたとのことでした。
しかし、運良く涼子に出会え、健太への疑いは晴れました。

涼子は不思議な魅力のある美少女で、家は貧しいはずなのに、彼女のことを「お嬢さん」と呼ぶ男性と一緒にいるところを見かけられました。
一体彼女は誰なのか。
明らかにされていく彼女の境遇は・・・。

涼子が最初はどういう子なのか分からず好きにはなれませんでしたが、読んでいくうちに、秘密を胸にしまい、人には頼らず、困っている人がいると手助けをし、自分で自分の道を切り開いていこうとする、聡明な女性であることがわかりました。
あの時代はまだまだ日本は貧しくて、生活は大変だったんですね。

今年のオリンピック(もうないと思いますが)の時代は果たしてどうなのか。
もし10年後、20年後に生きていたら・・・『涼子点景2020』を読んでみたいものです(笑)。