凪良ゆう 『流浪の月』2020/04/17

今年度の本屋大賞受賞作品です。
(ネタバレあり)


夕食にアイスを食べるような自由な家に育った更紗。
父が亡くなり、母が失踪し、叔母の家に預けられたのですが、その家で暮らすことは更紗には苦痛でしかありませんでした。
ある雨の日、公園で一人の男に話しかけられ、更紗は彼の家について行ってしまいます。男は文と言い、19歳の大学生でした。
文の家で暮らすことは更紗にとって心安まること。しかし、油断してパンダを見に動物園に行ってしまい、文は誘拐犯人として捕まり、更紗は叔母の家に戻るのだが、戻った日の夜に隠していた秘密を暴露してしまったため、施設に入れられてしまいます。

それから15年。文と更紗は再会する。
更紗はDV男と暮らしており、文と出会ったことでその男と別れ、文のアパートの隣の部屋へと引越す。
文は更紗にとって唯一の心許せる人。なのに世間は誘拐犯とその被害者としてしかみてくれない。二人の関係を異常だと言い、更紗の元恋人はそんな彼らを追い詰めていく。
文と更紗は二人で穏やかに暮らせる場所を求めて彷徨っていく運命だったのだ。

読み始めはDV男にひっかかる馬鹿な女の話かと全く共感できずに読んでいましたが、途中から変わってきました。
文はロリコンなのかしらと疑問に思っていたら、やっぱり違いました。
普通に生きるのが生きづらい二人にとって、男と女ではなく、ただ人として一緒に暮らしていけるのが一番なのですが、世間はそれを異常であると見なします。
彼らの安住の地はどこにあるのか・・・。
いつまでも穏やかに暮らしてほしいと思う最後でした。