ヴィクター・メソス 『弁護士ダニエル・ローリンズ』2020/04/25



作者のヴィクター・メソスは刑事弁護士で、実際に彼が経験したことを書いたそうです。
事実は小説よりも奇なりですね。

ソルトレイクシティで刑事弁護士をしているダニエルは、自分の浮気のせいで離婚したが、未だに夫に未練たっぷり。
夫は新しい恋人と再婚する予定で、やけ酒で、毎日二日酔い状態が続いていた。

そんなある日、麻薬密売の容疑をかけられた17歳の知的障害のある黒人少年テディの弁護依頼が舞い込む。
どう考えても彼が麻薬密売などできるはずがないが、彼と一緒にいた3人の白人高校生は彼が不利になることを言うばかり。
未成年なので、不起訴処分に持ち込めるかと思っていたら、なんと成年者として地方裁判所で扱われることになる。
その上、検察も判事も実刑判決にするつもりのようだ。
テディのような知的障害の少年が刑務所で生き延びられるわけがないのに。

テディが18歳になる誕生日の日に、ダニエルはホームレスのシェルターで三人の男たちに喝上げされているテディを見つける。
両親のところに連れて行くと、18歳になって養育の義務がなくなったから、テディとは縁を切るという。
仕方なくテディを自分の家に連れて行き、面倒をみるダニエル。

警察も検察も判事までも敵という状態で、ダニエルはどう無罪を獲得していくのか。

巨悪に一人立ち向かうダニエルが最高です。
一見、人間としてどうなのといいたくなるダニエルですが、弱者に対してはとことん優しく、差別や偏見に対しては毅然とした態度を取り、最後はスカッとした終わり方でした。彼女の周りの人たちも魅力的です。
もっとダニエルの活躍を読みたいのですけど、シリーズ物ではなさそうで、残念。
久しぶりのお勧め本です。