長岡弘樹 『119』2020/06/10



電話で119は消防や救急の時の番号ですね。
短編ミステリーの主人公は架空の町、和佐見消防署漆間分署の消防士たちです。
他にも消防士を描いた本を読んだことがあるので、その本の続きかと思ってしまいました(恥)。
長岡さんですから一筋縄ではいかないので、種あかしの時はちょっと頭を使わなければなりません。
メダカのように考えてもわからないことはありませんでしたけど。
登場人物たちの性格が偏っています。
『教場』の時もそうでしたから、長岡さんの持ち味ですかね。

消防士たちは毎日訓練をかかしません。
人の命と自分の命の両方を守らなければなりませんから。
仕事のない日でも色々と目を配って歩いているようです。
自殺しそうな人を見つけ声をかけたり、火災が起こりそうな時は注意しに行ったり、私生活はないに等しいですね。
その上、人命救助に行った際には救助する人に笑顔で接する、なんて私にはできませんわ。
過酷な仕事です。
仕事上で挫折し自殺する人もいますが、あまり公になっていませんね。
人の命を守る仕事をしているせいか、思い直す人も他の職業よりも多いらしいですけど。

へぇ~と思ったのは、「電話機についているボタンを押さなくても、番号に相当する周波数の音を受話器に聞かせてやれば、プッシュボタンをかけることができる」ということです。知りませんでした。
普通の人には無理でしょうけど、オペラ歌手なんかは誰でもできるのでしょうか?

使えそうなのが、一番最初の「石を拾う女」に出てくる研修です。
じぶんの大切なものを10個10枚の紙にひとつずつ書いていきます。
書いてから一番優先順位の低い物を選び出し、ぐしゃっと丸めて捨てます。
これを繰り返していきます。
この時に自分がどう感じたかが大事。
ちなみに講師の方はこう言っています。

「これが、生きるということです。生きるということは、裏を返せば、死に近づいていくという意味です。そして、人が死んでいくというのは、いまのように一つずつ大切なものを失っていく過程だということです」(p.9)

大切なものが10個もあるかしら?
やりたいことを100個書こうとして挫折したけれど。
後でやってみます。