家族を描いた本――『at Home』&『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』2020/07/13



本多孝好 『at Home』
家族を描いた4篇の短編集。
どの家族も「普通」ではありません。
とは言っても、「普通」の定義が難しいのですが。
例えば、「at Home」では、全員血のつながりがない家族で、職業が変わっています。
100の家族があれば、100の家庭の形があります。
どれがスタンダートと言えるのか・・・。

現代の家庭がかかえる問題も描かれていますが、本多さんですから悲惨なだけでは終わりません。
家族とはと考えるいいきっかけになる本です。



山田詠美 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』
再婚した二組の親子が一組の家族となるために、東京郊外の一軒家に住みつきます。
母・美加のお腹には新しい命がありました。
誰もが描く「きれいな」理想の家族でしたが、家族の要であった長男が17歳で雷に打たれて亡くなってから家族が崩壊していきます。
母は長男・澄生を溺愛しており、彼の死から立ち直れず酒を飲み始め、アル中となってしまいます。
父の誠は頼りにならない優しい人。
長女の真澄は家族の形を崩さないように奮闘します。
次男の創太は義母を愛し、彼女からも愛してもらいたいと思い、気を引くために無駄な努力を続けます。
唯一、二家族の血をひく次女の千絵は、冷めた目で家族を見ています。

失われたものを取り戻すために、現実に目を塞ぎ、家族を再生させようとする努力があまりにも美しくて悲しいです。

久しぶりに読んだ山田詠美でしたが、初期の頃と全く違っていて驚きました。
再婚して、落ち着いた生活をしているからかしら?