ブレイディみかこ 『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』2020/08/09



本屋大賞・ノンフィクション本大賞、受賞作の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を書いたブレイディみかこが、今度はイングランド南部の中年おっさんたちの生態を描きました。

副題の「ハマータウンのおっさんたち」とは、1977年に文化社会学者のポール・ウィリスが書いた『ハマータウンの野郎ども―学校への反抗・労働への順応』で調査対象であった労働者階級の少年たちが、今や老いておっさんとなったということらしいです。
この本は「英国の労働者階級のガキどもは反抗的で反権威的なくせして、なぜ自分たちから既存の社会階級の枠にはまり込んでいっちゃうのか。自らガテン系の仕事を選び、いかにもな感じの労働者階級のおっさんになりがちなのか」を研究した本だそうです。(プレイディみかこさんによる)
その頃、16歳だった少年は今や59歳。
立派なおっさんですね。

イギリスというと、「ゆりかごから墓場まで」を学校で習いました。
「ハマータウンの野郎ども」のおっさんたちが社会に出た頃は、まだイギリスは福祉社会でした。
失業すれば簡単に失業保険が出たし、怪我や病気をしてもNHS(国民健康サービス)で無料(不妊治療も無料だったそうです)で治療してもらえるし、大学の学費も無料なので、行こうと思えば大学まで行けるし、労働組合の力も強かった。
よきイギリスですね。でも、それは過去のこと。
今や緊縮財政で公共のサービスや福祉はカットされ、経済的に苦しくなっています。
NHSでは診察や治療を待たされ、待ちきれない人たちは民間の病院を使うようになりました。
労働組合が弱体化したため企業のパワーが肥大化し、仕事は歩合制やゼロ時間雇用契約が横行し、雇用条件や賃金が悪化しており、一端道を踏み外すと、下層民になってしまいます。
昔の若者は社会に対して反抗的だったのに、今の若者は真面目に働き、酒も飲まず、社会に対して従順なのだそうです。
若い人たちが酒を飲まなくなったので、潰れるパブも出てきており、パブはもはやパブリック・ハウスの役も果たせなくなってきたようです。
イギリスというとビールと思ったら、今やビールよりもスパークリングワインが売れてるそうです。
私たちの持っているイギリスのイメージが崩れますね。

よく言われているのが、「イギリスは階級社会」です。
昔は階級は職業と収入で決められており、3つ(上流、中流、労働者)でしたが、今はソーシャルな側面と文化的側面を加味して、7つになったそうです。
労働者階級の多様さや、白人労働者と移民との関係など色々と問題はあるようです。
詳しくは本を読んでください。
本に出てくるBBCの「Class Calculator」はここへ。
自分がどの階級に属するか、やってみると面白いかも。

EU離脱で揺れるイギリスでおっさんたちは何を考え、どう暮らしているのか。
一概にひとつではくくれませんが、日本のおっさんたちより生き方が多種多様な気がします。

本の中に出てくる歌を紹介しておきましょう。
モンティ・パイソン(イギリスの有名なコメディ・グループ)のメンバー、エリック・アイドルによる「Always Look on the Bright Side of Life」(1979年)。
磔刑にされているのに、のんきに歌ってますね(笑)。
この歌は国民的愛唱歌で、葬式やサッカーの試合などで歌われているとか。
もう一曲はFatboy Slim の「Praise You」(1999年)。
この踊り、何ですか。爆笑物です。
こういうのがイギリスのおっさんの好みなのね。
半ケツが好きなのもイギリスのおっさんです。
是非、映画の「フル・モンティ」でも見て笑ってください。
ア、これは半ケツではなくて、男性ストリップだったっけ。
半ケツ映画は思い出せないので、ストリップで我慢してください。
イギリスの炭鉱に働く男達の悲哀と哀愁をたぶん感じますよ(笑)。

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