ブレイディみかこ 『花の命はノー・フューチャー』2020/09/07

絶版だったものが再度出版という運びになったようです。
本屋大賞受賞のよい影響ですね。15年ぐらい前に書かれた本のようです。


イギリスのブライトンというと、港町で避暑地の落ち着いた街なんじゃないかと思っていました。
彼女によると超高級住宅街あり、億ション街あり、貧民街あり、定年後の老人たちがフラットを買ったり、老人ホームにはいったりする、何でもありの街。
浜辺にはトレンディなナイトクラブがあり、ゲイ人口が多い街なのだそうです。
そんな街でトラック運転手の夫と共に暮らしている、みかこさんのパンクな生活が描かれているのが、この本です。

パンクって何?と思う方がいるでしょうね。
パンクは元々「パンク・ロックを中心にしたサブカルチャー」なのだそうです。
パンク・ロックというと、私でも知っているのがセックス・ピストルズです。
彼らが「No Future(god save the queen)」という歌を歌っていますので、どんなもんか聞いてみてくださいませ。
パンクって個人の自由を重んじる、反体制的な生き方かなっと私なりに思っていますが、違っていたらすみません。

アガサ・レーズンの本を読んでいて、イギリスの中年女性の恋愛に対する積極性にびっくりしています。
日本女性と言っても若い女性限定ですが、昔「イエロー・キャブ」と呼ばれていたことがありますよね。
みかこさんによると、イギリス人女性は地中海及びエーゲ海沿岸のリゾート地で「イージー」キャブとしてその名をとどろかせているそうです。
彼女たちは小麦色で黒髪に黒い瞳のラテン系・アラブ系に弱いそうです。
この(みかこさん名付ける)「ホワイト・キャブ」たちは、若くない方もいるのだとか。
その中には英国の夫と子供を捨て、移住し、結婚する人もいるのだそう。
少なくとも日本女性、それも40過ぎ、が金髪碧眼やブラックに夢中になって、今までの生活を捨てて逃避行などという話は聞いたことがありませんね。(私だけ?)
本に出てくる、40歳でトルコに遊びに行き、トルコ人の男性と恋に落ち、英国での結婚生活を精算して、トルコに移住した女性があっぱれです。
彼女曰く、「他人に何と言われようと幸福になったもん勝ちよね」
「日本も英国も、男がつまんないからだと思うわ」。
このバイタリティ、見習いたいですわ。

男と女のことを書いたので、ついでに書いておきます。
「love」は英国ではそれほど深い意味で使われていないようです。
平気で初めて会った人にも、「Thanks, love」って使うそう。
このloveの名詞形、おばあさんが使うかと思ったら、そうでもなく、若い男性も使うことがあるようです。
「I love you.」なんか、親兄弟間で平気で言ってますよね。
英国で異性に「love」と呼びかけられても、「I love you.」とか言われてもそんなに喜べないようです。
じゃあ、どの言葉を英国限定ですが、異性に言われたらいいのかというと、
「I fancy you」。
動詞の「fancy」って英国ではそういう意味だったのね。
まあ、これから私が英国に行って、素敵な男性とそういうことにはなりそうもありませんから、知っていても役に立たない言葉ですけど・・・。

題名の「ノー・フューチャー」ですが、未来がないということは希望がないということで、希望がない未来なんで生きる甲斐がないじゃないかと思う人がいるでしょう。
しかし、みかこさんはこう言っています。

「生きる甲斐がなくても生きているからこそ、人間ってのは偉いんじゃないだろうか。最後には各人が自業自得の十字架にかかって惨死するだけの人生。それを知っていながら、そこに一日一日近付いていることを知っていながら、それでも酒を飲んだり、エルヴィスで腰を振ったりしながら生きようとするからこそ、人間の生には意味がある。そういう意味だったら、わたしもまだ信じられる気がする」

コロナ禍の今、未来が全く見えません。
自暴自棄ならず、時には羽目を外して、私の人生、ノー・フューチャーと叫びながらもささやかに暮らしていく。
そんな人生、世捨て人のおばさんには良さそうです(笑)。

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