「顔たち、ところどころ」を観る2020/12/13



映画監督のアニエス・ヴァルダと写真家でアーティストのJRが旅にでて、フランスの田舎町を回り、そのところどころで作品を作っていきます。

アニエスは2019年3月に90歳でお亡くなりになっています。
この映画は2017年に作られたので、彼女は87歳。
とってもチャーミングなお方で、JRが33歳ですから、54歳の年の差ですね。
孫がおばあちゃんを優しく見守るという感じのところもありますが、アーティスト同士ですから、譲れるところと譲れないところがあり、意見を交わし合うところもあります。

二人がどんな作品を作ったかというと、旅で出会った人たちに協力してもらい、顔写真を撮り、拡大した写真を壁に貼っていくのです。


取り残された炭鉱労働者の村では炭鉱で働いていた人々の思い出話を聞き、元抗夫住宅の壁に昔の抗夫たちの写真を貼っていきます。
今でも抗夫住宅に住んでいるジェニーヌの家には彼女の写真を貼ります。


化学工場では午前のシフトと午後のシフトで働く人々の写真を撮り、通路の壁に写真を貼っていきます。
廃墟になった住居跡では近隣に住む人々に集まってもらい彼らの写真を撮り、住居跡に貼っていきます。
ある町ではウエイトレスの人にモデルを頼んで、日傘をさした可愛らしい写真を撮り貼りました。町の見所になりますね。


山羊の角を切らずに育てることを信条にしている養牧者のところでは山羊の写真を貼ります。
山羊は喧嘩をするので、普通は怪我をしないように角を切るのだそうです。

地震が来た時のためにわざと落とした浜辺のトーチカには、どの写真を貼るかで意見を戦わせます。


浜辺で貼った写真は嵐が来たため、次の日にはなくなっていました。

時にはJRの100歳のおばあさんに会いにいきます。
JRがサングラスを決して外さないのが、アニエスは気になっています。

ル・アーブルでは港湾で働いている人の3人の妻たちの写真をコンテナに貼り付けました。
タンクローリー(?)にはアニエスのつま先と目・・・。
そうそう、ルーブル美術館。楽しそうでした。(映画を観たらわかります)

この旅の目的を聞かれるとアニエスはこう言っています。

「目的は想像力かしら。JRと私は自由な発想から物事を想像し、問いかける。
想像力とは人と関わるものだから、皆と写真を撮るの。そうすればあなたと交流し奇抜な発想を実現できる。その楽しさを分かち合いたいの」

観ている私までどんな作品ができるのかワクワクしてしまいます。

最後にアニエスが会いに行ったのは誰?ゴダール?
お亡くなりになっていると思っていましたが、生きているのね(失礼)。
彼はまだまだ現役なのですね。
残念な結果になりましたが、その後のJRの優しさが身に染みました。

アニエスさんの映画は一つも観ていないと思っていたのですが、調べてみると『歌う女・歌わない女』を観ていました。(結構最近までフランスでは中絶は犯罪だったのです)
映画の印象からすると、彼女は年を取って丸くなったのかしら?素敵な年の取り方をしていますね。二色の髪が似合っています、笑。

とっても私好みの映画でした。