「パーソナル・ソング」を観る2021/01/10

昨年の11月にスペインのアルツハイマー病の元バレリーナが「白鳥の湖」を聞いて踊り出した動画が話題になっていましたね。
この映画はそれに関連するものなのかもしれません。
「パーソナル・ソング」は2014年に公開された、認知症の高齢者に彼らの思い出の曲を聴かせて、その音楽が高齢者たちの心や記憶にもたらす効果を3年間にかけて追ったドキュメンタリー映画です。


ダン・コーエンはIT企業に長年勤めていましたが、ソーシャルワーカーに転職し、6年前に介護施設を訪れてから人生が変わりました。
彼は認知症の人が「パーソナル・ソング(思い出の曲、思い入れのある曲、好きな曲、自分が輝いていた時にくちずさんでいた曲)」を聴けば、音楽の記憶と共に何か思い出すのではないかと思い、iPodで音楽を聴かせることを始めました。
驚くべきことに、彼らの過去の記憶やその人の本来の人格がよみがえってきたのです。

90歳の女性は「どんな少女だった」と聞かれ、「思い出せない」と言っていたのに、ルイ・アームストロングの「聖者の行進」を聞くと、次々と昔のことを思い出し、話し始めました。
94歳のヘイリーは全く話せなかったのに、歌を聴くと歌い出しました。
ギルは施設に閉じ込められていることに怒りが沸き起こり、混乱することが多かったのですが、キャロル・キングの歌を聴くと笑顔を見せ、落ち着いてきました。
躁鬱病のデニースはシューベルトの「アベ・マリア」を聞くと2年間使っていた歩行器を手放し、踊り出しました。
どのような間隔で何回聴かせたのかはわかりませんが、パーソナル・ソングを聴くことは認知症に多少の効き目があるようです。

アメリカでは約500万人の認知症患者がいて、施設で無気力に暮らしています。彼らは施設では機械のような生き方が求められ、社会から排除されています。
彼らの「パーソナル・ソング」を見つけ、iPodに入れ聞かせると、彼らは生き生きとした表情になり、失われた人生を取り戻し、人生の喜びを見いだしていきます。
この試みを受け入れてくれた老人ホームは最初は4件でしたが、助成金をもらい3年間で56の老人ホームで行われるようになったそうです。
他の施設でも行うには財源が不足していますが、コーエンは今後160万人の患者の生活を向上させることを目標に活動していくそうです。(2014年頃)

カント曰く、「”音楽”は目覚めの芸術」。

老人ホームなどで童謡とかを歌わせているのは意味のあることなのですね。
私なんかは日本の歌よりも外国の歌の方が好きなので、老人ホームに入っても歌の時間はパスしますわ、笑。
iPodに好きな音楽を入れていますから、それを大事にとっておけば、「パーソナル・ソング」として使えますね。
年を取ってからというのではなく、今から聴いていれば認知症になるのが遅くなるということはないかしら?

認知症ねっとに認知症予防法「パーソナルソング・メソッド」というのが載っていました。ツモリレコード株式会社が商標登録したそうですが、こういうのって商売になるんですね。

年を取るとおしまいというのではなく、何歳になっても人間には限りない可能性があるということを気づかせてくれた映画です。
もしあなたに高齢の親がいるなら、パーソナル・ソングを探して、聴かせてあげてください。貴重な話しが聞けるかもしれません。