「凪待ち」を観る2021/04/07

稲垣吾郎の「半世界」よりも香取慎吾の「凪待ち」の方が期待以上でした。
こんなこと言ってもどうしようもないのですが、慎吾は声が損してますね。
可愛らしい声なのでもっと低いしぶい声だったら…と思ったりしますが、変えることはできませんからね。


ポスターを見ずに観たので、特に問題なかったのですが、他の人たちも言っていますが、キャッチフレーズが何故「誰がころしたのか?なぜ殺したのか?」なのでしょうか?何か深い意味があるのかしら?
(ネタバレあり)

木野本郁男は一緒に暮らしている昆野亜弓の故郷石巻へ移り住むことになります。
仕事も首になったし、亜弓の漁師をしている父親の勝美が癌でステージⅣだし…。
郁男は亜弓の娘の美波とは仲がよく、慕われています。

郁男は印刷会社に勤めていました。同僚でギャンブル仲間の渡辺は気が弱く、後輩に嫌がらせを受けているのを何度も郁男が助けていました。
会社を辞めた日、渡辺に自転車をやり、競輪は今日で止めるという郁男。

石巻の実家に着くと、知り合いの小野寺が家にいて、勝美の世話をしてくれていました。
父の勝美は病気でもあるし、船を売って引退するように言われても、頑なに船で海に行くのを止めません。

ギャンブルを止めると言った郁男ですが、入社した印刷会社の同僚が競輪の賭けをしているのを見て、ヤクザが経営するノミ屋を紹介してもらい、またギャンブルに手を出してしまいます。
飲み屋に行くと、中学校の教師だという男が話しかけてきて、しつこく亜弓と暮らし始めたのはいつかと聞いてきます。後でわかったのですが、彼は亜弓の元DV夫の村上で、新しい嫁が妊娠しているので、美波の養育費を出したくないようです。

美波は石巻から川崎に転校した時に、「放射能がうつる」と言っていじめられ、不登校になりました。
石巻では定時制高校に通うことになりますが、そこで同じ小学校に通っていた翔太と出会い、仲良くなります。

ある日、亜弓が美波が学校で吸おうとする翔太から取り上げたタバコを見つけ、喧嘩が始まり、怒った美波は家を飛び出してしまいます。
美波の居場所がわからず、電話も通じず、亜弓は心配し、探し周ります。
郁男は友だちとどこかにいるのだから、心配することはないと言いますが、亜弓は自分の子どもじゃないから心配しないんでしょ、あなたは美波を甘やかしているなどと言い出し、口喧嘩になります。怒った郁男は亜弓を車から降ろしてしまいます。
その後、郁男も美波を探し周り、無事に彼女を見つけますが、美波が亜弓に電話をすると、見知らぬ人が電話に出ます。
亜弓は首を絞められ、殺されていたのです。

亜弓が亡くなり、美波の面倒を誰がみるかが問題になります。
木野本とは籍が入っていないので、赤の他人なので一緒には暮らせない。実の父親が引き取ってもいいと言っていると言う小野寺。

自分のせいで亜弓が死んだと思っている美波に郁男はあの時のことを話します。
美波は彼女が苦しんでいたのを知りながらも黙っていたと郁男を怒り、家から追い出します。

会社で働いている郁男のところに警察が来て、郁男を容疑者扱いします。
それからしばらくして郁男は社長に呼ばれます。
同僚にギャンブルを教えた、会社の金をお前が盗っているのだろうなどと濡れ衣を着せられ、解雇を言い渡されます。その時、郁男の目から逃げようとする同僚の尾形に気づいた郁男は会社で大暴れをしてしまいます。

小野寺が郁男に会社の壊した機械代は立て替えたので、次の仕事が決まったら返してくれと言ってきます。そして当座の金まで貸してくれるのです。
彼が親切にしてくれるのを不審に思った郁男が何故かと尋ねると、「あんたは死んだ亜弓ちゃんの大切な人だから」と小野寺は答えます。

郁男は亜弓が死んでからもギャンブルを続けています。
次々と賭けては負け、とうとう、タネ銭を借りるまでになってしまいます。
果てには亜弓がいつか郁男と一緒に島に行こうと思って貯めていたお金まで使ってしまいます。
借金は200万を超すまでになります。

飲み潰れて寝ていた郁男のところに勝美がやってきます。
借金の肩代わりに明日から福島に行って除染の仕事をするという郁男を船に乗せ、勝美は津波で亡くなった妻の話をし、金を渡します。それは船を売った金で、これで身辺を綺麗にしろと言うのです。

金を返した郁男ですが、残りの金でまたギャンブルをします。
これが最後だと有り金全部を賭け、勝負をします。
勝った!と喜んだのもつかの間、ノミ屋たちが金を持ち、逃げていきます。
追いかけると、殴られ、証拠の紙は男の胃の中へ…。

もうどうにでもなれと自暴自棄になって、酔っ払って、お祭りをしている町を歩く郁男。肩がぶつかり、喧嘩になったところに小野寺がやってきて、郁男を助けます。郁男に「死んだら亜弓ちゃんが報われないだろ。もう一遍生まれ変わればいい。生きろ」という小野寺。

亜弓を殺した犯人が逮捕されます。
遺体が見つかった場所で拝む郁男と勝美、美波。
「俺のせいで美波が一人になった」という郁男に美波は「郁男のせいではない。私は郁男の重荷にはなりたくない」と言いますが、勝美は郁男に「償ってくれ。亜弓のことを本当に悪いと思うなら、美波の側にいてやってくれ」と頼みます。
しかし郁男は勝美と美波を裏切るのが怖いと、手紙を書き、出て行きます。
その時久しぶりに渡辺から電話が来ます。
競輪で勝ったから電話をくれたと思う郁男に、「俺に優しくしてくれたのは、いくちゃんだけだからなぁ」としみじみと言う渡辺。

次の日、電車で石巻から出ようという時、テレビのニュースに渡辺の姿が映っていました。
それを見た郁男の中の何かが壊れ、ノミ屋に押しかけ、店をメチャメチャに壊そうとしますが…。

ギャンブル依存症って恐ろしいですね。しちゃいけないと思っても、賭けた時の気持ちのいい興奮状態が忘れられず、賭けずにはいられなくなるんですね。
ホント、郁男はクソ野郎です。思わず、「止めなよ!」と叫ぶことが何回もありました。慎吾君(という年ではないけど)はそこのところ、よく演じていました。
ギャンブルに手を出さずにはいられない性のようなものが郁男にはあるんですね。彼の生育史に興味があります。たぶん母親からは愛情も与えられず、父親も彼と同じような感じだったのでしょうね。
こんな郁男を何故みんなが助けずにはいられないのかということが描かれていなかったのが、残念でした。
亜弓さんはそれほど町の人たちに信頼され愛されていたと言うことでしょうか。
彼女が愛した人だから、本当は良い奴なんだと思われたのでしょうか。
それとも郁男に人垂らしの何かがあったのでしょうか。

リリーさんは親切すぎて不気味な小野寺の役がお似合いで、彼はこんな役がはまり役なんですね。親切すぎる人ってなんか怖いですよね。
亜弓に色々としてやったのに、男を連れて帰ってきて…。恩を仇で返され、とうとうって感じですか?

惚れたのが、勝美親父さんです。
昔、色々と悪いことをやっていて奥さんに助けられたというし、お葬式に親分が来ていたので、何かあるなと思って観てたけど、やっぱりそうきましたかという感じです。上手くいきすぎ感はありますけどね。
どうしようもないダメダメ男である郁男ですがが、自分もできたのだから、そして娘が愛した男だから再生できることを信じ、孫娘を託す男っぷりがいいです。
彼のために郁男に生き方を変えてほしいのですが、依存症っていうものはなかなか治らないからなぁ…。

その他、脇役の方々がよかったです。私は邦画を観ないので、知らない俳優さんばかりだったのが、なおよかったのかもしれませんが。
そうそう走りながらゲロ吐きまくるってのは、汚いけど現実味がありましたね、笑。

最後は光が見える終わり方でした。
話的に郁男はとことん落ちていってもよかったんですけど、笑。
人は何度でも再生できると思わせられる映画でした。石巻の海が印象的です。
ポスター、気にせず観てください。意外といい映画ですよ。