「ブルックリン」を観る2021/04/29

主演のシアーシャ・ローナンは『ストーリー・オブ・マイライフ』のジョー役の人です。NYで産まれたのですが、両親がアイルランド人で、子どもの頃アイルランドで暮らしていたそうです。
この映画にピッタリな生い立ちですね。


(ネタバレあり)
1951年、アイルランドの田舎町のミス・ケリーの食料雑貨店で働くエイリシュ・レイシーは、未来へ何の展望を持てずにいました。
ミス・ケリーは意地悪女で、エイリシュたちをこき使い、どんなに店が混んでいようが金持ちを優先するような人でした。
姉のローズはそんな妹にアメリカで働くというプレゼントを与えてくれました。
アメリカに行くことをミス・ケリーに告げると、その場で首にされます。行くまで働いていたかったのに…。
彼女は姉のローズのことを可哀想、お母さんの面倒をみなければならなくて、彼女の人生は終わりだなどと言うのです。(ホント、クソ女です)

アメリカには船で行きます。
船に乗るのが初めてのエイリシュは時化がどんななのか知らないので、食事をしてしまいます。案の定、船が揺れるので吐き気がこみ上げてきますが、トイレに籠もる迷惑な人がいたので、しかたなくバケツに吐かなければなりませんでした。
同じ船室の女性が親切にも鍵をかけてトイレを使えるようにしてくれました。
アメリカに上陸する時には、服装やメーク、態度など上陸するときの心得を教えてくれました。

エイリシュはNYのブルックリンの口やかましいミス・キーオのところで寮生活をしながら、デパートで働き始めます。
都会に気後れしたのか自分に自信が持てず、いつもビクビクしているエイリシュ。お客さんとも上手く話ができないので、上司に注意されてしまいます。
ホームシックにかかってしまったのです。
それに気づいた上司が世話役のフラット神父を呼んでくれます。
エイリシュは彼の勧めで、ブルックリン大学の夜間クラスの会計士コースで学べることになります。篤志家が1学期分の授業料を払ってくれるというのです。
授業で学ぶうちにだんだんと自信を取り戻していくエイリシュでした。

クリスマスにエイリシュは、アイルランドからアメリカに渡って50年以上が経ち、ホームレスになった老人たちに食事を配るボランティアをします。
彼らはアメリカでトンネルを掘ったり、橋や高速道路をつくったりする仕事にかかわってきたのです。(アイルランドの歌が歌われます。帰りたくても帰れない故郷への思いの籠もった、この場面が切なくて涙が出てきます。)
寮に帰ると、ミス・キーオから一番いい部屋が空くので、そこをエイリシュが使うようにと言われます。

ドロレスという女の子が新しく寮に入って来ます。
彼女が教会のダンスに行きたいというので、エイリシュも一緒に行くことにします。(2人のお姉様たちは感じ悪いですわ。行かないと言ったのに、来るんですもの)
そのダンス会場で、エイリシュはイタリア人で配管工をしているトニーと出会います。トニーは下宿まで送ってくれ、別れる時にディナーに誘われます。(アレ、ドロレスは置いてきたの?)
やがてエイリシュはトニーと付き合うようになります。
仕事ではお客と話せるようになり、上司がびっくりして、何故かと聞いてくるまでになります。イタリア人男性と付き合っているというと、野球や母親の話をしないイタリア人男性は大当たりだと教えてくれます。(上司の方は美人で一見冷たそうに見えますが、優しいんです)

2人お姉様たちは、エイリシュがトニーの家で食事をすると聞くと、パスタの食べ方を教えてくれます。(本当は優しい人たちなんですね)
上司の女性もエイリシュがコニーアイランドに行くと聞くと、水着を選んでくれます。

そんなある日、仕事をしているエイリシュのところにフラット神父がやって来ます。姉のローズが亡くなり、明日埋葬されると言うのです。
トニーはアイルランドに帰るというエイリシュが戻って来ないのではないかと心配になり、ロングアイランドの土地を見せて、兄弟3人で建設会社をやるので、ここに住まないか、結婚してくれと言います。
二人は秘密裏に結ばれ、市役所で結婚します。

アイルランドに戻り、友人のナンシーと遊びに行くと、ジム・ファレルが来ていました。彼は裕福な家庭の男性で、ナンシーはアイルランドにいる間、楽しめばいいのよ、なんて感じです。
ところが母親はジムは狙い目だと、エイリシュにジムを強く勧めてきます。
ローズが亡くなったので、エイリシュを身近に置いておきたいのですね。
ローズが働いていたデイビスの店からローズの代わりに簿記の仕事をしてもらいたいと言われます。
ジムもナンシーの結婚式でダンスをしていると、NYには戻らないでここに残って欲しいと言い出します。
前にアイルランドにいた時とは違う状況です。
そんな時にエイリシュのところにミス・ケリーからの呼び出しが…。

アイルランドの生活はさぞ息苦しいでしょうねぇ。特に女性には。
仕事はないし、ミス・ケリーのような意地悪ババアはいるし、親からの期待はうざいし…笑。
そんなアイルランドの町よりもブルックリンの方が自由に出来ていいように私は思いますが、エイリシュがどちらを選んだのかは映画を観てのお楽しみに。

学校では歴史をあまり面白く思わなかったので、勉強しませんでしたが、映画をより深く理解するためには歴史は必須だと思うこの頃です。
特にこの映画ではアイルランド移民とアメリカの歴史が関わっていますものね。

クリスマスで歌われる歌はW.B.Yeatsの”Tales of Red Hanrahan"(『赤毛のハンラハンの物語』)の中の 'Casadh an tsúgáin' (「縄ない」)だそうです。
映画とこの歌に関するエッセイがありましたので、興味がある方は読んで観てください。歌詞と映画の場面が見られます。
歌だけ聴きたかったらアイリッシュ・グループのThe Gloamingの歌うこちら