コルム・トビーン 『ブルックリン』2021/06/08

映画『ブルックリン』の原作を読んでみました。
2009年に刊行されています。


1950年代、アイルランドには仕事がなく、多くの人たちはイングランドに出稼ぎに行っていました。
田舎町エニスコーシーに住むアイリーシュの三人の兄達もそうでした。
アイリーシュ自身も仕事がなく、簿記と経理事務の勉強をしていました。
30歳になる姉のローズは事務の仕事につき、母と妹を経済的に支えながら、趣味のゴルフに勤しむ生活をしていました。

ある日、ケリーズ食料雑貨店の店主のミス・ケリーから呼びつけられます。
アイリーシュが数字に強いと聞き、日曜日だけ働いて欲しいというのです。
仕事がないので働くことにしますが、ミス・ケリーは人使いが荒い上に給料は安いのです。
特定のお客たちへの贔屓は日常的で、批判も物ともしません。
というのも日曜日の朝に開いている店は町ではここだけだからでした。

妹のことを思いやった姉は、アメリカに行かせることにします。
アメリカで百貨店に勤めることになりますが、大人しく消極的なアイリーシュはアメリカの生活に馴染むことができず、しばらくしてホームシックにかかってしまいます。
しかしフラッド神父のおかげでブルックリン・カレッジの夜間クラスで学べることになり、忙しい思いをしているうちにホームシックから立ち直ることができました。
それからしばらくして2回目に行った教区ホールのダンスの会で、イタリア系移民のトニーと出会い、付き合うことになります。

やっとアメリカでの生活に慣れた頃、ローズが急に亡くなってしまいます。
すぐにはアイルランドに戻らず、試験を受けて、資格が取れるのがわかってから、アイリーシュはアイルランドに一時帰国することにします。
トニーはアイリーシュが戻って来ないことを恐れ、結婚しようと言い出し、アイリーシュは承諾します。

久しぶりの母との生活は息がつまるようでした。
友人のナンシーと会うことにしますが、ナンシーはジョージと結婚することになっており、ジョージと行動を共にしています。
ジョージにはナンシーの妹に振られたばかりのジムがいつも着いて来ます。
昔ダンスパーティで会ったことのあるジムは愛想が悪く、悪い印象しかありませんでした。
しかししばらくジムと接するうちに、アイリーシュは彼に好意を持つようになります。

いつしかブルックリンでの生活は遠ざかり、夢の世界のように思えてきました。
アメリカに行く前の彼女は何者でもありませんでしたが、アメリカから帰って来た彼女には魅力があり、その魅力がすべてを変えたのです。
愛していると思っていたトニーも、愛していないということに気づきます。
このままアイルランドにいてもいいかもしれないと思い始めたアイリーシュ。
しかし、ミス・ケリーからの呼び出しが来ます。
そこでわかったのは、ミス・ケリーと下宿の家主のミセス・キーホーはいとこ同士で、彼女たちはアイリーシュが結婚したことを知っているということです。
アイリーシュは家に帰るとすぐに明後日の船の予約をします。

彼女はトニーのもとに戻るのでしょうか。それとも…。

映画と違うことが幾つかありましたが、それほど大きな影響はありません。
ローズは自分の病のことを知り、閉鎖的な町と母親の呪縛からアイリーシュを解放しようと思ったのかもしれませんね。
アイリーシュは流されやすく優柔不断な性格なので、後で後悔することになっています。
映画ではトニーのもとに帰りますが、小説ではどうなるのかは書いていません。
アイルランドとイタリアはカトリックですから、離婚は難しいでしょうね。
はたして彼女は自分の居場所を決められるのでしょうか。

映画と同様にクリスマスの場面が好きです。


今週のお取り寄せ。
銀座ハプスブルク・ファイルヒェンのオーストリアの伝統的なクッキー、テーベッカライ グロース。


柔らかいクッキーです。
紅茶でもコーヒーでも良いようです。

暑くなってきたので、兄はヘソ天をやり始めました。


まあ、大胆、笑。

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