谷村志穂 『セバット・ソング』2021/06/29

「セバット」って何か知っていますか。
谷村さんによると、「北海道の国定公園である大沼湖畔にある一つの場所の、昔からの名。アイヌの人たちが「狭い場所」という意味でつけたのではないか、と言われている」そうです。
そういえば大沼国定公園の中に白鳥セバットってありますね。
大沼公園には2019年の年末に行きましたが、ホテルに泊まって帰ってきただけだったので、白鳥セバットには行っていません。
今度は夏に行って、白鳥は観られないけど、大沼一周したいです。


藤城遼平は大沼湖畔にある2つの児童自立支援施設、駒ヶ岳学院の院長です。
学院にはさまざまな事情で親元を離れた少年少女たちが自立のために職員たちと暮らしていました。
藤城も家族と離れ、学院で暮らしています。

藤城の誕生日に理学療法士として働き始めた娘のゆきが学園にやって来ました。
学園の退院生の摩耶がパパリン(藤城のこと)に捧げる歌を送ってきます。
ゆきはちょっと摩耶に嫉妬します。
家に帰ってからYouTubeで摩耶の歌う姿を見て、ゆきはライブハウスに歌を聞きにいくことにします。
ライブの後、同僚に絡まれているゆきを摩耶の兄の拓弥が助けてくれ、そのことをきっかけに摩耶と話すことができました。

摩耶と拓弥は奈良県に生まれました。
母が男出入りの激しい人で、七人の兄弟姉妹がいるのですが、それぞれの父親がどこからどこまでが誰なのか、兄弟の中でもはっきしりしていません。
小学校の頃、北海道出身の男と暮らし始めましたが、その男は他の男たちと同じく「クズ」そのもので、暴力をふるい、摩耶の体に触ろうとまでしたのです。
そのために拓弥も摩耶も家にはできるだけ近付かないようにし、不良と付き合い、シンナーにも手を出すようになり、何度も補導されます。
中学校に進むと義父の故郷の北海道に引越すことになります。

北海道に来てからしばらくしたある日、酔った父親が暴力をふるい始め、拓弥と摩耶は着の身着のまま家を出ます。
薬局で休ませてもらい、児童相談所に電話をかけ、自分たちから少年院に入れてくれと頼みました。
児童相談所と親の話し合いにより、二人はそれぞれ児童自立支援施設へ入ることになったのです。

最初、摩耶は荒れていました。暴言は吐くし、つまらないと思った作業はやらないし、藤城のところに押しかけてくるし…。
しかし唄を教え始めると、彼女は変っていきます。

ゆきは摩耶の歌う「鳥たちのセバット」に魅せられました。
それからライブがあるたびに聞きに行こうとしますが、ゆきが藤城の娘であることを知った摩耶はゆきが来るのを嫌がるようになります。
そのため拓弥とゆきは連絡を取り合うようになり、いつしか付き合い始めます。
そして…。

児童自立支援施設の暮らしやそこで暮らしている少年や少女の生い立ちなどが書かれているので、参考になります。
でも人物描写が稚拙で、自然描写はいいだけに、残念です。

七飯町大沼湖畔にある大沼学園がモデルとなっています。
「パパリンに送る愛羅武勇」と「I'm happy to meet U」という歌はYouTubeで聞くことができます。実際に自立支援施設の退院生が作ったそうです。


今週のおやつはカステラです。


普通のカステラではなくて抹茶と小豆のカステラを買ってみました。
美味しいのですが、普通のカステラの方が好きかも。