道尾秀介 『雷神』2021/07/17



埼玉県で小料理屋を営む藤原幸人のところに一本の脅迫電話がかかってきます。
15年前に幸人の妻は事故で亡くなり、娘の夕美には事故の詳細は伏せられていました。
男は店にまで来て脅すので、幸人は娘と妹を連れて、どこか遠くへ行こうと思います。
写真を学んでいる夕美は父に尊敬する写真家の一枚の写真を見せ、その写真が撮られた場所に行きたいと言います。
それは三十年前に一家で逃げ出した村、新潟県羽田上村で写されたものでした…。

三十一年前、幸人の母は不審な死を遂げます。
その一年後、村の伝統祭”神鳴講”の日に、幸人と姉は雷に打たれ、毒殺事件が起こり、父が犯人だと疑われたのでした。

幸人たち三人は名を偽り、祭を取材に来たと思わせ、羽田上村へ潜入し、三十年前のことを村人たちに聞いて回ります。
はたして母の死の真相は何か、そして父は本当に罪を犯したのか…。

閉鎖的な村故、最初の罪が明かされず、そのため次の罪が犯され、そして三十年後も…。
無垢は一見よさそうに見えますが、無垢故に悲劇を生むこともあるのです。
はたして三十年後の悲劇は避けられなかったのでしょうか。

道尾さんの本を読むのは初めてだと思いますが、なかなか面白かったです。
『神』シリーズは他に『龍神の雨』と『風神の手』があるそうなので、読んでみたいと思います。