畠中恵 『もういちど』2021/09/01

「しゃばけ」シリーズの20周年、第20作目の作品です。


このシリーズの表紙絵が好きです。

江戸はいつになく雨が降らず、季節外れの、夏のように暑い日が続いていました。
廻船問屋兼薬種問屋、長崎屋ではいつものように若だんなが体を壊さないようにしています。
それでも若だんなが倒れてしまったので、急遽転地することになります。
色々と考えて、場所は根岸の寮。
ところが雨が降らないのであちこちの水神宮で一斉に雨乞いの祈祷をやっちゃったもんだから龍神たちが降臨してしまい、その数は一頭二頭などというかわいいもんじゃなく、河童さえも恐ろしがる数になっていました。
若だんなは病弱ですから、歩いて行けないので、船で根岸まで行くしかありません。そのため禰々子に龍神への仲立ちを頼み、隅田川を船で通らせて貰うことにします。
しかし、お供えの酒を飲み酔っ払った龍神たちが、隅田川の水をかき回して、長崎屋の船をひっくり返したので、若だんなは川に落ちてしまいます。
ちょうどその時、天の星の代替わりで、光を浴びた若だんなは、なんと赤子になってしまいました。

赤子になった若だんなは不思議なことに健康です。
丈夫な体で今まで経験したことのないことをします。
友だちができたり、剣術を習ったり、冒険をして叱られたり…。
よかったですねぇ。
ところがそんな若だんなに変らないところがありました。
次々と騒動を呼び込むところが、笑。

さて、若だんなはもとの姿に戻り、人並みの暮らしがこれからもできるのでしょうか。
そして騒動は上手く解決できたのでしょうか。

相変わらず鳴家たちは可愛いです。家に一匹は欲しいです。美味しい饅頭や団子をあげるから来てくれないかしら。
あ、いても見えないかぁ…。

このシリーズも安定した面白さです。
若だんなはこのままみんなに心配されながら生きていくのでしょうかね。
ここまでくれば、毎回同じパターンでも、ずっと続けてもらいたいです。どこまでもついていきますから、笑。
20巻ありますが、どの巻から読んでもこのシリーズのほっこり感が味わえますよ。

「彼が愛したケーキ職人」を観る2021/09/02

ドイツとイスラエルが制作した映画です。


(ネタバレあり)

トーマスはベルリンでカフェを営むケーキ職人です。
エルサレムからのビジネスマン・オーレンは出張のたびにトーマスのカフェに立ち寄っていました。
ある日、オーレンは息子の誕生日のプレゼントに何がいいか、トーマスに相談してきます。
トーマスは小型の鉄道模型を勧め、後で店まで連れて行ってあげることにします。

それから1年。オーレンは出張ごとにトーマスの部屋に泊まっていくようになっていました。
いつも土産としてトーマスの作ったクッキーを買って行きます。
その日もいつもと同じように「一ヶ月後に」と言って部屋を出て行ったオーレンでしたが、クッキーとカギを忘れていきました。
トーマスは何回もオーレンに電話をしますが、通じず、折り返しの電話もきません。一ヶ月経っても連絡はありません。
心配になったトーマスはオーレンのベルリンのオフィスを訪ねます。
そこで告げられたのは、オーレンはエルサレムで自動車事故を起こし、亡くなったということでした。

オーレンの妻のアナトはエルサレムでカフェを開いていました。
そのカフェにトーマスが現れ、ダブルエスプレッソとサンドイッチを頼みます。
彼はアナトにベルリンから来たことを話し、求人をしていないかと尋ねますが、ないと断られます。
それからトーマスはたびたびカフェを訪れるようになります。

そんなある日、アナトはトーマスに「まだ仕事を探している?」と聞いてきます。
週2、3回、午前中に働らかないかと言うのです。もちろんトーマスはその申し出に飛びつきます。
トーマスが皿洗いをしている時に、オーレンの兄のモティがやって来て、何もドイツ人を雇わなくてもいいだろうとアナトに言います。

アナトの息子・イタイの誕生日に、仕事の延長を頼まれます。
トーマスはイタイのためのビスケットを焼いていると、モティに見つかり、「非ユダヤ人はオーブンを使えない。知られたらコーシャが取り消しになり、店はやっていけない」と言われ、クッキーを捨てられます。
アナトにまで「頼まれたこと以外はやらないで」と言われ、落ち込むトーマス。
しかし翌日アナトにクッキーが美味しかったので、店に出したいと言われます。

イタイとも仲良くなり、店では彼の作るクッキーとケーキが評判になっていました。
あんなにトーマスを雇うことに反対していたモティですが、親切なところもあり、トーマスにアパートを紹介してくれます。
ユダヤ人専用でしたが彼のコネで特別に住めることになります。

そんな頃、アナトに家に食事に来ないかと誘われます。
ケーキを作り、持っていきましたが、イタイはケーキを食べようとはしません。
モティからトーマス(非ユダヤ人)の作ったものは食べるなと言われていたからです。
これ以降アナトはモティからの電話を無視するようになります。
電話に出ないので、会いにやってきたモティにアナトは言います。
息子に信仰を押しつけないでと。

義母(オーレンの母)が突然店にやって来ます。
息子はドイツ語が得意だったことを話し、息子を知っているかと聞かれますが、トーマスは知らないと答えます。
義母を家まで送ると、荷物を家の中まで運んでくれと言われ、帰る時に手料理を渡されます。
その後、安息日に来るようにと誘われ、家に行くと、オーレンの部屋まで見せてくれます。

カフェに30個のケーキの予約が入ります。
二人でケーキを作っていると、突然、アナトはトーマスにキスをしてきます。
最初はためらうトーマスでしたが…。

アナトと親しくなったトーマスは自分の天涯孤独の生い立ちを話します。
アナトは夫に好きな人のいるベルリンに移住すると告げられたことを話します。
その日、アナトに家を追い出されたオーレンは、ホテルに泊まろうとして事故にあったのでした。

やがてアナトは買い物のメモと夫の遺品の中にあるメモの筆跡が同じことに気づき、夫のスマートフォンの電源を入れ、残されたメッセージを聞きます…。


最初はトーマスの白い肌でぽっちゃり体型が嫌だったのですが、途中から全く気にならなくなりました。
愛する人の町に行って、彼の家庭にまで押し入るのも、普通なら嫌悪感を持ってもいいのに、全くそういうことはありませんでした。
孤独なトーマスがオーレンの死を受け入れるために必要な儀式のようなものだったと思えるからでしょうね。
祖母が亡くなってから天涯孤独になったトーマスにとってオーレンはたった一人の愛する人、家族でしたが、図らずもオーレンが死ぬことによりトーマスに新しい家族を残すことになり、これからそれがトーマスの生きる糧になっていくのかもしれません。そう願いたくなる映画でした。

とても好きな映画です。
絶対不倫反対…などという人にはお勧めしませんが、良作だと思います。

梶よう子 『噂を売る男 藤岡屋由蔵』2021/09/03



足袋商『中川屋』の軒下に筵をしき、古本を積み、古本商いをしている由蔵は、古本商いとは別に江戸市中の事件や噂などを覚え書き帳に記録し、種を留守居役や御番所の役人に売っています。今でいう情報屋です。

由蔵は上州藤岡宿で育ち、実家は生糸問屋でした。
父の失態で百姓たちの恨みをかい、四歳で父母を亡くします。
13歳で生糸問屋に奉公をし、19のときには番頭格まで出世しますが、父のことが彼の出世を妨げたため、20歳で由蔵は店を辞め、江戸に来たのです。
江戸では日本橋本石町に店を構える埼玉屋の寄子になり、大奥の広敷勤めをしました。この時に親しかった寄子の留吉が無実の罪を着せられた末に、自らの命を絶ってしまいます。
これらの経験から由蔵は「真実を見極めること」、「信用や信頼など、実態のないあやふやなものだ。いつでも覆し、裏切り、そっぽを向くことができる。信じていいのはじぶんだけだ」という思いを強くしていきます。

由蔵が種を売るようになったのにはあるきっかけがありました。
ある日、北町奉行所の定町廻同心の杉野与一郎に何をやっているのだと聞かれ、覚え書きを書いているというと、胡散臭い目で見られ、難癖をつけられました。
この時杉野に留吉のことを話し、遺した紙片を渡すと、杉野は納得し「人手が足りないから、噂や風聞は必要で、その種をくれた者には相応の銭を払う」、「やりたいように、様々な話を拾い集める」ようにと言って、金の入った紙包みを置いていきました。
この後、留吉の無念は晴らされました。

中川屋の娘でおきゃんなおきちは由蔵になつき、好き勝手にしています。
加賀前田家の聞番・佐古伊之助に輿入れしてきた溶姫の女中頭の弱みを探すように頼まれ、探してやると、それ以降、何故か伊之助は由蔵のところに入り浸ります。
常連の隠居は実は町年寄で、覚え書き帳に一枚かませろと言って、好きに使ってもよいとお供の勝平を置いていきます。
由蔵の周りには何故か人が集まってくるようです。

そんなところに天文方の高橋作左衛門がやってきて、自分の噂がないか確かめます。
彼はこの頃何者かに尾けられていて、身の危険を感じているというのですが…。

実在の人たちが沢山でてきて、話はどこに進むかと思ったら、なんとシーボルト事件に繋がっていきました。
由蔵は真実に辿り着けるのでしょうか。

情報が溢れている世の中ですが、何がデマで、何が真実かを見極めることの大切さを考えさせられるお話でした。

「BOSCH/ボッシュ」シーズン1を観る2021/09/05

マイクル・コナリーのミステリー小説が原作のドラマです。
原作は好きなので、どんな感じか心配でしたが、全く杞憂に終わりました。
コナリーが制作総指揮をしているということなので、原作とそれほどかけ離れていなかったです。
どんなもんかとエピソード1を見始めたのですが、面白くて最後まで観てしまい、朝から夕方までずっとボッシュ三昧でした、笑。

ボッシュの名前のヒエロニムスはオランダの画家からつけられました。
ボッシュは湾岸戦争とアフガニスタン紛争に特殊部隊員として従軍していました。
現在はロサンゼルス市警ハリウッド署の殺人課の刑事をしています。
離婚をしており、娘が一人います。


ボッシュは容疑者を殺害した件で裁判にかけられていました。

同じ頃、森の中で人間の骨が見つかります。犬が骨を持ってきたというのです。
森を調査してみると、他の骨とコイン、バックパックが見つかります。
骨は白人の12歳から13歳ぐらいの男の子のもので、日常的に虐待されていた跡がありました。

別の日、パトロールをしていた警官が盗難車と思われるバンを止め、中を見てみると、男の遺体がありました。男は屍姦されており、車の中には麻布とスタンガンがありました。
運転していたレイナード・ウェイツは自分はゲイではない、誰かが遺体を乗せたんだ、麻布もスタンガンも自分のものではないと言い張ります。
しかし車の中から7人のDNAが見つかります。
ウェイツは子どもの死体を森の中に埋めたのは自分で、すべての人を埋めた場所を教えるという条件で司法取引を求めます。
ウェイツを尋問したボッシュは彼はウソを言っていると確信しますが、次期市長選挙に出馬予定のオシェイ地方検事は、ウェイツのことを選挙戦で利用しようとし、現場検証をすると言い出します。

ボッシュはウェイツの事件の時に知り合った新米警官のブレイシャーと仲良くなります。同じ職場で上司と部下が関係を持つのは禁止されていますが…。

白骨死体はアーサー・ドラクロワという12歳の少年のものであることがわかります。
彼の姉に会いに行くと、彼は1994年にいなくなり、父親が失踪届を出したと言っていますが、届は出ていませんでした。
母親は夫の暴力がひどく、息子の失踪以前に家を出ていて、それ以降連絡を取っていないので、息子の失踪のことは全く知りませんでした。
当時夫は子どもには手を出していなかったと言います。

ウェイツの現場検証ではボッシュが指揮をすることになります。
オシェイはその様子をビデオで撮らせます。
ウェイツが躓き鼻血を出したので、オシェイはウェイツの拘束を緩めるように命令します。再び拘束しようとしたところ、ウェイツは警官のピストルを奪い、警官に発砲し、逃走します。
それからウェイツはボッシュに電話をしてきて、犯行を報せるようになります。

ボッシュの別れた妻は元FBI捜査官で、今は再婚して、ラスベガスで娘のマディと暮らしています。
ボッシュは彼らに会いにいき、妻に頼んでウェイツのことをプロファイルしてもらいます。

アーサーの父親のところに言って話を聞いていると、彼は自分がアーサーを殺したと言い出します。しかし殺して森の中に運ぶには一人では無理があります。
当時アーサーの友だちだったストークスに話を聞きに行きますが、警察だと知るとストークスは逃げだします。
彼を追い詰めたブレイシャーの拳銃が暴発し、ブレイシャーは負傷します。
警察を首になりたくない彼女はストークスが銃を撃ったと証言しますが、その場面を見ていたボッシュはストークスが撃っていないことを内部監査に証言します。
硝煙反応もなかったためストークスは釈放されます。
ボッシュの裏切りを知ったブレイシャーは激怒します。
ブレイシャーはあくまでも犯人たちは悪で自分は善。善は悪になにをしてもいいと思っているようです。
ボッシュは犯人を五人殺していますが、彼の中にはゆずれない一線があり、それがブレイシャーにはわからないようです。
ブレイシャーは上司に、辞めたくないのならボッシュに関係を迫られたと訴えろと言われます。

ウェイツは殺害を続けていきます。
ボッシュは彼を捕らえ、アーサー殺害の犯人を突きとめられるのでしょうか…。


同じような境遇で育ったボッシュとウェイツが、一方は悪と立ち向かう警官になり、一方はシリアルキラーになるなんて、皮肉な結果ですね。
ボッシュは母に愛された記憶があり、被害者の気持ちがわかりますし、いつか母の敵を取りたいと思って警官になったのでしょうね。
日本では警官になろうとすると、身内に犯罪者がいないか色々調べられると言われています。日本ならボッシュは警察官にはなれなかったでしょうね。アメリカは日本より警官の採用条件が甘いんでしょうか。

ウェイツはボッシュのことを尊敬しているとか言っていますが、ボッシュをおちょくっているみたいです。自分の方がボッシュよりも一枚上手だと思っているようです。
彼は引き取られた家庭では幸せだったと言っていますが、私には信じられません。ママが今で言う毒親な感じです。本当はそういうママから解放されたかったんじゃないかしら。だから屍姦でしか自分の欲求を満たせなかったんじゃない。
まともに女性と付き合ったこともなさそうです。

警察内の権力闘争や政治との関係がドロドロしています。
本部長になりたいからと、ビデオで脅し、選挙に協力しちゃうなんて、ちょっと信じられません。
シーズン2以降もこんな感じなのかしら?
本ではアービィングとボッシュは仲が悪かったような気がするのですが。私の記憶違いかしら…。

ボッシュの家が素敵です。見晴らしがよく、インテリアもスタイリッシュです。
どうも映画のお金で建てたらしいです。うらやましいです。
実際にこの家があるそうです。誰が住んでいるのかしら。
警官の給料ってそんなによくないはずなのに、相棒のジェリーは服装にお金をかけています。どこからそんなお金が出てくるのか不思議です。

1シーズン、10話を通して複数の事件を追っていきます。
本よりドラマのボッシュの方がハンサムで頼れる感じです。
本は途中まで読んでいますが、続きをそのうちに読んでしまいますわ。
ドラマは一日2話ぐらい見たとしてもシーズン7まであるので、見終るまで結構時間がかかりそうです。

お勧めのドラマです。

「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」を観る2021/09/06

2014年の実話に基づくフランス映画。


始めからびっくりしました。
卒業したイスラム教徒の女の子が卒業証明書をもらいに学校に来たら、スカーフをしているので、スカーフを取らないと証明書は渡せないと事務員も校長も言うんです。
女の子は私は三年間我慢した、もう卒業したのだから、信仰のために従わないと言うんですが、規則だからと頑として受け付けないのです。
日本の学校なら、こういうことはないですよね。
他の国から来た子が信仰のためにスカーフを被らなければならないと言われたら、許可しますよね。
まあ大方日本人は宗教に興味がないですから、寛容ですよね。
フランスの公立学校では宗教教育は禁止されていますし、2004年にはビジャーブ(スカーフ)禁止の法律が制定され、2011年には公共の場で顔を覆うものを着用することを禁止する法律が施行されたそうです。(この法律は欧州全体に広がっているようです。イスラム教徒に対する色々なことがあるのでしょうけど…)
どうも顔を覆うと表情などがわからないことが嫌なのかもしれませんね。
マスクをしたくない人が多いのもこのためかも。
日本人にはわからない感覚ですね。

パリ校外のレオン・ブルム高校で歴史と地理を教える、教師歴20年のアンヌ・ゲゲンは新学期から落ちこぼれ学級を担当することになります。
生徒の国籍や人種、民族、文化的宗教的な背景は様々です。
イヤフォンやスカーフ、帽子をとりなさい、鞄を机の上からどけなさいなどと注意することから授業が始まります。
そんな生徒たちにゲゲン先生は私はつまらない授業はしないと宣言します。
私が生徒だったら、何をこのおばはんは大口叩いてんだと思いますわ。
授業では宗教画らしきものを見せ、生徒に気づいたことを自由に発言させてから、絵の中に潜むプロパガンダ的な面や異なる歴史認識等を教えていきます。

毅然とした態度のゲゲン先生は生徒の気持ちを掴んだようで、彼女の母親が亡くなり、代わりの先生がやって来た時の生徒の態度はひどかったです。
子どもというのは残酷なもので、敏感に自分たちが生き残るために必要な人を見分け、その人には媚び、どうでもいい人にはひどい態度を取るものです。
生徒たちは代わりの先生の話を全く聞かず、悪ふざけをして大騒ぎしちゃいます。
私なら泣いちゃうわ(ホントよ)。
他の授業でも、例えば数学の授業では、マネキュアは塗るわ(臭いわよね)、寝るわ、おしゃべりはするわ、痴話げんかを始めるわと好き勝手な行動をしています。
こういうクラスを教える先生たちに同情してしまいました。

こんな生徒たちですから、学校では問題になっています。
そこでゲゲン先生はクラスにある提案をします。
国が開催するレジスタンス運動と強制収容を扱うコンクールに参加することを。
もちろん生徒たちは反対します。
でもゲゲン先生はひるみません。
「文句ばかりいうのは笑われるのが怖いから、自分に自信がないからでしょう。二カ国語クラスなら喜んでやるわよ」と生徒たちの自尊心をくすぐります。

さて、このクラス、紆余曲折はありますが、どうなっていくのでしょうか。

映画の中で実際のアウシュビッツの生存者が実体験を話しています。
残念ながら映画撮影の後にお亡くなりになったそうです。
彼が映画の中で語っていた言葉を記しておきます。

「命と尊厳は戦って守らねばなりません。重要なのは人種差別と永遠に戦い続けることです。収容所にいた期間で友情の大切さと結束の重要さを学びました。私は神ではなく人間を信じています」

日本でもそうですが、戦争体験者が次々と亡くなり、次の世代に語り継ぐ人が少なくなっています。かれらの記録を残し、どうそれを活用していくのかを考えていかなければならないですね。
私が習った日本史は江戸時代の途中まででしたが、明治時代以降の歴史、特に第二次世界大戦前後の歴史を学びたかったと今更ながら思います。
今はどうなのでしょう。是非教えて欲しいと思います。

映画では一人の教師が生徒たちを変えていきます。教育にはこういう力があるのです。
特に学校の先生たちに観てもらいたい映画です。

西條奈加 『無暁の鈴』2021/09/07



久斎は下野国、宇都宮の名家に庶子として生まれ、母の実家で暮らしていました。
6歳で母を亡くし、垂水家に引き取られましたが、学問も剣術もできがよかったためか、義母には疎んじられ、腹違いの兄たちには虐げられていました。

そんなある日、兄たちが口にした言葉に母が辱めを受けたと思った久斎は兄たちを殴ってしまい、隣国の山奥にある西菅寺に預けられてしまいます。
しかし寺の生活も同じでした。人よりも覚えがいいことがあだとなり、周囲の嫉妬をかってしまったのです。
そんな久斎の唯一の潤いがしのの存在でした。
毎朝、沢での水汲みでしのと会うことが、いつしか久斎の喜びとなっていたのです。
それなのにそんな生活も長くは続きませんでした。
しのの父が亡くなり、葬式を出した日の夜に…。

寺から逃げ出した久斎は名を無暁とし、たまたま出逢った万吉に誘われ、江戸に行くことにします。
江戸に着き、万吉が望んだ吉原に行ったところ、男たちに難癖をつけられ、騒ぎを起こしてしまいます。
この時に出逢った荒隈に頼まれ死んだ遊女のために経を読んだことから、無暁と万吉はやくざの沖辰一家の世話になることになります。

やがて万吉は一家を抜けて堅気の仕事につこうと思い始めます。
一方無暁は自分の気持ちを持て余していました。そんな無暁に万吉は「おまえの欲しいものは、仏門にしかねえように思う」と言うのでした。
この話をしてから二日後、無暁は闇討ちに遭い、助けに来た万吉が殺されてしまいます。
万吉の仇を討つため、荒隈の乙蔵が手下を従えて薊野一家に殴り込みをかけます。
捕方に捕らえられた無暁たちは詮議にかけられ、人殺しを犯した無暁は八丈島への島流しの刑となります。

何も手に職のない無暁には八丈での暮らしはきついものでした。
持ってきた食料も尽き、働いて食い扶持を稼がなければならないのですが、人殺しで若くて体が大きいがために怖れられ、仕事にも滅多にありつけず、ありついたとしても野良仕事などやったことのない無暁は役に立たなかったのです。
終いには流人頭にも見放されてしまいます。
やがて夢を見ては叫び、周りに迷惑をかけるようになり、洞で寝るように言われます。
洞のある森を抜けていくと、西菅寺の裏山にあった『不帰の崖』と似た崖がありました。
毎日無暁は崖に通い、ひたすら経を唱え続けます…。

自然の雄大さと残酷さ、そしてその自然に愚弄される人間の卑小さを思う無暁の
辿り着いた先は、仏門でした。
できれば自分のために身を捧げるのではなく、生きて苦しむ民のために身を挺して欲しかったです。

西條さんの書いた無暁の生き様に圧倒されました。
お勧めの本です。

「BOSCH/ボッシュ」シーズン2を観る2021/09/09



シーズン2も面白くて、見出すと止まらなくなります。それでも三日に分けてみました。
いつも夫が仕事から帰るとすぐにお風呂に入るのですが、昨日はお風呂を入れるのを忘れてしまいました、笑。

上司を窓に叩きつけ停職中だったボッシュが復職します。
ボッシュがいたずらに引っかかったので殺人課のみんなは嬉しそうです。
このチームワークの良さもこのシリーズの楽しみの一つです。

エドガーとボッシュの代わりの相棒の男と三人で連続レイプ殺人の容疑者のところに話を聞きにいきます。
初っぱなからの逮捕で、休んでいてもボッシュの勘は衰えていません。

その頃、パトロール警官が違法駐車の車のトランクに死体が入っているのを見つけます。
死体はアンソニー・アレンというポルノ映画の制作者でした。
調べていくと、アレンがFBIの監視下に置かれていたことがわかります。
FBIは国家安全に関する件にアレンが絡んでいたというだけで詳しいことは教えてくれません。
アレンはアルメリア人で21歳の時に改名しており、ロシアのマフィアとも関係があり、会社を通して資金の洗浄をしていたようです。
彼の着ていたジャケットに男と女の手跡が付いていました。指紋がラスベガスにあるストリップ店の店長・ラッキー・ライコフと一致したというので、家宅捜査をすると、アレンを殺害したピストルが見つかります。
ライコフはラスベガスからロスへ移送されることになります。
ボッシュにアルメニア系マフィアの親玉マークスがライコフの身柄を引き渡すように言ってきます。
ボッシュが取引に応じようとしないので、マークスは元妻のエレノアと娘のマディを誘拐します。

副本部長アーヴィングの息子のジョージは悪徳警官の潜入捜査をしています。
父親のアーヴィングは現市長からも本部長の職をちらつかせられ、支持を求められます。

ボッシュのところに母親を殺害した男を知っているという電話がきます。
電話の相手は母と同じ売春婦をしていた老婦人で、余命がいくばくもないので、すぐに会いたいと言います。
ボッシュは彼女から話を聞き、当時のことを調べます。

(ちょっとネタバレあり)
日本にも悪徳警官がいますが、一応公務員なので、それほど給料は安くないのですが、アメリカは安月給なので、悪徳警官が多いのでしょうかね。
今回はアーヴィングと奥さんの悲しみが胸に迫りました。
アーヴィングに「あなたのせいよ」という奥さんの言葉が刺さります。
彼女は息子を危険な仕事に就かせた夫が許せないのです。アーヴィングにしたら、息子が出世したいがために希望したことですから、仕方がないという思いもあるのでしょうけど、奥さんはそうは思えないのですね。

元妻と娘をしばらくの間、ロサンゼルスの自宅に住まわせるボッシュの嬉しそうなこと。
元妻のために過去の記録を消させ、プロファイリングの仕事に戻れるようにするボッシュは彼女のことをまだ愛しているのですね。

ボッシュのお母さんを殺した犯人が判明しますが、遅すぎました。
大義のために、売春婦だからと軽んじられたことに、ボッシュと同様に怒りを覚えます。

銃社会のアメリカで警察官であるということは、命の危機と常に隣り合っているということです。
いろいろと批判がありますが、自分の命を守るため銃を撃ってしまうことが多いのも仕方がないんじゃないかと思ってしまいますが…。

シーズン3も楽しみです。


久しぶりの今週のおやつ。


台湾カステラです。
どっちが上かわからなかったので、適当に写真を撮ったのですが、これでいいのかしら?
日本のカステラとは違い、メレンゲを使っているので食感が軽く、一人でこれぐらいは食べられそうです。カロリーはどうなのかな?

岩木一麻 『がん消滅の罠 暗殺腫瘍』2021/09/10

イグ・ノーベル賞(人びとを笑わせ、考えさせた研究や業績に贈る賞)の動力学賞を日本人研究者が受賞しました。日本人が受賞するのは15年連続とか。
色々な研究があって、面白いですよね。
イグ・ノーベル賞の世界展」というのを福岡市でやっているようです。



『がん消滅の罠 完全寛解の謎』の続編です。

築地がんセンターの呼吸器内科医師・夏目典明のところに大手保険会社、大日本生命の調査部課長職の森川雄一が部下の水嶋瑠璃子を連れてやって来ます。
住宅ローンのがん団信を利用した保険金詐欺が相次いで起っているというのです。
約1億円の物件で住宅ローンを組んだあと、がんと診断されるケースが5件。
5件ともローンを組んでから1年以内にメラノーマに罹ったというのです。
がん団信の場合、余命診断は必要なく、特定の条件さえ満たせば、がんと診断されただけで未支払い分の住宅ローン支払い義務がなくなるのです。

そんな頃、埼玉県内では医師殺人事件が2件連続して起っていました。
殺された医師は代替医療に何らかの点で関係していました。

夏目のところに埼玉県警の刑事がやってきて、がんを人工的に発生させることができるかと聞いてきます。
ある国会議員に脅迫状が届き、その中で言うことを聞かないとがんで命を落とすことになると書いてあったと言うのです。
同じ時期に無色素性メラノーマが肺転移した患者がやってきます。
彼は健康食品会社を経営しており、国会議員と同じように脅迫を受けていたと言います。
それからすぐに国会議員が無色素性メラノーマに罹り、肺にも転移していることがわかります。
夏目はがんセンターの研究所に勤めている羽鳥悠馬の助けをかり、2人の無色素性メラノーマのDNA型鑑定をすることにします。
そしてわかったことは、2人のメラノーマは他人の細胞ががん化したものでした。

保険金詐欺と医師殺害、そして人工的がんの発生。
この3つがどう関係していくのでしょうか…。

本当にこういうことができるようになると、恐ろしいですね。
事件の黒幕は誰かは最初からわかってしまいますけど、笑。
「当たり前のことを、きちんとこなしている」いい医師である夏目がなんでいつも絶体絶命の危機に陥るのか。悪に染まらない夏目に嫉妬しているのかもね、笑。
前回のあの方が今後どう動くのか、ちょっと不気味です。
次作で暴れてくれる(たぶん)のが楽しみです。

おもちゃが好きです♡2021/09/11

雨の晴れ間に、久しぶりに二匹一緒にお散歩をしていると、いつもの香りがしてきました。そうです、キンモクセイです。


花はまだ咲いたばかりですが、匂いはするんですね。
急に暑くなりましたが、季節はもう秋に変わろうとしています。
昨年、今年と何もできなかったのに季節だけは過ぎていきます。


ちょっと不気味な葉の色の花がありました。
調べてみると、ムラサキゴテンというのだそうです。花言葉は「やさしい愛情」、「変わらぬ愛」。見かけからは想像もつきませんね。
(ちなみにキンモクセイの花言葉は「謙虚」、「気高い人」、「真実」、「陶酔」、「誘惑」だそうです。)

雨続きなので、弟は家で駆けずり回っています。
今回はボールの持って来いです。疲れるまでやり続けます。


口にくわえようとしても、大きいのでなかなかくわえられません。


たまにママの方を見ます。


楽しなぁ、という顔をしています。


一方、兄は気ままです。おもちゃやハンカチで遊ぶ時もあれば、気が乗らないのか、遊ぼうとはせずに床をかぎ回る時もあります。
今回はエビ天をくわえて離しません。ママの嫌いな取ってみろをやり始めました。


ずっとくわえたままで、手を出すと逃げていきます。


面倒なので、ほっておくと、弟が参入してきました。


後ろからついていき、様子をうかがっています。


「取れるもんなら取ってみろよ」と言っています。


見合っています。


取るかなっと思ったら、取りません。


「ぼく、お兄ちゃんが怖いので、エビは取りません」
今までだったら、ちゃっかりと兄のものを取っていたのに、最後まで取りませんでした。

おやつのボーロを見せても兄はエビを離しません。
部屋に入れてほっておくと、やっと離しました。


彼の中では お散歩>ご飯>チュール>おもちゃ>ボーロ という順位があるみたいです。

トリミング2021/09/12

一ヶ月ごとのトリミングに行ってきました。
新しいトリマーさんになって、犬たちは行くのを嫌がっていませんが、顔のトリミングが今までのトリマーさんたちと違って長いので、短くしてもらうことにしました。


犬はどうなのかわかりませんが、ママは目に毛がかかるのが気になるので、いつも長くなると切ります。


ママが写真を撮ると、ちゃんと耳が上がっているのに、今回も頂いた写真では耳が下がっています。


左耳の方が長く見えます。


ヨーキーは足の毛が長くカットしてあります。


相変わらず近くに寄るのが嫌みたいです、笑。


湿気のある暑さの中で歩いて行ったので、兄が疲れたようなので、途中から抱きました。
9歳になると体力も落ちてくるようです。

二匹ともに体重が3.4㎏でした。
弟は兄よりも動くのですが、7歳の中年になると、人間と同じように代謝が悪くなるのですね。
餌を兄よりも食べさせていたのですが、兄と同じにしましょうかね。