原田ひ香 『母親からの小包はなぜこんなにダサいのか』2021/10/26



題名に「その通り!」と言いたくなりますよね。
親元を離れて暮らしている人なら身に染みるお話、六話です。

私も大学から上京し、年に一回か二回ぐらいでしたが、母親からの小包が届いていました。
送ってもらって一番嬉しかったのが、じゃがいもです。
家は農家ではないので、お店から買って送ってもらっていました。
今では考えられませんが、昔のスーパーのじゃがいもは茹でると筋があり、美味しくなかったのです。
よく塩茹でしてバターをつけて食べていました。あ、そうそう、バターも北海道の「雪印バター」や、たまに「トラピストバター」などが入っていました。
ジンギスカンもありがたかったですね。私の好きなのはタレに漬けてある松尾ジンギスカンです。
食べ物と言えば、第二話にでてくる甘納豆入りのお赤飯も美味しいですよ。(いももちは記憶にないけど…)
お赤飯と言えば甘納豆が当たり前だったので、東京で小豆のお赤飯を見て驚きました。
それに納豆と言えば醤油バターだったのに、夫に嫌な顔をされました。
読んでいて顔をしかめた方、試して下さい。美味しいですよ。
北海道のソウルフードと言ってもいいぐらいです、笑。
もう小包は届くことはなく、今から思えば、なんでこんなの送ってくるのと思うこともありましたが、親の心子知らずとはよく言ったもので、今になるとありがたかったですね。

地元岩手第一主義の母親からの小包、キャリア志向の母親からの小包、実家からと偽った小包、農家からのお母さん小包、毎年送ってくる謎の羅臼昆布の小包、亡くなった母から届いた最後の小包。
登場人物たちにはそれぞれ家庭の事情があり、送られてくる小包に喜んだり、戸惑ったり、悪態ついたり…。
なんのことのない小包からこういう奥の深いお話ができるのですね。
読み終わると、ふと母親に電話をしたくなるかもしれません。是非電話をしてください。
子どもにダサいから何も送らなくてもいいと言われていても、送り続けてください。
いつか思いが届くかもしれません。

原田さんがなんで北海道のことを知っているのかと思ったら、旦那さんの転勤で帯広に住んだことがあるそうです。納得。

お勧めの一冊です。