西加奈子 『夜が明ける』2022/02/05

本屋大賞にノミネートされているということなので、読んでみました。
受賞作品を知りたい人はここを見てください。
私は『赤と青のエスキース』と『黒牢城』ぐらいしか読んでいません。
ここ三年ばかりの本屋大賞って、生きずらい人を描いたものが大賞を取っているので、この本も取る可能性がありますね。


俺は父が死ぬまで世の中にある貧困のことなんかよくわかっていなかった。
友だちになったアキのことなんか、これっぽっちも知らなかった…。

俺たちが出逢ったのは1998年、俺が15歳のとき。
父親の部屋にあったVHSで『男たちの朝』という映画を見て、俺はアキ・マケライネンンのことを知った。
アキに会ってすぐに、俺は「お前はアキ・マケライネンだよ!」と声をかけた。
アキは191㎝の大男。3、4人は殺して埋めてきたような風貌だった。
『男たちの朝』を見たアキは、自身のことをマケライネンだと名乗り始め、それからのアキは人気者になった。

高校2年生の時、俺の父が死んだ。父には借金があった。
保険金で払おうとするが、自死とみなされ、保険金は出なかった。
母は弁護士の中島さんに紹介された仕事についた。
母は俺に奨学金を借りて大学に行くことを勧めた。

高校を卒業してからアキは週七日ガソリンスタンドや清掃のアルバイトをしていた。俺も、大学に通いながらアルバイト生活を始めた。
学校で友だちを作る時間などなかった。
アキと互いのアルバイトの合間を縫って会った。
俳優になりたいというアキの希望を叶えるため、俺は『団員募集』の劇団に連絡をした。なかなか大変だったけど、やっと一つの劇団に入団がきまった。

就職活動が始まり、俺はマスコミに絞った。
そしてやっと採用通知が届いた。キー局の下請けをしている制作会社で、エントリーは200人で雇われたのが6人。
喜びもつかの間、仕事は限りなくブラックだった。

そんな頃、アキの母親が死んだ。
葬式でアキに会って以来、それから一度もアキとは会わなかった。

仕事で身を削り、精神的に追い詰められていく俺。
いつしか限界になり、会社に行けなくなる。
そんな時に同僚の森が現れ、渡されたのが、フィンランドからの荷物だった。
森は「苦しかったら、助けを求めろ」というメッセージを告げて去って行く。
荷物はロッテン・ニエミなる人物の手紙とアキのノートだった…。

最初から最後まで重い内容の本です。
これが日本社会の一面なのです。
そういえば、新聞で読んだのですが、「厚生労働省は虐待や貧困などで保護され、児童養護施設や里親の家庭で暮らす子どもや若者が支援を受けられる年齢の制限を撤廃する方針を固めた(読売新聞、2022年1月31日)」そうです。
今までは18歳になれば、即自立と、施設や里親家庭から追い出されていました。
今の若者が18歳で自立しろといわれても、そう簡単にはいかないですよね。
サポート体制を強化するとありますが、どうでしょう。ちゃんと支援ができるでしょうか。



世の中チョロいやという感じの弟犬。
彼の犬生は遊びが中心です。
遊び⇒ご飯⇒睡眠。なんと単純で素晴らしいのでしょうか。