S.J.ローザン 『南の子供たち』2022/05/25

八年ぶりの<リディア・チン&ビル・スミス>シリーズです。
好きなシリーズなので、何年経っても読むことができて嬉しいです。


NYで私立探偵をしているリディア・チンは母から話を聞いてびっくりした。
ミシシッピにいとこがいて(いとこと言っても中国人社会の「いとこ」は範囲がかなり広いらしい)、そのいとこが拘置所に入れられている。
パートナーのビル・スミスと共にミシシッピ・デルタに行って、即刻いとこを自由の身にするように命じられたのだ。
ミシシッピにいとこがいるなんて、聞いたことがない。
その上、驚くことに、ビルと、と言っても母は名前ではなく、「白いマントヒヒ」と言ったのだが、を連れていくようにとのこと。
お母さん、ビルのことを認めるようになったかしら?

リディアとビルはメンフィス空港からレンタカーでミシシッピ州クラークスデールに向かう。
いとこはジェファーソン・タム、二十三歳で、父親殺しの容疑で逮捕されたと言う。
リディアたちはまず最初に依頼主であるジェファーソンの大叔父、チャプテン・ピート・タムに会いに行く。彼は除隊した後、プロのギャンプラーをしていたらしい。
三人でジェファーソンに会いに行こうとすると、コアホマ郡保安官事務所のクルーザーがやって来て、ジェファーソンが脱走したことを告げられる。

ジェファーソンは一体どこにいるのか。そして彼は本当に父親を殺したのか。
リディアとビルはジェファーソンの行方を追うことにする。

詳しくは知らなかったアメリカにおける中国系移民の歴史がところどころに書かれており、事件に関わってきます。
「ペーパー・サン(paper son)」(この本の原題にもなっている)などという言葉も知りませんでした。
南部では中国人は黒人ではないからと許されることもあったとか。
差別問題は根強く残る複雑な問題ですね。

NY生まれのリディアと同様、南部の歴史や暮らし、食べ物などに興味を持ちました。そうそうビルは南部出身のアイルランド系アメリカ人です。アイルランド人移民の歴史も少しですが語られています。
もし南部に行くことがあったら、ミシシッピ川や大農園の豪邸を見てみたいわ。
ナマズのタコスって美味しいのかしら?
甘すぎるアイスティーは飲みたくないけど…etc.。
南部の時間の流れは北部よりもゆったりしている感じがします。

どうやら「時間がいくらでもあるというと思ったら大間違いだ」と気づいたリディアはビルとの関係を一歩進めるようにしたようです。
とは言っても、それを知ったお母さんがどうでるのか、次回が楽しみです。

このシリーズは面白いので、是非一巻目の『チャイナタウン』から読んでみてください。
この巻だけ読んでも問題はないですけどね。