「ちょこっと京都に住んでみた」を観る2022/05/11

京都には何年か前には毎年行っていました。
そろそろ行きたいとは思いますが、連休中の様子を見ると、人が多そうで躊躇してしまいます。
観光に行くのではなく、このドラマのヒロインのように、一時暮らしてみるのもよさそうですね。

このドラマは2019年の年末スペシャルドラマとしてテレビ大阪が作成し、第57回ギャラクシー賞テレビ部門奨励賞を受賞したみたいです。
今夏、連続ドラマになって放送されるそうです。


江藤佳奈は仕事を辞め、実家に帰り、ブラブラした生活をしていた。
ある日、母から京都に住む大叔父が怪我をしたので、京都に行って様子を見てきて欲しいと頼まれる。
大叔父の大賀茂は京都の町家に住んでいる。怪我は大したことがなかったが、佳奈はしばらく大叔父の家に世話になることにする。

毎日茂は佳奈にお使いを頼む。
初日は鰻の蒲焼き屋や油揚げ屋、七味屋などのお店での買い物。
佳奈は初めはスーパーに行けば一遍ですむのにと思うが、お店の人と話しながら買い物することが面白いことに気づく。

次の日には水を汲みに行く。お料理などにその汲み水を使うらしい。
佳奈は水が京都と密接な繋がりがあるのを知る。
夕食に茂は佳奈を自分のお気に入りの洋食屋に連れて行く。

三日目には骨董屋に金継ぎをした器を取りに行く。
茂に美味しい和菓子のお店を聞くが、彼は自分で探せと教えるのを断る。
「あんたには好きなもんを探す自由があるんや」
佳奈は自分の嗅覚でお店を探す楽しみを知る。

四日目、茂は鯖寿司を食べたいと言い出す。
佳奈は鯖寿司は嫌いだから自分の分はいらないと言ったのに、お腹が空いたので、いい景色を見ながら全部食べてしまう。
茂はそんな佳奈に怒りもせず、佳奈を外に連れ出す。
鴨川の見えるベンチで茂はコーヒーを入れる。
佳奈は仕事を辞めたことを茂に話す。人生に失敗しちゃったと言う佳奈に茂は自分のことを話す。
夜、角打ちの酒屋で飲んでいる人たちに誘われ、佳奈は一緒に飲む。

五日目、佳奈は東京に帰る。
茂に京都はどうだったかと聞かれ、佳奈は「ちょっと大人になったかも」と言う。

茂が佳奈に語る言葉がいいです。失意の佳奈を励まして欲しいと、佳奈の母が茂に頼んだのかもしれませんね。
茂は自分のことを中途半端と言います。結婚もしていないので子どももいない、仕事も三、四回変わった。
「あんたにしたらわしの人生失敗だらけやけど、わしはそんなん思ってへん」
「人生シンプルに生きる。何でもやったらいい。やってるうちにいろいろと好きなことが見つかり、好きなことをどんどん増やしていき、毎日生活すると人生楽しいだろ」

茂は実家にも自分の居場所がないという佳奈に、買って来た椅子を指し、あの椅子があんたの居場所だと言う。

「当たり前のことをいちいち言わんでよろしい」「知らんけどな」は茂の口癖。

同じテレビ大阪の制作した「名建築で昼食を」と似た、ドキュメンタリーパートとドラマパートを組み合わせたドラマです。
京都を一緒に歩いているようで、楽しかったです。
そうそう、100年でも老舗ではないとか、京都で戦争というと応仁の乱だというベタな京都あるあるが出てきましたが、京都の人は本当にそう思っているのかしら?

ドラマで出てきた鰻やフルーツサンド、レーズンサンド、麩菓子、エビフライとハンバーグ、鯖寿司etc.食べたいです。
佳奈が鯖寿司を食べている音羽川砂防ダムの景色がとっても綺麗で、一度行きたいと思いました。地図で見ると町からけっこう遠いんですが、自転車で行けたのかしら?
エコバッグの代わりに使っていたバッグが素敵でした。
京都のお店「Sans-Serif」の物で、ロンドンバスで実際に使われていた行き先案内標示と国産帆布を使って作ったバッグだそうです。

近くに公園のあるところに住みたいと思っていますが、お寺のある町もいいかもしれませんね。
そうそう近藤さんは京都生まれだそうです。どうりで京都弁が上手いはずです。
観光では知ることのできない京都の人々の暮らしが垣間見られるドラマです。
是非観てみて下さい。

伊吹亜門 『幻月と探偵』2022/05/12



1938年、満州の哈爾浜。
私立探偵をしている月寒三四郎のところに一人の男がやって来る。
男は甘粕正彦から月寒を紹介され、上司から月寒を連れてくるように云われたという。
尊大な男に月寒は意趣返しをするが、実は彼とは前に会っていたのだった。

二日後、新京の国務院で月寒は岸信介と会う。
彼曰く、彼の秘書である瀧山秀一が三日前に急逝した。解剖の結果、猛毒のリシンで毒殺されたようだ。彼は元陸軍中将・小柳津義稙の孫娘と婚約しており、前日に小柳津邸の晩餐会に出席していたので、その時にリシンを盛られた可能性がある。
月寒は真相究明に乗り出すことにする。

岸に紹介された小柳津義稙の孫娘・千代子によると当日晩餐会にいたのは七人。
月寒は小柳津邸に赴き、館に住んでいる参加者と使用人たちと話す。
瀧山と参加者との間に特に関係はなさそうだ。
しかし義植宛に拳銃の弾丸と『三つの大阳を覺えているか』と書かれた脅迫状が届いていたという。
瀧山は間違って殺されたのか?

しばらくすると今度は義植の義弟の雉鳩哲二郎が停電中に変死する。

私の中で満州というと何やら猥雑な雰囲気の深い闇がある国という感じです。
登場人物に歴史上の人がいて、それだけでも興味が持てます。
私は岸信介が満州にいたことがあるなんて知りませんでした。
日本史に疎いので、どこまでが史実でどこまでがフィクションか、私にははっきりとはわかりませんでした。
でも日本軍はそういうことをやっていそうだと思いました。
岸と何やら因縁がありそうな月寒なので、岸ともっと絡むと思いましたが、そうではなくてちょっと残念でした。
真相は、そんなことで人を殺すのか…という感じですが、笑。

当時の雰囲気を出すためか、漢字にルビが多いです。
読めるかなクイズをしてみましょうか。簡単なもの3つと地名2つです。

珈琲   (コーヒー)    
卓子   (テーブル)    
洋墨   (インク)
哈爾浜  (ハルピン)
松花江  (スンガリー)

地名は難しいですね。

月寒と一緒に満州を駆けまわっているようなミステリーです。
満州に興味があって、ルビ付き漢字が苦手じゃなければ読んでみてもいいかも。


<今日のわんこ>
散歩をして汗が出たのにそのままにしておいたため冷えたのか、ママは昨日から具合が悪いです。
そのため犬たちは散歩はせずに家の中で遊ばせました。


カモシカ君を追いかけ、疲れた弟犬。


アララ、横になってしまいました。

「浅田家!」を観る2022/05/13



ボーとしながら観るにはよさそうだと思い、「浅田家!」を観てみました。
三重県津市出身の写真家・浅田政志さんの写真集を原案に、実話に基づいて作られた映画だそうです。

浅田家の父の章はカメラが趣味で、年賀状に二人の息子に同じ服を着せ、ポーズを取らせた写真を載せていました。
政志の12歳の誕生日に、章は自分のカメラを贈りました。

高校を卒業した政志は大阪の写真専門学校に入りますが、学校はサボりまくり、そのせいで卒業するには、「もし一生であと一枚しか写真が撮れないとしたら」という写真を撮ることが条件でした。
彼が題材に選んだのが、自分の家族。
撮った写真が、10歳の時に主夫をしていた父が包丁を落として怪我をし、それを母に知らせようとした政志が玄関で転んで血を流し、騒ぎを聞きつけて2階から降りようとした兄が階段から転落し、三人一緒に母の働く病院で手当を受けた時の様子です。
この写真は学長賞を取り、政志は無事に卒業できました。

家に帰ってきた政志は何をするわけでもなく、パチプロになりブラブラと遊び歩いていました。
恋人の川上若菜はそんな政志に愛想を尽かし、東京で憧れのアパレルの仕事をするために津を出て行きました。
兄は政志のことを心配し、知り合いの会社の面接をセッティングしますが、政志はすっぽかします。
父は彼なりのやり方で政志を励まそうとします。
そんな父に何になりたかったのかと聞く政志。
消防士と答える父。
政志は本物の消防服と消防車を借り、家族に消防士の姿をさせて写真を撮ります。
それから母のために、極道妻を、兄のために、鈴鹿サーキットでレーサーを…。
政志は次々と家族にコスプレをさせて写真を撮ります。

手応えを感じ、今まで撮った写真を持って政志は東京に向かいます。
兄は政志に手作りの浅田家のアルバムを持たせます。
東京で転がり込んだのは、若菜のアパート。
カメラマンのアシスタントをしながら色々な出版社に行きますが、どこも相手にしてくれません。
そんな政志に若菜は個展をすることを提案します。

個展にたまたま来た赤々舎という小さな出版社の社長に気に入られ、政志はやっと写真集を出版できることになります。
しかし売れません。
自信を無くす政志でしたが、しばらくして日本写真界の芥川賞とも言われている「木村伊兵衛写真賞」受賞の知らせが届きます。
受賞式でも家族写真を撮ってしまう政志。

それからの政志は家族写真専門のカメラマンになります。
最初の家族が岩手県野津町の高原家です。
家族のことを聴き取り、どんなシチュエーションの写真を撮るのか決めます。
政志はそれからも次々と家族の写真を撮っていきます。

2011年3月11日。
政志は個展の打ち合わせで富山にいました。
4月。高原家のことが心配になった政志は野津町に行きます。
高原家の住居のあった場所にはガレキがあるだけ。
町役場に行きますが、何もわかりません。
そんな時に政志は一人の青年が写真を洗って干しているのを見かけます。
彼に声をかけ、手伝うことにします。
青年は小野と言い、親友が行方不明になっているそうです。

政志は父親の写真を探す少女・莉子に出逢います。
彼女は政志の写真集を見付け出してきて、見ています。
ある日、かつて政志たちに怒鳴り込んできた男性がやって来ます。
娘の遺体が見つかり、遺影になる写真を探していたのです。
政志たちは一緒に写真を探そうと思いますが、顔がわかりません。
卒業アルバムになら写真が載っているかもしれないと思いつきます。
政志たちの様子を見ていた莉子は、父親の写真も見つけて欲しいと言ってきます。
政志はそれは出来ないと断ります。
納得できない莉子は政志をかつて家があった場所に連れて行き、今度は家族写真を撮って欲しいと頼みます。
政志は断ります。
政志はシャッターを押せなくなっていたのです。

そんな頃、兄から連絡がきます。
父の72歳の誕生日に帰ってこいと…。

楽しい浅田家のお話かと思ったら、東日本大震災のことが出てきて、思わず居住まいを正しました。
震災の悲惨な状況を見て、シャッターを押せなくなった政志がシャッターを押せるようになるまでが見物です。
(でも父親の写真がない理由はすぐにわかりそうなのですが…)

普段何気なく撮っている写真の存在意義を考えさせられる映画でした。
この頃携帯で撮ってデジタルで保存しておくだけで、プリントにしていませんでしたが、気にいった写真をプリントしてアルバムに保存しておくと、何かあった時にいいんだということがわかりました。
何枚も選ぶと分厚くなるので、一月とか一年で一枚とか、何かの行事ごとに一枚とかにすれば問題なさそうです。
是非、家族アルバムを作ってみて下さい。

浅田家は毎年写真を撮り続けているそうです。
テーマは都道府県。
1年に1県ずつ行き、全国制覇を目指しています。
2022年で13県目だそうで、47県ありますから、制覇は遠いですね。
ホント、ノリのいい家族です、笑。

(12県目の兵庫県の写真はここ。13県目は茨城県で、写真はここ

読んだ本2022/05/14



雨の中、スーパーまで行く途中に薔薇が咲いていました。
雨にうたれると、頭がたれてしまうといいますが、ちゃんと上を向いていました。


まだ紫陽花が咲いていないと思っていたのですが、ある家の玄関先に紫陽花が咲いていました。鉢植えなので、花屋さんから買ってきたのかしら?
今年の梅雨は早いのでしょうか。

文庫本ですぐ読める本をまとめて紹介します。


小路幸也 『テレビじゃん!』
大人気バンド・ザ・トレインズが毎週土曜日夜8時に冠番組「土曜だ!バンバンバン!」をやることになります。
19歳のボーヤ・チャコは忙しい仕事の合間、テレビ業界で起こる事件や謎を解き、ザ・トレインズのメンバーの出来事がスキャンダルにならないように頑張ります。

読んでいくと、アレ、これってザ・ドリフターズの「8時だよ!全員集合」のこと?チャコって志村けんでザ・ビーナッツ、キャンディーズなどが出てるじゃん。
「8時だよ!全員集合」って1969年10月から始まったのね…などとちょっと懐かしくなりました。
この人がイカリヤさんで、この人が…と思いながら読んでいきましたが、イメージと違う人もいて、まあ、お話ですから許します、笑。一番違ったのが、志村けんらしいチャコですからね。
ドリフターズを知っている人が読むと、おもしろさ倍増です。

高森美由紀 『柊先生の小さなキッチン』&『柊先生の小さなキッチン~雨のち晴れの林檎コンポート』
彼にフラれて、そのショックで食べられなくなった一葉。
彼女の部屋の隣に柊という家庭科の教師が引越してきて、ひょんなことから彼の作ったポトフを食べてから、だんだんと食べられるようになる。
そんな中、二階に引越して来たのが、作家の石原。どうも書けなくて逃げ出して来たらしい。そこに編集者の長谷川がやって来て…。

高齢の先生と若い女性のお話かと思って読んだら、違いました。
いつも思うのですが、お話の始まりは失恋。これは料理を扱ったお話のお決まりなんでしょうかね。
柊先生の気持ちに鈍感すぎる一葉が不自然とは思いますが、面白いキャラの石原と癒やしの犬・久太郎のおかげで読み進めていけました。

柏井壽 『鴨川食堂しあわせ』
思い出の食を探し出す探偵事務所にやってくるのは、様々な人々。
今回は、出て行った父との思い出の焼き鳥、女性からもらった直江津駅の駅弁、夫が最期に食べたイタリアン、川津で食べた母の巻き寿司、亡くなった恋人の作ったフィッシュアンドチップス、12歳の時に叔父の家で食べたすき焼きです。

流さんが作るお料理が美味しそうで、いつも食べたいと思います。
今回はこいしが仕事人らしくないなと思うところがありました。
そりゃあ、嫌な客が来ますよ。だからといってそれを表に出してはいけないでしょう。流さんもピシッと怒らなきゃ。
それに夫婦のことがわからないのは仕方ないのでしょうが、「お墓のなかの奥さんがショック受けて、化けてでてきはるんと違うやろか」なんて言い過ぎってもんです。
こいしのことは置いて置いて、様々な人の思い出の食に人生の機微を感じます。
このシリーズはどこから読んでもいいですよ。好きな料理から読んでいってもいいかも。

喜多みどり 『弁当屋さんのおもてなし しあわせ宅配編 4』
くま弁で宅配担当で働き初めてから2年。雪緒の人生が変わろうとしています。
くま弁での日々は彼女が新しい人生に旅立つために必要だったのです。
終わってしまうのは淋しいですが、次はどんなおもてなしがあるのか、楽しみに次のシリーズの始まりを待ちますわ。できればユウと小春の新婚時代も知りたいのですけど。
そうそうお話はくま弁の入っている建物の建て替え話から始まり熊さんの若かりし時のことが少しわかります。

坂井希久子 『江戸彩り見立て帖 朱に交われば』
『江戸彩り見立て帖 色にいでにけり』の続き。
京男・右近に押し切られ、呉服屋「塚田屋」で色見立てを始めたお彩。
様々なお客がやってくるが、問題は塚田屋の主人で右近の兄・刈安。自分は仕事もせずに遊び歩いているのに、右近を目の敵にして、塚田屋から追い出そうとしている。右近が連れてきたお彩にも次々と難題を持ちかけてくる。お彩もお彩、ついつい乗せられてしまい、新たな流行り色を作り出すこと、それができなければお彩は塚田屋から、右近は江戸から追い出すと刈安に約束させられてしまう。
さて、どうするのかお彩。

頑なで素直になれないお彩が、あまり好きになれません。呉服屋で働くのに、がさつな女性は駄目でしょ。それが育ちというものなのでしょうかね。
そんなお彩を雇った右近に何か策があるのでしょうが、まだ明らかになっていません。
色見立てがどう商いと結びついていくのかが楽しみなお話です。

風野真知雄 『潜入 味見方同心四 謎の伊賀忍者料理』
味見方同心の月浦魚之心は町の料理に絡む謎に挑みます。
今回は色気を売る<乳茶>の謎と女中が酒をこぼしてばかりいる料亭の謎、<伊賀忍者料理>の秘密、外神田が縄張りのやくざ<遠吠えの牙次>がご祝儀で配った紅白の梅干しの謎です。
その頃、上さまの寛永寺参拝が正式に決まり、魚之心は厨房の警戒を担当します。
果たして上さま毒殺は阻止できるのか。

とぼけたような謎が笑いを誘います。
兄・波之進の死の謎が未だに解けていないようなので、次なる展開が楽しみです。

<今日のわんこ>


パパは仕事で休日出勤。
まだ元気が足りないママなので、晴れても家で休んでいます。
犬はそんなママの様子がわからないので、遊んでくれと五月蠅いです。
遊び出すと、こんないい笑顔を浮かべる弟犬です。

柚木麻子 『ついでにジェントルメン』2022/05/15



なかなか痛快な七編の短編小説集。
かわいい表紙に惑わされてはいけませんよ。

「Come Come Kan!!」
何の間違いか、初めて書いた短編小説「そうめんデッドコースター」で文藝春秋社のオール讀物主宰の新人賞を取ってしまった二十五歳の原嶋覚子。
あれから三年経つというのに、処女作の出版はまだ。担当編集者・佐橋守からのダメだしで、書き直しは十一回目。
今日も書き直しを命じられ、腐って、「一からデビューしなおそうかなぁ」とつぶやくと、後ろから、「そんなの意味ないよ」との声が。
後ろには誰もいなく、あるのは菊池寛の銅像だけ…。
家に帰り、ラインをしようとすると、スマホがない。文藝春秋社のサロンに落としたのか。
次の日、彼氏から覚子のツイッターが荒れているとの連絡が来る。
サロンにスマホを取りに行くと…。

「渚ホテルで会いましょう」
1992年に恋愛小説『永遠の楽園』を書いたベストセラー作家・毛利は、小説の舞台のホテルを訪れる。
『永遠の楽園』は一斉を風靡し、賞を取り、二百部売れ、映画化ドラマ化し、社会現象とまで呼ばれた。
しかし、ホテルは当時とは様子が違い、支配人は『永遠の楽園』ブームでカップルで利用していた客が、今は孫を連れて来るようになったという。
毛利は小説のモデルとなった妻・季見子の姿をホテルのあちこちで見かけ…。

「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」
女性専用車両に乗り込んだ剛は、自分は女性の味方だと宣言する。
しかし女たちは彼に降りることを求める。
三ヶ月前、剛は間違えて女性専用車に乗り込んでしまい、その日のショックをSNSに書き、思いがけないほどの賛同者を得、今や剛はネット上のちょっとした有名人だ。
一人の小柄な老女が彼に大声で出て行くように求めた。
すると…。

「エルゴと不倫寿司」
会員制イタリアン創作寿司「SHOUYAmariage」は金の持った男性がリーチがかかった若い女性を連れて行く店。
そんな店に乳児をエルゴ紐で胸元にくくりつけた女がやって来る。
店のオーナーの母親と知り合いで、卒乳したらこのお鮨屋さんに寿司を食べにおいでと言われたと言うのだ。
女は次々と好き勝手に注文をして食べていく。
あまりの場違いさに唖然とするお客たちだったが…。

「立っている者は舅でも使え」
夫と離婚するため、地元に帰ってきた桃のところに、義父がやって来る。
連れ戻しに来たのだと思ったら、そうではなく、彼も家に帰りたくないというのだ。
それから何とも風変わりな義父との同居生活が始まる。
桃は義父を追い出そうと、家事を押しつけることにするが…。

「あしみじおじさん」
たまたま美容外科クリニックにあった「アルプスの少女ハイジ」を読んだ内田亜子は、珍しく本を読むのを楽しめた。
クリニックに勤めている友人に整形は止めて「アルプスの少女ハイジ」の入っている全集を買おうと思うと話すと、クリニックにある全集がただでもらえることになる。
本を読んで、亜子はお金のある老人たちの話し相手になり、スポンサーになってくれる人を見つけたいと考え、友だちにそのことを話す。
そうすると似たような仕事をしている叔母さんを紹介してくれた。
しかし…。

「アパート一階はカフェー」
大塚女子アパートメントは独身女性のためのアパート。食堂からエレベーター、水洗トイレ、共同浴場、シャワールームと何から何までそろっている。
そんなアパートメントの一階にできたカフェは食堂のメニューだけでは物足りない女性のためのカフェ。ちょっとしたお料理やとびきり美味しい珈琲があり、仕事の打ち合わせなどにも使える。
女性だけのアパートメントに何かと寄ってくる男たちがいる。
女をなんだと思っているのやら。
実はこのカフェの出資者は菊池寛。
それなのに、彼は一度もやっては来ない。何故なのか…。

こんな勘違い男っているよね。
自分は女を守るジェントルメンだと思っているんじゃない。
女はもっとしたたかだよ。
男性が読むと、嫌でしょうねぇ。
女性はガハハと大声をたてて笑いたくなるかも。

お勧めです。
ジェンダーに興味のある人もない人も読んでみて下さい。
お願いです。菊池寛については全く知らないので、誰か伝記小説を書いて下さいませ。

近所のお宅のお庭2022/05/16

楽しみな他人のお宅の庭見学。


紫陽花が少しずつ咲いています。
毒々しい色の花がありました。シャボテンの花みたいです。


子どもの手ぐらいの花です。


湿気が多いので、犬たちは水をあまり飲みません。

上橋菜穂子 『香君』2022/05/17



西カンタルの藩王だったケルアーンの孫のアイシャとミルチャは国を追われ、大崩渓谷とその一帯を支配している山地民<幽谷ノ民>に匿われ、ひっそりと暮らしていた。
しかし現在の西カンタル藩王ヂュークチはアイシャたちを脅威と見なし、捕らえ、処刑を求めた。
藩王国の視察官マシュウ=カシュガは策を練り、アイシャとミルチャを助ける。
ミルチャはじぃやと共にウマール帝都南部の農場で、アイシャはマシュウの母方の親族であると偽り<リアの菜園>で働くことになる。

ウマール帝国には、香りで万象を知るとされる香君という女性が、神郷から奇跡の稲、オアレ稲をもたらし、人々を飢餓から救ったという伝説がある。
活神<香君さま>は神去りされてから十三年後の<再来の年>に見つけ出される。
今の香君はリグダール藩王国の貴族の娘・オリエだ。

アイシャは臭覚がすぐれており、様々なものたちが発する<香りの声>を聞くことができる。
ある日、アイシャは<リアの菜園>で倒れてしまう。
夜中に菜園に出て、畑に植えてある物の植え替えをしていたことを問い詰められている最中だった。
このことを聞いたオリエはアイシャに興味を持ち、会いに行く。

アイシャは<リアの菜園>からユギノ山荘に移される。
山荘の暮らしにも慣れた頃に、アイシャはマシュウとオリエから<オアレ稲の秘密>を打ち明けられる。
その頃、オオヨマが発生していた。
ヨマはオアレ稲につくことがある唯一の害虫で、大量発生すると、人々が飢え、大惨事が起こる。
アイシャはマシュウとオリエに協力し、人々を救おうと奔走するが…。

何とも言えない壮大な物語です。
世の中には見える世界と見えない世界があり、ともすれば見えない世界は無視されがちだけど、すべては繋がっていて、影響し合っているのです。
アイシャは見えない世界が香りを通して見える人。
彼女の力はどうとでも使えるのですが、あくまでも彼女は自分の力を人々のために使います。
上橋さんの描くヒロインはいつも追われる(笑)、善き人ですね。

これからひょっとして食料危機がやって来るのではないかと心配な今にうってつけの内容です。
胃袋を掴む人が世界を掴む…のかな。
巻末に載っていた本をみると、上橋さんが一冊の本を書くためにどれだけ多くの本を読んでいるのかがわかります。

庭に生えた雑草を抜かなくちゃと思いますが、「痛い。抜かないでぇ~」なんて雑草が言うのかなと思うと、草取りができないわ(ウソ)。

上下二巻の厚い本ですが、面白いので、是非読んでみてください。
お勧めです。

オードリー・キーオン 『新米フロント係、支配人を憂う 歴史と秘密のホテル②』2022/05/19



アイヴィー・ニコルズは大学に通いながら、<ホテル一九一一>で主に夜勤のフロント係として働いている。
<ホテル一九一一>は20世紀初頭をコンセプトにしたホテルで、鉄道で財を成したモロー家が建てた屋敷をホテルに改装したもの。
アイヴィーの母はモロー家の出で、行方不明になっている。
彼女は母と祖先のことを知りたいという思いから、父親に内緒でホテルで働いている。
彼女がモロー家の末裔だと知っているのが、友人でホテルのコック・ジョージと支配人のラルフ・フィッグの二人だけ。

ある日、ホテルに墓石愛好会という変わった趣味を持つ人たちのグループが泊まりに来る。
アイヴィーは知らなかったのだが、ホテルの庭に立っている彫像は墓石だという。
その夜、ミスター・フィグはこっそりアイヴィーを庭に連れて行き、一つ一つ墓碑銘について教えてくれた。

次の日、ジョージがメイドのベアと親しくしているのを見たアイヴィーは、うっかり服の袖をコンロの火で燃やしてしまい、やけどをおう。
ジョージに病院に連れて行ってもらい、家に帰ると、父が見知らぬ女性といるのを見てしまう。
家で休もうとした時、<ホテル一九一一>で遺体が見つかったというニュースが…。
急いでホテルに行くと、死んだのは墓石愛好会のメンバーで大学教授のクライド・バローの恋人、レニー・ギャラハーだとわかる。
やってきた刑事は前回の事件で無能だとわかったベネット。
アイヴィーは一抹の不安を感じる。
案の定、支配人のミスター・フィグが容疑者として逮捕されてしまう。
殺されたレニーの部屋に行くにはフロントの前を通らなければならない。
フロントにいたミスター・フィグは不審な人物を見かけなかったという。
それだけの理由で…。

もはや警察に任せておけないと、ミスター・フィグの無実を信じるアイヴィーは独自の捜査を行うことにする。

昨年に続いてまたもや殺人事件が起こるなんて、このホテルは呪われているのかしら。
アイヴィーは心理学専攻なので、どうせなら犯罪心理学を学んで、プロファイラーになるといいかもwww。

意外な結末でした。
アイヴィーは<ホテル一九一一>で働き続けていけるのか。
そして母親の行方がわかるのか。
次が楽しみです。

一巻目よりも大分読みやすくなっています。
アイヴィーが精神的に安定したからでしょうか。
一巻目で読むのを止めようと思った人、再度挑戦してみてください。
今度は大丈夫、笑。


<今月のおやつ>
ダイエットのため、おやつの宅配は止めようとは思っていたのですが、ひもじいので頼んでしまいました。


カステラ生地のロールカステラ三種類。
カステラですから、生クリームは使っていないと思ったのです。
賞味期限が7月までなので、ゆっくり味わって食べます(たぶん・笑)。

紀 蔚然 『台北プライベートアイ』2022/05/20

初めて読む台湾のミステリーです。
図書館に予約しておいたら、今頃になってしまいました。


呉誠は劇作家で大学教授という身分を捨て、私立探偵になる。
五十歳を前に妻は彼を捨てて、家族のいるカナダに行ってしまった。
酔って仲間に罵詈雑言を浴びせ、翌日には自己嫌悪に陥り謝罪をしまくり、演劇界とは縁を切った。
母からは歎かれ、友人からは引き留められ、口々に勝手なことを言われた。
マンションを売り、うらぶれた臥龍街に引越し、私立探偵の看板を掲げて、名刺を印刷すれば、探偵のできあがりだ。

初めての依頼人がやって来た。
ある日を境に娘が父親を軽蔑した目で見るようになり、口をきかなくなった。その理由を探ってくれというのだ。
たまたま父親を付けている時に乗ったタクシーの運転手の王添来に助けられ、なんとか最初の仕事は解決できた。

その頃、近くで起きていた三件の連続殺人事件に興味を持った呉誠は、知り合いの警察官に話を聞く。
三名の被害者は全員が年齢の高い六張犁の住民というだけで、他には何も共通点がない。

しばらくして呉誠は警察署に呼び出され、任意で事情聴取を受ける。
監視カメラの映像からコピーした写真に、呉誠と殺された二人が公園内に座っている姿が写っていた。
それだけではない。三人目の被害者のヘルパーで、犯人に殴られ、意識を失っていた女性が目覚め、呉誠に殴られたと言ったのだ。
連続殺人事件の犯人ではないかと疑われた呉誠は、自ら犯人捜しをする羽目になってしまう。

一度しか行ったことのない台北ですが、読んでいて懐かしくなりました。
とにかく初めの方に呉誠の自分語りが延々と続き、面白いところもあるのですが、読むのがだんだんと面倒になり、本を閉じようかと思うほどでした。
主人公でメンタルをやられている人は総じて饒舌ですねぇ。
著者は演劇人なのねぇ~。納得。
そこで本を閉じずに我慢して読み進むと、呉誠が連続殺人事件の容疑者となった辺りから俄然面白くなります。
頑張ろう、笑。
一冊目は呉誠の紹介みたいなものですから、二冊目はもっと読みやすいと思いますよ(推測)。
二冊目の翻訳が待たれます。

そうそう、書かれているように、アジアで連続殺人事件が一番多いのが日本って本当かしら?

雨の日は…2022/05/21

みんなで散歩に行こうと思ったら、ザーと雨が降ってきました。
今日はお家で遊びましょう。
兄はいつものようにマイペースで、しばらくするとソファの上でくつろぎます。


ユニクロの毛布がお気に入りで、いつも舐めています。
しばらくすると、床の上の匂いを嗅いでいます。


弟はパパと遊びます。


引っ張りっこ。


持って来い。


真剣な目でパパを見ています。


走りすぎて、ハアハアしています。


トリミングでは何故か耳の後ろの毛が長くなってきています。
遊びの後はおやつの時間。


パパ、早くください。


食いしん坊の兄は遊ばなくても、おやつではガッツいています、笑。


この後、自由にさせておくと、早速弟が悪いことを始めたので、すぐに犬部屋に戻されました、笑。
一方、良い子の兄はママの膝の上でくつろいでいます。