小路幸也 『<銀の鰊亭>の御挨拶』&『ハロー・グッドバイ』2022/06/13



『<磯貝探偵事務所>からの御挨拶』の前の作品です。
なんとなく読んだことがあるような気がしますが、読み返してみました。

桂沢光は小樽の大学に進学することになり、母の実家の<青河邸>から大学に通うことにする。
<青河邸>では昨年火事があり、焼け跡から祖父母の遺体の他に身元不明の焼死体が二体見つかった。
その二体のうち一体に刃物で刺された傷があった。
その時、母の妹の文は大怪我をおい、記憶障害を起こしている。
唯一覚えていたのが、たった一人の甥っ子の名前、「光」だった。

文が退院し、料亭旅館<銀の鰊亭>を再開することになる。
光は母から頼まれ<銀の鰊亭>で、文と一緒に御挨拶をするというバイトをすることになる。
早速やってきたのが、常連で不動産会社を経営している篠崎と医者の小松、外食産業を経営している、遠い親戚の加原だった。
どうも彼らは何か目的があってやって来たようだ。

そんな頃、光は大学の正門を出たところで刑事の磯貝に話しかけられる。
彼は独自に<銀の鰊亭>の焼死体のことを調べていて、光に秘かに捜査協力をしてほしいというのだ。

二体の焼死体は誰で、なぜ祖父母と彼らは死ななければならなかったのか。
文は彼らの死と何らかの関係があるのか…。
光は磯貝と、そして文と共に謎を追っていく。


「東京バンドワゴンシリーズ」の第17弾目。今回は通常営業です。

いつものように堀田家の一日が始まります。
近所の田町家が取り壊され、増谷家と会沢家に生まれ変わろうとしています。
<バンドワゴン>の中にある<かふぇ あさん>は夜営業を始め、好評だったのですが、不思議な忘れ物が現れます。
<バンドワゴン>のワゴンに入れられていた文庫本が喫茶店の椅子の上に置いてあり、中に千円札が挟まれていたのです。
それも毎日一冊ずつ置いてあり、全部で五冊。
一体誰が、何のためにと不思議に思う堀田家のみんな。
他にも童話の謎があり、懐かしい人に会えます。

イギリスに行った藍子とマードック、そして池沢さんに転機が…。

登場人物が多くて、誰だっけと思うこともありますが、堀田家のみんなと会うのを
毎年の楽しみとしています。
また来年お会いしましょう。

前も言いましたが、どちらの本も本格的ミステリーではないですので間違ってよまないように、笑。
日本のコージー・ミステリーとして読んで下さいね。
小樽と谷中の雰囲気がいいです。また行きたくなりました。

ヨルン・リーエル・ホルスト 『刑事ヴィスティング 悪意 』2022/06/14

「警部ヴィスティング」シリーズの翻訳四作目で、「未解決事件四部作」の三作目となります。


二人の女性の暴行・殺人・死体遺棄の罪で禁固刑21年を言い渡されていたトム・ケルが、もう一人の女性の犯行を告白し、死体を遺棄した場所を自供する見返りとして世界一人道的だと言われているハルデン刑務所への移送を要求した。
未解決事件だったため、クリポスのアドリアン・スティレルがその事件の責任者となっていて、彼はヴィスティングの娘リーネをケル護送の撮影スタッフに起用した。
リーネは今回の記録ビデオをドキュメンタリー番組に使用する権利を確保しており、制作会社とも接触していた。
ケルが死体遺棄したという現場がラルヴィック警察の所轄区域内だったため、ヴィリアム・ヴィスティングたちも加わり、現場の警備をすることになる。
ところが現場に赴いた際にトム・ケルは手榴弾を爆発させ、逃亡してしまう。
トム・ケルの逃亡に関与したのが、共犯者のアザー・ワンではないかと思われた。

クリポスは刑務所を出る前にトム・ケルに発信器をふたつ仕込んでいた。
そのためトム・ケルがある別荘に潜んでいるとわかるが、別荘に突入するとトム・ケルの姿はなかった…。

トム・ケルはどこに消えたのか。
アザー・ワンは誰なのか。
ヴィスティングたちの地道な捜査が始まる。

今度のお話はアクション場面が多いです。
作者のホルストは実際にノルウェーで警官だったそうなので、現実味があります。
ヴィスティングは優秀なのですが、人に恨みをもたれやすく、また内部調査担当のタリュエ・ノールブー主任警部がやって来ます。
前にヴィスティングにこけにされたのがよほど頭にきたのか、今度は報復するために執拗にヴィスティングを陥れようとします。

リーネは父親と共に働きながらも、立場の違いから知ることができないことがあることに苛立ち、独自に調査をしていきます。
仲のいい親子でも、仕事が関係すると難しいですね。
彼女は危ういと前回書きましたが、今回はとても危ない目に会います。
娘もいるのですから、ジャーナリストとしての野心があるのでしょうけど、もう少し考えて行動して欲しいですわ。と言ってもリーネは聞く耳もたずですけど。
リーナはスティレルのことを意識しているみたいです。
これからスティレルとリーネの関係は進展していくのでしょうか。

次の未解決事件もこの三人が絡んでくるのでしょうか。
翻訳が待たれます。

女性が主人公の時代小説四冊2022/06/15

たまたま続けて読んだ本の主人公が女性だったので、一緒に紹介しちゃいます。


平谷美樹 『貸し物屋お庸謎解き帖 桜と長持』
江戸時代のレンタルショップのお話。
江戸時代の人たちは鍋や布団などの日用品は買わないで、「損料屋」から借りていました。

主人公の庸は貸し物屋・湊屋両国出店の店主をしている。
浅草新鳥越町の貸し物屋・湊屋本店の主、湊屋清五郎に惚れていて、普段は口が悪いが、彼の前ではしおらしい。
庸は物だけではなく、力も知恵も貸すと評判で、様々な厄介事や無理難題が持ち込まれる。
今回の怪しい借り物は、長持や遠眼鏡、猿の面、つぐら、歯がちびた下駄、膳と器。
それぞれに借り人の謎や秘密が隠れており、庸はそれらを明らかにしていく。

庸と清五郎の関わりがわからず、調べてみると、シリーズ物でした。
三冊出ているので、そこに書いてあるのでしょうね。
今回出版社が代わり、kindleで読めるようになりました。
お庸の荒い口調が嫌いですが、借主が借りた物をどう使うのか気になり、読み進んでいきました。

鷹井伶 『おとめ長屋 女やもめに花が咲く』
勤めていた小間物問屋が店を畳み、男のところに転がりこんだ千春だったが、しばらくすると男に部屋を追い出され、困っているとそこの大家に妾にならないかと言われ、口入屋が紹介された店に行くと、番頭が夜這いをしてきた。
なんて自分は男運が悪いんだろうと自棄になった千春が橋の上で悪態をついていると、お涼という女から話しかけられる。
お涼は蕎麦をご馳走してくれた上に、長屋まで紹介してくれ、千春は女だけが住む「おとめ長屋」に住むことになる。
大家はトメ婆。長屋の名前の「おとめ」は「乙女」ではなくて、トメの名前。
トメは長屋の管理のほかに小さな十九文屋(今の100円ショップみたいなもん)も営んでおり、仕事のない千春を雇ってくれた。
長屋の住人は大家のトメのほかに髪結のマキ、仕立屋のシズ、手習いを教える加恵、お涼、そして番犬のマル(もちろん雌)。
落ち着くところが決まり、千春も大丈夫かと思ったら、相変わらずいい男に弱い。
まだまだダメねぇ。

ちなみに江戸時代の一文は約20円というので、十九文は約400円ということで、
100円ショップではなく、400円ショップです。3COINSみたいなもんね。
千春には魅力がないけど、他の面々が面白そうなので、次も読むかも。

髙田在子 『しみしみがんもとお犬道中 まんぷく旅籠朝日屋』
シリーズの第三弾目。
旅籠「朝日屋」は宿泊客が少なく、今まででたったの2人。
料理屋としては毎日繁盛しているのに、なぜなのか。
それでも宿泊した人が宣伝してくれたおかげで、だんだんと泊まる人が増えてきた。
人手が足りないので、口入屋から仲居を紹介してもらったが、その女、とんでもない女だった。
次に雇ったのが、大店の不良娘で、どうかと思ったが、何とかなりそう。
そんな頃にやってきたのが、「おかげ犬」。
「おかげ犬」とは「事情があって参拝できない飼い主の代わりに、伊勢などへ詣でる犬」のことで、「代参犬」とも呼ばれている。
しばらく朝日屋で泊めてやることになるが…。

「おかげ犬」なんていたのですね。
どうやって犬が伊勢まで行くのかと思ったら、伊勢に行く近所の人に頼んで連れて行ってもらったりしたらしいです。
おかげ横丁のHPを見たら、「おかげ犬体験」なんていうのがありました。
是非愛犬に体験させてみて下さい。うちの犬たちは無理そうです、笑。

倉本由布 『いついつまでも 薫と芽依の事件帖』
シリーズの第三弾目。
十三歳になる札差の娘で岡っ引きの薫と、同心の娘で薫の下っ引きをする芽依のお話。
北町奉行所の見習い同心で芽依の兄である内藤三四郎から薫たちにもたらされたのは、日本橋本町にある薬酒問屋柳屋で毎日、真夜中に妙な音がするから、その正体を探るということと、酒を飲んで暴力を振るう父親から娘を匿って欲しいということ。
薫たちは探索にかかわらせてもらえないことが不満だったが、探索中に芽依が怪我をしてしまい、薫は悔いる。
そんな時にある老人から彼女たちのしていることは「岡っ引きごっこ」だと言われ、薫は腹立たしく思う。だが芽依のことを考えると、岡っ引きを辞めた方がいいのか…。
果たして二人の関係はどうなるのか。

題名を見て、今回で終わりかと思ったら、違いました。
薫はいつまでも成長しなくて、その代わりに芽依が大人になっていきます。
なんで薫が岡っ引きになりたいのか、未だに私はわかりません。
岡っ引きって危ない仕事ですよね。自分で自分の身を守れない十三歳の少女がやるものではないと思いますけど。
どうしてもやりたいのなら、自分の身を守る術を身に付けなさいと言いたいです。
まあ物語なので、仕方ないのでしょうがね。

四冊とも、それほどお勧めしません。
江戸時代の人たちの生活を知りたいのでしたら読んでもいいでしょう。
軽く読める時代小説です。

「ボッシュ:受け継がれるもの シーズン1」を観る2022/06/16

「Bosch」が「Bosch:Legacy」として帰ってきました。
シーズン2も撮影中だとのことです。


ハリー・ボッシュは警察を辞め、私立探偵となりました。
娘のマディは入れ替わるように、ロサンジェルス市警の警官となります。
弁護士のハニー・チャンドラーは一命を取り留め、事件のトラウマと戦いながら弁護士としての仕事を再開します。
ドラマではこの三人がメインキャラクターです。

ハリーは大富豪のホイットニー・ヴァンスに雇われ、彼の大学時代の恋人を探す。
ヴァンスは高齢で病気のため余命いくばくもないという状態で、結婚はせず、子もいない。
恋人と別れた時に彼女は妊娠していたと言う。
調査の結果、その後彼女は自殺をし、生まれた息子は戦死していた。
しかし彼には娘がいて、まだ生きていることがわかる。
それに気がついたヴァンスの遺産相続を狙っている者たちが相続人の命を狙う。

詐欺師のヴィンセント・フランゼンが投資家のカール・ロジャースのインサイダー取引を告発しようとした際に、マディは殺し屋に狙われ、チャンドラーは襲撃された。
ロジャースは裁判が審理無効となったため、有罪を免れる。
そのためチャンドラーとボッシュは民事裁判でロジャースを追い詰めることにする。

マディは見習い警官としてパトカーに乗り、町を巡回している。
タイ人街でレイプ事件が起こり、マディは被害者に同情し、彼女に電話番号を教えてしまう。
先輩警官に私たちはソーシャルワーカーじゃないと言われるが、マディはレイプ事件に深入りしてしまう。

他にも医師殺害事件や警官射殺事件などもあり、これらが次にどう繋がっていくのか楽しみです。
スピンオフ版だといいますが、クオリティは高く、期待できます。
ハリーが警察官ではできなかったことをしちゃい、逸脱しすぎないか心配です。
そうそうハリーに強い味方が登場。モーリス・バッシ、通称モー。
彼は主にハード面を受け持ちます。
それからあのコンビが登場。「あのコンビって誰?」と思う方、見たら嬉しくなりますよ(私だけ?)
マディが警官としてやっていけるのか、ちょっと心配です。
のめり込むと回りが見えなくなり、他の人の助言なんか聞かないタイプなので、危険なロスの警察官なんかできるのでしょうかね。
ドラマが続かなくなるので、殺されはしないでしょうが。
チャンドラーの元で弁護士にでもなればよかったのに。(弁護士も危ないけど)

シーズン2が早く観たいです。

太田紫織 『櫻子さんの足下には死体がうまっている Side Case Summer』&『涙雨の季節に蒐集家は、 あなたがくれた約束 』2022/06/17

コロナ禍の最中に近くのATMがなくなったので、駅の反対側にあるATMに行ってきました。
ところがカードが磁気不良のため使えませんでした。
結局新しいカードにすることになり、2~3週間カードが使えなくなりました。
コロナ禍になってからはネットバンキングを使い、ATMを使っていなかったのです。磁気って2、3年使っていないとダメになるのかしら?
銀行は窓口が縮小されており、現金は機械が扱うようになっていました。
ちょっとした浦島太郎状態でした、笑。


『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』の番外編です。
あれから櫻子さんと正太郎はどうなったのかが書かれているのかと思ったら、残念ながら櫻子さんも正太郎もホンのちょとしか出てきませんでした。

「File.1 アクリシオスとまだらの紐」
えぞ新聞の記者、八鍬士は旭川支所に異動が決まり、旭川に引越すまであと二週間という時に、14歳の少女がマムシを使って祖父を殺したという事件に興味を引かれ、調査することにする。
どうして少女は祖父を殺したのか?そして毒蛇で人が殺せるのか?
彼は九条櫻子の協力を得ることにするが、彼は蛇が嫌いな上に櫻子も大嫌いなのだ、笑。

「File.2 石油王と本物のシードケーキ」
高校卒業後、旭川にたった一人残った鴻上百合子は淋しさを持て余している。
今日も散歩と称して懐かしい櫻子の家までの、古い道を歩いている。
そうすると偶然に正太郎の祖母と出会い、バートラム・ホテルで食べられていたであろう、本物のシードケーキ作りに誘われる。

「File.3 ラ・ヴォワザン夫人殺人事件」
『竜胆庵』と名づけた別荘のリフォームが終わり、あとは庭を整えるだけとなった。
薔子は正太郎の担任だった磯崎君を専属庭師とし、庭を任せる。
そんなある日、近所の白河邸の老主人がやって来て、いかがわしい事に家を使われては困ると文句を言ってくる。
どうもラ・ヴォワザン夫人のサロンと間違えられたようだ。
たまたまその日に間違って別荘に来た女性によると、マダム・ヴォワザンは『魔女』と名乗り、特別なハーブを販売しているという。
この女性に言付けしたことにより、薔子はマダム・ヴォワザンと知り合い、彼女の変死事件と関わることとなる。

ラ・ヴォワザン夫人とは17世紀のフランス黒魔術師で毒薬製造・販売者。
貴婦人相手に様々な薬を手配し、黒ミサなどを繰り返していた悪女らしいです。


大学に通えなくなり、休学をしている時に、叔父の死をきっかけに遺品整理士見習いとなった雨宮青音は、仕事にやりがいを感じ始める。

「第壱話 まっすぐ空へ」
伴野隼人さんの葬儀が終わり、彼の一家が札幌へ引越すことになり、ミュゲ社は家の整理を引き受ける。
キャンプ用品を処分しようとしたところ、子どもたちの反対に会い、青音は苦肉の策として最後にみんなでキャンプに行くことを提案する。
言い出しっぺとして、青音は一家と一緒にキャンプに行くことになるが、娘の一人が父親が最後にもう一回行きたいところがあると言っていたと言い出し、それがどこか探し出すことになる。
さて、彼らが選んだ場所は本当に父親が行きたかったところだったのか…。

「第弐話 あなたがくれた約束」
ある雨の日、幼馴染みの菊香が急にマンションにやって来る。何か相談があるらしい。聞いてみると、今まで母の友人だと思っていたおじさんが入院し、遺産の一部を自分に遺そうとしていることから、そのおじさんが自分の本当の父親ではないかと思い始めたと言うのだ。
菊香はDNA鑑定まで考えているようだが…。
同じ頃、えぞ新聞の記者、八鍬士(『櫻子…』にも出てるね)が青音に会いに来る。
このことをきっかけに、青音は旭川に金色の雨が降り、春光台で「悪魔」に出逢った日のことを望春に問いかける。

なんともセンチメンタルなお話です。
涙コレクターって何?そのうち涙は蒸発しちゃうでしょうに、笑。
太田さんの本はミステリーとしてではなく、私は観光案内として読んでいます(ごめん<(_ _)>)。
第壱話に出てくるエサヌカに行ってみたくなりました。
バイク乗りだったら、気持ちよいでしょうねぇ。
かつて実家から富良野の方へ車で行こうとしましたが、まっすぐな道が続くだけだったので、運転していた父親が飽きてしまい、途中で帰って来たことがあります。
北海道にはまっすぐな道って掃いて捨てるほどありそうです。
くれぐれもスピードの出し過ぎには注意してくださいね。

大山淳子 『猫弁と幽霊屋敷』2022/06/18

昨日気づいたのですが、パスポートの期限が4月で切れています。
運転免許証がないので、身分証明書代わりになってました。今はマイナンバーカードがあるのでなくてもいいのですが、それでもパスポートを持っているだけで気分は違います。
しばらくしたら申請しに行こうかしら。


猫弁ことお人好しの弁護士、百瀬太郎は婚約者である大福亜子との同居生活を始めます。
しかし彼は仕事に没頭すると他のことを忘れてしまうタイプ。
今まで一人で暮らしていたので、なおさら人と一緒に暮らす上での決まり事がわからないのです。
二人の生活は相変わらずすれ違うばかり…。

そんな頃、新たな依頼人がやって来ます。
二見弁護士から紹介された男性恐怖症だという女性で、新宿区役所から電話があり、幽霊屋敷の件で相談があると言われたとのこと。その後封筒が届き、彼女名義の土地建物が近隣で問題になっていると書いてあったそうです。
百瀬はその依頼を引き受け、早速屋敷を見に行き、近所の人たちから話を聞きます。

百瀬法律事務所の十七匹の猫たちは、獣医・柳まことに無理矢理「にゃんにゃんお見合いパーティ」に参加させられ、帝王ホテルに連れられていきました。
帝王ホテルに隣接したペットホテルリッツはお見合いパーティに協力しています。
パーティ当日、黒ずくめの服装の男がリッツに泊まりたいと言ってきます。
断ると、見学させてくれと中に入り込み、ペットたちを人質(獣質?)にしてホテルにたてこもり、『猫ノオトシモノ』という大ヒットアニメ映画で主役の白猫ゆるりの声を担当した玉野みゅうを連れてこいと要求してきます。
まことからの電話で百瀬は「ペットホテルたてこもり事件」のことを知ります。

幽霊屋敷とペットホテルたてこもり事件&その他で百瀬は大忙し。

なかなかいい言葉が散りばめられています。
「攻撃は弱い人間の自己防衛なんだ」
「男のペースはろくなもんじゃありません。戦争をおっぱじめるのは男ですからね。結婚は女のしきりで明暗が分れます」などなど。

なによりも人と動物、みんなの幸福を願う百瀬と周りの気持ちが合わさって、幸せな終わり方になっています。
「僕の大好きなあのヒトがちゃんと幸せだったらいいな」(by 『マイクロスパイ・アンサンブル』)の世界ですかね、笑。
なぜか私、最後で泣きそうになりました。
ほっこりするお話がお好きな方、どうぞ読んでください。


<今週のおやつ>
麻布昇月堂の一枚流し麻布あんみつ羊かん。


前にも買って美味しかったので、再度購入しました。

<今日のわんこ>
この頃ヨーキーの弟もよく寝るようになりました。
夫曰く、今朝〇〇ちが緩かったとのこと。
まだクーラーをつけていないので、暑さと湿気で身体が弱っているのかもしれません。


イギリスの犬ですから、日本の暑さには弱いみたいです。

桜木紫乃 『孤蝶の城』2022/06/20

コロナ禍に秘かにイギリスの若者グループ、Welsh of the West Endを応援していたのですが、彼らが公開オーディション番組の「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出ているのを知り驚きました。
スーザン・ボイルがこの番組から有名になりましたね。
Welsh of the West Endの若者たちは舞台に出ているので、プロだと思っていたのですが、BGTにプロも参加出来るのですね。
最初のパフォマンスは「From Now On」、セミファイナルは「You will be 
found
」で、ファイナルまで行けたのかはわかりません。ファイナルはこれからなのかな?
BGTがどういう番組なのか知りませんが、審査員の三人が"Yes”と言ったら次に進め、セミファイナル以降は電話投票で決まるようです(違っていたら教えてください)。

そしてもう一つ、驚いたことがあります。
Welsh of the West End の一人、トム君がBBCのクイズ番組「I Can Hear Your Voice」Christmas Specialに出ていたのです。
6人の中から歌が下手だと思える人を排除していき、最後に残った人が歌が上手かったら出場者が賞金をもらえるという番組です。
イギリスのテレビ番組は色々と面白いものがありますね。



緋の河』の続編です。
カーニバル・真子の30歳から35歳までの出来事を時系列に書いてみます。

平川秀夫ことカーニバル・真子は会話のセンスの良さと、「タマは取ったがサオは残っているというねじれた立ち位置」が受け、芸能界でも夜の街でも引っ張りだこだった。
それも落ち着いた頃、銀座「エル」のママからフランスに支店を出すから、パリに行き基盤を作ってくれと頼まれ、秀夫は海を渡る。
やがて店も軌道に乗り、三十歳になった秀夫はモロッコで「女の体」になることを決意する。

カサブランカでドクター・ブルウに陰茎切除と造膣手術をしてもらうが、麻酔が効きすぎた上に、傷口が化膿し高熱が出る。
ドクター・ブルウはサヴァと言うだけで、何もしない。このままでは命を落とすと思った秀夫は清羽が連れてきた日本人医師・風間に膿んだところを取り除き、縫い直してもらう。
傷口はまだ治っていなかったが、秀夫は日本に帰り、日劇ミュージックホールの正月公演に出る。
マスコミは「女の体」を手に入れた秀夫のことを好き勝手に書いていく。

自分でマネジメントをするのが手一杯になった秀夫は友人の巴静香にプロダクションを紹介してもらう。
初めは轟洋司がマネージャーだったが、同時に担当していた新人歌手・南美霧子が売れ始めたため、坊やこと舵田透が秀夫のマネージャーとなる。
友人のノブヨに歌詞を書いてもらい歌手デビューをするが、鳴かず飛ばずで終わる。
そんな頃、作家の北澤英二と出会い、「女の体」を初めて試す。
やがて二人の関係が週刊誌に載り、秀夫は北澤と別れる。
戦後のブルーボーイの草分け的存在の綺羅京介と対談するが、「私は仕上げを間違った神を許しながらやって来た。謝る先は痛い思いをして私を産んでくれた母」と言った秀夫の言葉に気を悪くした綺羅に対談の雑誌掲載を断らてしまう。

だんだんと会社の意向で地方営業が多くなっていく。
急に釧路出身で同級生で初恋の相手の文次こと霧乃海との対談が持ち上がる。
北海道出身だとは言っていたが、釧路出身のことは家族のために秘密にしていた。
綺羅との対談がぽしゃったことに頭に来た轟が北澤とのことを雑誌にリークし、地方営業を多くし、文次との対談を入れたようだ。

ひょんなきっかけから映画『女家業』に出演する。
そんな頃、南美霧子が轟から逃げて秀夫のところに来る。
枕営業をやれと言われたらしい。秀夫は轟の裏をかき、美霧子を海外に逃がす。
そのため秀夫と舵田はプロダクションを辞め、二人で独立する。
自分の行く末を考え始めた秀夫に静香が劇団『砂上』の代表・本間を紹介する。

秀夫はパリに行き、ピエールという若い男を連れて日本に帰って来て、結婚したと発表する。
しばらくすると日本に飽きてパリに帰ると思っていたピエールはなかなか帰ろうとしない。
困った秀夫は他の男との浮気現場を見せ、ピエールを無理矢理パリに帰す。

やがて父親が亡くなる。最後まで相容れない関係だった。
「淳子の部屋」に出た秀夫は思いつきで城を建てたいと言う。
城は建ててやれないが、建築家を紹介してやると言った男に騙され、秀夫はネズミ講にひっかかり100万円損をする。
劇団『砂上』の本間と『氷の下』という二人芝居をすることになる。
秀夫は蛇を用意し、舞台に登場させ、なんとか最後まで演じきる。
芝居を見た映画監督の木枯が『氷の下』を撮りたいと言い、秀夫は映画に出ることになる。
撮影中に木枯の女でピンク女優の花菱マユミと大喧嘩をしてしまう。
この時マユミに恨みを買い、警察にチクられ、秀夫は大麻取締法違反容疑で逮捕される。留置所では男として扱われるが、しばらくしてから釈放される。
留置所での扱いから精神的にボロボロになった秀夫だったが、映画の試写会に向かう…。

さて、これらの出来事を桜木さんがどのように書いているのか、楽しみに読んでみて下さい。
カーニバル・真子のモデルはカルーセル麻紀ですが、他にどんな人たちがモデルになっているのか、推測しながら読んでも良さそうです。

カルーセル麻紀さんと言うと、品のない毒舌おばさんと言うイメージしかありませんでした(ゴメン)。
でもよく考えてみると、今のようにLGBTQが知られていなかった時代ですから、世間もマスコミも彼女に対して言いたい放題、やりたい放題だったでしょうね。
そんな時代に文字通り裸一貫で果敢にも芸能界に進出し、一世を風靡したのですから、どれほど努力し、苦難を乗り越え、血反吐を吐く思いをしたことでしょうか。
彼女の誰にも本心を見せない孤独な姿が愛おしくなります。
彼女の生き方はカッコいいです。
とにかく手術の場面が読んでいても痛くてたまりませんでした。
今もお元気だそうですが、病気をなさったとか。ゆっくりと羽を休ませて、幸せに暮らしていて欲しいです。
最初の手術の場面が我慢できそうだったら、読んでみてください。
お勧めの一冊です。

アレン・エスケンス 『過ちの雨が止む』2022/06/21

償いの雪が降る』の続編。


あれから五年。ジョー・タルバートは大学を無事に卒業し、AP通信社で記者として働いている。
同居しているガールフレンドのライラ・ナッシュは司法試験に向け猛勉強中。
自閉症の弟のジェレミーは彼らと一緒に暮らしている。
アル中で薬物依存症の母親とは縁を切り、連絡も取っていない。

ある日、ジョーはトッド・ドビンズ上院議員に名誉毀損で訴えられる。
彼は記事の撤回と膨大な慰謝料、そしてジョーの解雇を求めている。
記事に書いた内容の情報源は匿名で、名前を明かすことはできない。
ジョー、記者生命の危機か。

そんな時に編集長のアリソンからキャスペン郡に親戚がいないかと聞かれる。
ジョー・タルバートという男の死体がミネソタ州キャスペン郡で保安官補によって発見されたらしい。
ジョーが生まれる前に母とジョーを捨てた父親はジョーと同姓同名だと母親から聞かされていた。
この男は実父なのか?
そう思ったジョーはこの殺されたジョー・タルバートのことを調べるために、ミネソタ州バックリーに向かう。

自分の家族にかかわる秘密に目を背けず、知ろうとするジョーに成長の証が見えました。
ライラとの関係に危機が生じますが、なんとか二人で乗り越えていって欲しいと思います。
ジェレミーはいくつになってもジェレミーですねぇ、笑。
母親の変化はいつまで続くのかわかりませんが、彼女を受け入れ、新しい家族の関係を築いていってくれたらいいな。
日本語の題名がいいシリーズです。題名を変えるならこんな凝った題名を考えてつけて欲しいです。
前作を読んでいなくても関係なく読める作品です。読んでいた方がジョーの背景がわかっていいとは思いますが。
お勧めです。

鷹野久 『午後3時 雨宮教授のお茶の時間 4』2022/06/22



私立青葉学院大学の雨宮教授は文学に出てくるイギリスのお菓子を作るのが趣味。
イギリスから日本に来た姪のサヤが日本の学校に溶け込めないのが心配でした。
サヤはイギリスのおばあちゃんにお菓子作りを教えてもらっていたので、雨宮はイギリスの物語の中に出てくるお菓子をサヤに教えて貰うことにします。
(1・2巻はこちら

今回のお菓子は次のものです。
『クマのプーさん』から「バースデーケーキ」
『ツバメ号とアマゾン号』から「バースバンズ」
『エマ』から「アップル・ダンプリング」
『指輪物語』から「ブラックベリータルト」
『サイラス・マーナ』から「ポーク・パイ」
『おちゃめなふたご』から「ヴィクトリアサンドイッチ」

三巻の本とお菓子を書いていなかったので、書いておきます。
『花の魔法、城のドラゴン』から「コーニッシュパスティ」
『ポケットにライ麦を』から「チョコレートケーキ」
『ダレン・シャン』から「ストロベリーチーズケーキ」
『クリスマス・キャロル』から「ミンスパイ」
『グリーン・ノウの子どもたち』から「クリスマスプディング」
『ハリー・ポッター』から「ロックケーキ」
番外編:『秘密の花園』から「クランペット」

サヤも中学校に入学し、どうにか学校や学校外でも友だちができ、日本の生活に慣れてきたようです。
そんなわけで、このお話も今回が最後となります。
この巻で私が作ったことがあるのは、ヴィクトリアサンドイッチ。
材料さえ用意できれば、すぐに簡単にできます。

小学校以上のお子さんに何を読ませればいいのかわからない方はこの漫画を参考にして、出てくる本を読ませるといいと思います。
本にレシピが載っているので、お子さんと一緒に作ってみるのもいいでしょう。
もっと詳しいレシピが知りたかったら、ネットで調べると載っていますよ。

このブログでも紹介していますが、「ブリティッシュ・ベイクオフ」を見ると、イギリスのお菓子のことがよくわかりますので、是非ご覧ください。

新川帆立 『競争の番人』2022/06/23

公正取引委員会を取り上げたお仕事小説。


白熊楓は警察官だった父が仕事中に大怪我をおったことから警察学校を中退し、国家公務員試験を受け、公正取引委員会に入局した。
聴取対象者が自殺してしまい、尊敬する上司・遠山から女くさくて馬が合わなさそうな桃園のチームに配置換えされてしまう。
東大を首席で卒業し、留学先のハーバード大学でも首席だったというエリート審査官・小勝負勉が帰ってきて、同じチームになるという。
運動が得意で、どちらかというと筋肉バカと見られがちな楓にとって賢そうでエリート然とした小勝負は苦手だ。

新しいチームの最初の案件は栃木県S市のホテル三社のウェディング業界価格カルテルだ。
秘密裡に調査を行い、ある程度探ってから「立ち入り検査」を行う。
楓は小勝負と組み「Sクラシカルホテル」を内偵していたが、そこに競合企業の「ホテル天沢S」を経営している天沢雲海がやってくる。
怪しく思った二人は雲海を付けるが、何者かに襲われた雲海を助けてしまい、内偵がバレてしまう。
雲海は一筋縄ではいかない、ずる賢い男のようだ。

いよいよ立ち入り検査が行われる。
ところが雲海は立ち入り検査を拒否、聴取では完黙を貫く。
公正取引委員会と雲海の戦いが始まる…。

一般人には身近ではない公正取引委員会を取り上げ、面白く味付けしてくれました。
公正取引委員会は「弱小官庁」としつこく書いてありますが、そうなの?
白熊・小勝負のコンビが最高です。
白熊はホント、ついていないわね。性格的に仕方ないか。
私の好みから言うと、白熊の男絡みのことはどうでもいいけどね、笑。
新川さんが次々と短時間で新しいキャラを創り上げていくのには驚きました。
これもシリーズにすれば、しばらくは安泰よね。
テレビドラマにもなるようだし。
などと思ったら、7月に『先祖探偵』という本を出すようです。
目指せ、中山七里。いいえ、池井戸潤かな?
デビューしてから飛ばしすぎではないかしら。ちょっと心配です。

公正取引委員会なんて何やら難しそうなことをしていそうと思うかもしれませんが、とっても読みやすいので、安心して手に取ってください。
すぐ読めちゃいますよ。


<今日のわんこ>


夏用のハウスに寝ている兄。なぜか頭が出ています、笑。
ハウスが小さすぎるのかしら?それとも…。