中山七里 『棘の家』2022/07/05



穂刈慎一は中学校教師。
イジメは「弱者が更なる弱者を虐げること」だと考え、イジメの加害者を一方的に糾弾しても、「また別のかたち、別方向からの暴力になりかねない」と考えている。
それにイジメを報告しても、学年主任や校長・教頭はすぐに認めようとはしない。
だから自分のクラスにイジメがあることを知らされても、うやむやにせざる得ないと思っていた。

ある日、授業中に電話がかかってくる。妻の里美からだった。
授業中には電話やメールもしないように取り決めをしているのだが。
違和感から電話に出ると、娘の由佳が小学校の三階から飛び降りたと言う。

千住署の聞き取りから由佳がイジメられていたということがわかる。
生活保護を受けている家庭の子がイジメられているのに反発し、担任に報告したのことから、イジメのターゲットになったという。
由佳はそのことを両親にはひと言も洩らしてはいなかった。
警官の坂東に誰がイジメに加担していたのかと聞いても教えてくれない。
被害届を出せば徹底的に捜査をするというが、出したら出したで、新たな紛争が起りかねないと言われた。

家では妻の里美が加害児童への復讐に燃え、息子の駿は穂刈を「家の中まで教師面」だと責める。
穂刈は教師としての立場と親としての立場の間で揺れ動く…。

そんなある日、帝都テレビの<アフタヌーンJAPAN>の記者・兵頭から声をかけられる。
警察や小学校の対応に納得できず、猜疑心に囚われていた穂刈は、マスコミを利用して情報を手に入れようと思う。
ネットでは由佳の名前も加害者の名前も、イジメの原因の子の名前もすべて特定されていた。

その頃、加害者の彩が行方不明になり、しばらくして死体となって見つかる。
息子の駿が参考人として千住署で事情聴取を受ける。
そのためネットは駿が彩を殺したと騒ぎ立てる。

朝から家の前に報道陣が押し寄せる。
ネット住民は野次馬根性と下賎な正義感でプライパシーを暴く。
職場は針の筵で、無理矢理休暇を取らされる。
家庭では四六時中気の休まる間もなく、外出さえままならない状態が続く…。

学校の隠蔽体質はなかなかなくならないものなんですね。
北海道旭川市で起った悲惨ないじめが思い出されます。
昔もいじめはあったけど、今のような陰湿さはなかったような気がしますけど、私が知らなかっただけかもしれません。
殺した犯人がわかりやすいのですが、いじめの理由と同様、あまりにも短絡過ぎる理由だと思いましたが、そんな世の中なのかもしれませんね。
冷静な父親と錯乱状態に陥る母親というのが、固定観念に囚われているように思いました。錯乱状態に陥る父親と冷静な母親もいるよね。
穂刈が教師として、父親として悩む姿にあまり同情できませんでした。
私も子どもがいたら、穂刈には担任になってほしくないですわ、笑。
穂刈の家庭は崩壊して、もう元には戻らないと思いますよ。少なくとも、穂刈はもう家族に相手にされないでしょうね。

読んで気持ちのいい内容ではありませんが、いじめ問題について考えるためのいいきっかけになる本です。

『裏通りで弱者が自分より弱い者を痛めつけるのがイジメだ』

あなたはこの言葉は正しいと思いますか?

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