マーティ・ウィンゲイト 『図書室の死体 初版本図書館の事件簿』2022/07/09



『図書室の死体(The Bodies in the Library)』という題名を見ると、何か思い出しませんか?
そうです、アガサ・クリスティの書いたミス・マープルの『書斎の死体(The  
Body in the Library)』で、この本はオマージュ作品なんです。

ヘイリー・バークはバースにある初版本協会の新米キュレーター。
初版本協会はアガサ・クリスティなどの初版本の収集家だった故レディ・ジョージアナ・ファウリングが設立したもので、彼女の自宅だったミドルバンク館に事務局と図書室があり、図書室には膨大なコレクションが所蔵されている。
ヘイリーは十九世紀文学で学位を取得し、前職はジェーン・オースティン・センターのアシスタント・キュレーターのアシスタントで、異例のキャリアアップを成し遂げたのだ。
離婚して娘が一人いるので、金銭面でもありがたいキャリアアップだ。
しかし、問題が。実は彼女、一度も探偵小説を読んだことがないのだ。
このことが協会の終身事務局長のミセス・ウルガーや理事たちにバレて、首にならないかという心配がある。
そのためヘイリーは協会での自分の存在価値を証明しようと躍起になっている。

ある日の朝、図書室で男性の死体が見つかる。
それは館で勉強会を開いているアマチュア作家サークルの一員、トリステだった。昨夜、彼は勉強会が終わると出て行ったはずだ。
サークルのメンバーたちはアガサ・クリスティ作品の二次創作をしているので、ここぞとばかりに警察の捜査に口を挟んでくる。
ヘイリーは困った警察から彼らに捜査の邪魔をさせないようにして欲しいと頼まれる。
一方、サークルのメンバーたちはヘイリーが警察から何か聞いているのではないかと思い、訊いてくる。

ヘイリーは初めは事件解明は自分の仕事ではないと思っていたのだが、母親から渡された『書斎の死体』を読んで、気持ちが変わる。
トリステ殺害は自分が解決しなくてはならない。協会のためにそうする必要があると思い込んでしまったのだ。

そんな時に、レディ・ファウリングのろくでなしの甥、チャールズ・ヘンリー・ディルがミドルバンク館に現れる。
彼はミドルバンク館を我が物にするためのいいチャンスだとばかりにバースにやって来たのだ。
前任者を追い出した彼に自分も追い出されてしまうのではないかと恐れるヘイリー。

ヘイリーはトリスト殺害事件の解明に協力しつつ、チャールズ・ヘンリー・ディルとも闘わなくてはならなくなる。

クリスティの『書斎の死体』を読んで、ヘイリーが「探偵小説とは、鋭敏な知性、騙り、登場人物、一杯のお茶で構成され、そして最後の最後に混沌から秩序を引き出す物語なのだ」と悟りを開くなんて、びっくりです。そう簡単に悟りが開かれるものでしょうか?
まあいつまでもヘイリーが事件に関わらないようにしていると、話が進みませんからねぇ。
これに味をしめて、ヘイリーは次なる死体を探すようになるのでしょうかね。

さて、彼女が二作目に読む探偵小説は何か。推理してみましょうか。
と思ったら、あとがきに書いてありました。(知りたい人は剥がしてみて下さい)
「Murder Is a Must」という英語の題名です。
ドロシー・L・セイヤーズの『殺人は広告する( Murder Must Advertise)』が次の事件に関係するらしいです。
私は読んだかどうか、記憶がないです。

本格的ミステリーというより、コージーミステリーです。
このシリーズは今年の一月に三作目が出版されています。

バースといえば、ローマ浴場跡が有名ですが、ジェーン・オースティンが1801年から約5年間滞在していたそうです。
ジェーン・オースティン・センターでは科学捜査で似顔絵等を作成する専門家が制作したオースティンの等身大の蝋人形やオースティンの映画で使われた服や小物、直筆原稿をはじめ、当時の暮らしぶりまでが垣間見られるそうです。
リージェンシー・ティー・ルームに入って「Tea with Mr. Darcy」を頼みたいわ。
バースでは毎年9月にジェーン・オースティン・フェスティバルが開かれ、18世紀初頭のコスチュームを着た人々が街に溢れるそうです。
いつイギリスに行けるかわかりませんが、9月に行ってフェスティバルに参加してみたいですね。

コメント

_ ろき ― 2022/07/11 19時22分51秒

遅くてすみません。クリスティへのオマージュ、多いですね!これもニヤニヤしながら読めそうですね。
9月のバースに行ってみたいものです。調子に乗って着てみたりして・笑。

わんこも膝にくるんですか。お大事に。

_ coco ― 2022/07/12 10時30分04秒

9月のバースに是非行ってコスチュームを着て下さい。ハイウエストなので、苦しくないそうですよ。参加している人たちはみな楽しんでいますね。

兄犬は生まれつき膝が緩かったのです。
弟はそんなことがなくて、生まれつきなのか、鳥レバーを食べさせたためか、しっかりとした脚をしています。

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