原田ひ香 『東京ロンダリング』&『事故物件、いかがですか?』2022/08/08

原田さんの「東京ロンダリング」シリーズを二冊、紹介します。
他殺や事故、自殺、災害、孤独死などで人が亡くなった事故物件に一ヶ月住んで、
部屋を浄化することが「ロンダリング」だそうです。


内田りさ子は夫に勧められた「アンティーク講座」で佐伯という二十代の男に会い、浮気をしてしまう。
夫に知られ、探偵を使って証拠を突きつけられ、離婚。
急き立てられるように家から追い出された。
佐伯に連絡しても携帯電話は解約されていた。
たまたま電車を降りた高円寺で、お金もなく、保証人もいないので、一番安い部屋を借りようとするが、部屋を貸してくれる不動産屋はない。
暗くなってから入った相場不動産で、家賃が六万八千円だけど、住んでくれたら一日五千円の日当を払うと言われて、驚くりさ子。

それからのりさ子は、相場たちに見守られながら、ロンダリングする部屋を渡り歩き、「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように」暮らしていく。
りさ子は移り住んだ先々で、様々な人と出会い、生き直していくことになる。

おせっかいな真鍋夫人が言うことになるほどと思いました。

「お金は自由。自由そのものなの。お金で買えないものはたくさんあるけど、ある程度の自由ならお金で買える。それが、貴いところなのよ」


『東京ロンダリング』の続編で、八つの連作短編集。
『失踪.com』と同じもので、文庫分にする時に題名を変えたようですので、間違って買わないようにしましょう。

「うちの部屋で人が死んだら」
加島康江は父親のアパートを相続した夫に、アパートの雑事を押しつけられている。
ある日、不動産管理会社から103号室が臭うという連絡が来る。部屋を見てみると、住民は遺体となっていた。その日は夫に子どもを迎えに行ってもらい、夜の九時に帰り、夫にこのことを話そうとするが、夫は話を聞こうともせず、「今後いっさい、俺に迷惑をかけるなよ」と怒鳴りつけられた。
このままだとアパートの入居者は二人になってしまう。
不動産管理会社の三木から提案されたのが、不動産ロンダリングだった。

「君に栄光をささげよう」
小さなメーカーに勤めている田中保志は同期の皆川哲治から家に遊びに来ないかと誘われた。行ってみると、実家に仕送りできるように事故物件に住み、一日五千円の手当を貰っているという。
前に住んでいた人へのハガキがよく来ると、見せてくれたのが、浅井陽介という人への図書館からの連絡ハガキ。
田中はそのハガキをこっそり持ち帰る。
浅井陽介は高校のバレー部の一年先輩で、田中は彼から本を貰ったことがあったのだ。
その後しばらくして、皆川が失踪する。

「幽霊なんているわかない」
鎌田勇気は妻の桐子から家を追い出された。十四回目の浮気がバレたのだ。
家財道具一つ持たずに家を追い出され、友人のマンションに転がり込み、安い部屋探しをしたが、見つからない。
最後にたどりついたのが、相場不動産。
店員のまあちゃんに、あなたのような人にもぴったりの方法があると紹介されたのが、事故物件のロンダリングだった。
紹介された部屋に入り寝ていると、ふと、目が覚める。
玄関の方を見ると、若い男が正座していた…。

「女が生活保護を受ける時」
小石川君江は物件探しをするが、生活保護だというと、不動産屋からは相手にされず、最後に入った相場不動産ではどの大家からも断られてしまう。
最後に社長の相場が現れ、君江に遠慮なくプライベートなことを聞く。君江は正直に答えていった。
話を聞き終わった相場社長は君江にロンダリングの仕事を持ちかける。
これから紹介する部屋に前に入った男が、若い男の亡霊のようなものを見たと言ってロンダリングを止めたと教えられるが、君江はそんなことにはかまわず、やってみることにする。

「地方出身単身女子の人生」
相場不動産に勤める吉田正子ことまあちゃんは、社会学者の遠藤の「地方出身の女の子の聞き取り調査」に協力している。
遠藤に次は将来のことも聞かせてもらいたいと言われ、戸惑う正子だったが…。

「失踪、どっど混む」
相場はまあちゃんが辞めてしまい、営業成績が落ちて困っていると、失踪屋の仙道啓太に愚痴る。
そのついでに仙道にどうして失踪屋をしているのかと聞く。
仙道は相場にこれまでの経緯を話す。
話を聞き終わった相場は…。

「昔の仕事」
りさ子が「富士屋」で働くようになってから四年が経った。
そんなある日、相場が「富士屋」にやって来て、ロンダリングの『影』が減ってきていることもあり、りさ子に限定的に仕事を手伝ってくれないかと頼む。
結婚を申し込まれている「富士屋」の亮に一応相談するが、りさ子の気持ちは決まっていた。

物件は築十三年、南向き、南阿佐ヶ谷駅から徒歩十二分、家賃七万五千円年管理費込。そこで大量の薬を飲んだ男が死んでいたという。男には家族がいて、郊外に一軒家を持っていて、妻はアパートについて何も知らなかったというが…。

「大東京ロンダリング」
失踪屋、船場啓太は相場不動産の案件に関わることになる。
ロンダリングの現場から逃げ出した男や「ロンダリングしてほしい」と連絡が来て、すぐに止めた女、そしてまあちゃんに話を聞きに行く。
そしてわかったことは…。

本当にロンダリングという仕事があるのかと思えるようなお話です。
私、引越が好きなので、一ヶ月毎に部屋が変わってもいいのですが、お化けが出たら嫌だわ。見えない人だからいいのですけど。
実際にはないそうなので、不動産屋で変なことを言わないようにねwww。

二冊ともいいのですが、一冊目の方がよりお勧めです。

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