坂木司 『ショートケーキ。』2022/08/14



ショートケーキって日本独特のものだって知っていましたか?
外国でショートケーキ下さいと言っても通じません。
英語では「ストロベリー・スポンジ・ケーキ」と言うらしいですが、フランスのガトーフレーズが一番近いものでしょうかね。

日本でどのケーキが好きかと聞かれると、ダントツ一位になるのがイチゴのショートケーキでしょうね。
それに誕生日のケーキと言えば、表紙のようなイチゴののったホールケーキが頭に浮かびますよね。
書いているうちに食べたくなりました(涎)。

ショートケーキを巡る5つの連作短編小説です。
いつも思うのですが、坂木司さんは女性の気持ちがよくわかりますね。
今回は新米ママたちの気持ちが、男性には描けないのではないでしょうか。
覆面作家で性別はわからないと言いますが、女性なのかなと思っていますが、どうでしょうね。

「ホール」
大学生のゆかとこいちゃんは父親が出て行ってから、誕生日にホールケーキが食べられなくなる。二人は『失われたホールケーキの会』を結成し、家庭環境でやりきれないことが起るたびにホールケーキを買って食べることにする。
二十歳になるという頃、二人の父親から「大切な話がある」、「伝えたいことがある」ので特別なお店で会おうと言うメールが来た。
これが最後のランチになるのかと思う二人だったが…。

「ショートケーキ」
うちのコージーコーナーには「天使」が来る。
残りがちなホールケーキを予約なしで買ってくれるお客のことを、先輩バイトの上田さんは「天使」と呼ぶ。
俺が覚えている常連の天使たちは一ヶ月か二ヶ月に一回、ホールケーキを買う。
ある日、俺が姉のことで悩んでいるときに、天使がやって来た。
彼女たちのいつもと違う様子に、俺は応援したい気持ちになり、思わず声をかけ、特別なことをしてしまう。

「追いイチゴ」
バイトのカジモトくんが恋をしているみたい。
二人連れの天使の一人らしいけど、どちらかわからない。
彼のその姿を見てわきわきしてしまう、私。
そんな私には人には言えない趣味がある。

「ままならない」
三人のママ友たちは赤ちゃんがいるとできないことを、やってみることにする。
他の二人に子どもを預かってもらって挑戦したのだが…。

「騎士と狩人」
28歳の光春には気になる人がいる。経理さんだ。経理さんの行動を観察したり、話すうちに、彼女の意外なことを知る光春だったが…。

家族が少なくなると、ホールケーキが食べられなくなるというのは、よくあるアルアルですよね。
私は年に一回、クリスマスの時だけ、一番小さいホールケーキを買い、2回に分けて食べます。
幸せなひとときです。
ホールケーキって、特別なものがありますよね。

やってみたいと思ったのが、上田さんの趣味の「追いイチゴ」。
ショートケーキの他にイチゴを買ってきて、好きなだけイチゴを追加トッピングして食べるというものです。
「イチゴ味のケーキが、ケーキ味のイチゴに逆転」するという裏技です。
イチゴが美味しい頃に挑戦したいですね。

絶対にショートケーキが食べたくなる、心が優しくなるお話です。

あとがきにあるコージーコーナーのポスターが気になったので、探してみました。「2017年度第66回朝日広告賞入賞作品一覧」をご覧下さい。
写真をクリックすると大きくなります。写真に添えられた一言がいいです。


<今日のおやつ>


カフェタナカの「ビジュー・ド・グラッセ ベルガモットフロマージュ」。
美味しかったです。
クッキーよりも気に入りました。