篠田節子 『長女たち』2022/09/13



3つの長女たちのお話。

「家守娘」
島村直美は離婚歴ありの四十女。年下の彼氏と別れたばかり。
家には骨粗鬆症の母がいて、「認知症」が始まったみたいだ。
専門医のところに連れて行こうとするが、見抜かれて連れて行けない。
嫁いだ妹に相談すると、直美に反論し、説教を始める始末。
やがて母は孫のユキの幻を見て会話をするようになる。
やっと病院に連れて行くが、医師は「受け入れてください」と言うばかり。
母の妄想は進み、罵詈雑言を吐くことが多くなる。
とうとう直美は仕事を辞めざるおえなくなる。

ある日、直美は父が認知症だという新堂という男と出会う。
彼から誘われて飲みに行くようになると、母は新堂とのつき合いに気づき、交際を止めるように言い始める。
そして恐れていたことが起る…。

「ミッション」
頼子は亡くなった母の担当医、園田の人柄に惹かれ、仕事を辞め、国立医学部に入学をし、医師になった。
園田がヒマラヤの麓の村で事故死をしたと聞き、彼の後任としてその村に赴く。
だが、頼子が村人たちのためによかれと思ってすることが、ことごとく拒絶される。人の命への認識が根本的なところで異なっているのだ。
頼子は自分の無力感に打ちひしがれるのだった。

「ファーストレディ」
慧子の母は糖尿病を患っている。それなのに、何度言っても甘い物を食べのを止めない。糖尿病だとわかっても、自分の生活をかえようとはしない。
そんな母のために慧子は就職を諦め、母の生活管理を引き受けたというのに、母は感謝もせず、意に染まないことがあると、罵倒を浴びせかける。
父は医師で、地元で行政関係の委員や、医師会やロータリークラブの役員までやっており、公人としての生活が忙しい。
使いものにならない母の代わりに「ファーストレディ」としての役割も慧子が果たしている。
しかし、家に縛られた生活にも限界が来ている。
母を殺してしまう前に、家から逃げ出さなければ、と思う慧子だったが…。

篠田さんの小説を読むたびに、暗澹たる思いになります。この本は特にそうです。
どの母親も娘に対して容赦がない、毒親です。
娘は自分のものだから、自分の面倒をみることは当たり前という感覚なんでしょうね。
ゾゾッとしました。
極めつけは、腎臓まで寄越せですからねぇ。

そういえば、イギリスのエリザベス女王は最後の公務をして2、3日後にバルモラル城で亡くなりましたね。
日本だったら病院に入れられ、スパゲッティ状態にされ、延命されるのではないでしょうか。
ヨーロッパでは寝たきり老人がいないといいますし、日本と死生観が違うのでしょうね。

私自身は親の介護をしなくてすみましたが、これから、いいえ、今、している人もいることでしょう。
この本を読むと、身につまされるかもしれませんね。
篠田さんの絶妙な描写に恐れ入りました。

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