ヘニング・マンケル 『イタリアン・シューズ』2022/09/18

ヘニング・マンケルは刑事ヴァランダー・シリーズを書いたスウェーデンの推理小説家です。
この本は彼が書いた普通の小説で、こういう作品も書くのだとちょっと驚きました。
マンケルは2015年に67歳でお亡くなりになっています。


フレドリック・ヴェリーンは離れ小島に住む元医師。
経済的に不自由のない六十六歳の男。
十五歳の時にウェイターをしている父に何になりたいかと聞かれ、医者になることにした。
しかし十二年前、医療事故を起こしてしまい、彼は医師を辞め、祖父が住んでいたこの島に引きこもった。
島にいるのは彼と犬と猫と蟻塚…。

島にやってくるのは郵便配達員のヤンソンだけ。
十二年前にダイレクトメールだけなら寄らなくてもいいと言ったにもかかわらず、ヤンソンは郵便物がなくても、午後二時にやって来る。

ある日、四十年も前に捨てた女、ハリエット・フーンフェルトが現れる。
アメリカへ出発する日を一日遅く告げ、別れの言葉も言わずに彼は消えたのだ。
ハリエットは病で余命幾ばくもなく、約束を果たして欲しいと言う。
正真正銘唯一の美しい約束を…。

フレドリックとハリエットは湖に向けて出発する。

湖の帰りに、ハリエットは遠回りをして、彼女の娘のルイースに会って欲しいと頼んだ。
トレーラーハウスから出てきた娘に、ハリエットは…。

島に帰ってきたフレドリックは、彼が医師を辞めたきっかけになった娘、アグネス・クラーストルムを訪ねようと思う。
アグネスは身寄りのない三人の少女たちをあずかり、小さな施設を運営していた。

ハリエットが島に来てから、彼の生活は少しずつ変化していく。
やがてアグネスの施設にいたシマという少女がやって来て、そしてハリエットがルイースと共に最期の日々を過ごしに来る…。

フレドリックはとんでもなく、嫌な男です。
人の話を盗み聞きし、人の手紙をこっそり読み、人のハンドバッグの中を調べたりするという悪い癖があります。
責任を取らずに逃げてばかりいるし、状況によっては嘘をつくし、自意識過剰でエゴイスト。島で一人でいると、傷つかなくてもいいしね。
でもそんな彼に過去が否応もなく追いついてきました。
人は死ぬ前に自分の人生の清算をさせられるものなのでしょうか。

本の中の印象的な言葉。

「人生は人と靴の関係のようなものだ(中略)いつか足に合うようになるなどと思ってはいけない。足に合わない靴は合わないのだ。それが現実なのだ」

スウェーデンの美しい景色と男の孤独が身に染みる小説です。
続編もあるようで、英語版で「After the Fire」が出版されているので、読んでみようかと思いますが、フレドリックのような男は懲りなさそうです、笑。

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