江戸時代のお菓子屋シリーズ ― 2022/09/24

中島久枝 『菊花ひらく 日本橋牡丹堂 菓子ばなし<10>』
鎌倉の旅籠屋の娘、小萩は春に日本橋牡丹堂の菓子職人の伊佐と祝言をあげてから、季節は秋になりました。
小萩庵には次々とお客がやってきます。
反射式のぞき眼鏡のお披露目会のための菓子や過ぎさったことを思い出に変えるための十五夜のお菓子、重陽の節句に菊好きが集まる宴で出す菓子、占い師から用意するように言われた亥の子餅などを頼まれます。
ちょうどその頃、曙のれん会では天敵勝代が関係する面倒事が起っていました。
そして店の跡取り息子、幹太は芸妓千波と逢瀬を重ねていましたが…。
菊を楽しむとはどういうことか、それぞれの幸せとはなどと色々と考えさせられました。
知野みさき 『深川二幸堂 菓子たより』
「深川二幸堂 菓子こよみ」シリーズに続くお話です。
「すくすくー小太郎-」
光太郎とお葉の間に子が生まれます。お葉の連れ子の小太郎は指南所で心ないことを言われ、お葉は光太郎と小太郎を進造のもとへ行かせることにします。
「睡蓮ー八郎ー」
八郎は菓子屋・よいちで蓮と言う女と出会います。蓮はどういうつもりかわかりませんが、八郎に会いに二幸堂まで来て、次に八郎がよいちに帰る日に合わせて王子に行くとまで言います。蓮の腹づもりは…?
「千両箱ー暁音-」
いつまでも埒が明かない玄太と汀の関係をどうにかできないかと暁音は相談され、一計を案じます。
「伯仲ー孝次郎ー」
網代屋の菓子番付が出ました。菓子好きの七は番付に合点がいかず、網代屋に番付を書いた鷲兵衛に会わせろと頼み込みますが、けんもほろろに断られました。
鷲兵衛の番付も今年で二十年。お年を召されて、舌が利かなくなったのではないかと思わないこともなく、とにかく食べてもらわないと始まらないと考え、菓子くらべをすることにします。
七のお菓子に対する執念にはびっくりです。
和菓子が無性に食べたくなるお話です。
中島久枝 『浜風屋菓子話 日乃出が走る<一>』
十六歳の日乃出は御三家、大名家のご用も務める大店、元老舗菓子司橘屋の一人娘だった。
しかし明治維新で半年、一年とまとめていただくはずのお代は帳消しになり、ご用立てしたお金は戻らず、さらに主人の仁兵衛が白河の関で客死したため、店を閉めることになる。
日乃出は叔父が日本橋で営む千鳥屋に引き取られる。
日乃出はひいおじいさんが越後の寺の住職からもらった掛け軸のことが気になって仕方がなかった。掛け軸には「菓子は人を支える」という意味の言葉が書かれていて、橘屋の魂のようなものなのだ。
日乃出は夜中に掛け軸を取りに店に行くが見つかってしまう。
その翌日、橘屋を買った谷善次郎の屋敷に呼ばれ、日乃出は谷と言い合いをしてしまう。
おもしろがった谷は日乃出に百日の間に百両をつくれたら掛け軸をやるという勝負を持ちかける。
日乃出は後先も考えずに、父の仁兵衛しか作り方を知らない幻の菓子、薄紅で百両を作ると言ってしまう。
日乃出は松弥という腕のいい職人がいるという横浜の浜風屋に送り込まれるが、なんと松弥は死んでいない上に日乃出は下働きということになっていた。
店は草ぼうぼうの路地にあり、古くて小さく、滅多に客は来ない。
さらに店にいたのは仁王様のような浜岡勝次と女形のような角田純也の二人で、彼らの作る大福はこんなにまずい大福をつくれるものかと思うほどだった。
これでどうやって百両を作れというのだ。
日乃出はなんとか二人の男たちを味方にし、百両目指して孤軍奮闘、試行錯誤し頑張るが…。
お嬢様だった日乃出がなんでお菓子を作れるのか、不思議でした。見ていただけで作れるほど簡単なものじゃないと思うのですけどね。
それに不味い大福を作る職人が短期間で上手になるものか?
あ、江戸時代といいながら、明治時代が紛れ込んでますね、すみません。
明治時代と言えば文明開化ですから、西洋菓子が入ってきています。
シリーズになっているようですが、どういう風に続いて行くのかしら?
人情物を読みたい方は日本橋牡丹堂か深川二幸堂シリーズを、根性物を読みたい方は浜風屋菓子話を、どうぞ。
日本茶に練りきりか栗のお菓子を食べながら読みたいですね。
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