乃南アサ 『家裁調査官・庵原かのん』2022/09/29



家庭裁判所が「少年」と呼ぶ場合、そこに女子も含まれ、主に罪を犯した場合に処罰を下すことの出来る十四歳から十九歳の子たちを指す。
処罰は少年の保護更生を目的にしたものである。
家庭裁判所調査官は「問題の原因を探る」ために存在する。
仕事は大まかに三段階。
まず保護者から届いた照会書や警察が作成した調書などを読む。
次に調査面接として少年自身や保護者、必要な場合は学校や勤務先などの関係者から話を聴く。少年がうまく言語化出来ない場合には、必要に応じて心理テストやカウンセリングなどを行いながら、心の裡にあるものを把握するように努める。
家裁調査官は「裁判所」という司法の場にいながら生身の人間を扱う、臨床の専門家である。
そして最後に限られた時間の中で把握した、少年の実像や、彼らが抱える問題、今後の展望などを整理して「少年調査票」という報告書を書いて裁判官に提出する。
裁判官はこの調査票と、鑑別所の技官や教官が作成した「鑑別結果通知書」の二つを主に重要な資料とし、独自の裁量で少年に「審判」を下す。

庵原かのん、35歳。福岡家裁北九州支部の少年係調査官。
彼氏の栗林は東京の動物園の飼育員でゴリラ担当。遠距離恋愛真っ最中。
かのんは三年間勤めていたホテルを辞めて、家裁調査官になった。
三年ごとに異動するので、次の異動で東京に戻れたら結婚も視野にいれている。

調査官は常に平均7~8件の案件を抱えている。
今回のかのんの案件は、十五歳の自転車を盗んで捕まった少年、過保護、過干渉の母親のいる十六歳の本を万引きした少年、暴行傷害容疑で逮捕された十八歳の少年、鳥獣保護法違反で捕まり、試験観察中で郷土料理店に補導委託された少年、十八歳で詐欺未遂を起こした少年…。

次から次へと担当する少年が変わるので、一人一人とじっくり向き合うことはなかなか大変なことだと思います。
調査官は再犯の可能性がなくなるように、少年が何故その犯罪を行うに至ったかを的確に掘り起こして行かなければなりません。
背景には家族からの身体的暴力や虐待、貧困、有害環境、個人の特性などいろいろとあり、一概にこうだとは言えません。
その点、かのんは上手く少年たちや家族から話を引き出し、原因を探っています。上手くいきすぎ感はありますけど、笑。
本では取り扱う案件が多く、そのため一つ一つがあっさりと書かれており、かのんのキャラも影響しているのか、軽い感じに仕上がっています。
シリーズになると、今のままでは「マエ持ち女二人組シリーズ」のようなテーストになりそうですね。
とにかく知らなかった家庭裁判所調査官の仕事の一端を垣間見られ、面白かったです。

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