ヘニング・マンケル 『リガの犬たち』2022/10/06



スウェーデンの田舎町イースタ署の刑事ヴァランダーのシリーズの二作目。
ヴァランダーは四十三歳。
彼の友人であり、片腕でもあったリードベリがガンで亡くなって一ヶ月が経った。
ヴァランダーはリードベリだったら…と常に考える。
それだけリードベリは彼にとって、理想の尊敬すべき先輩刑事であり、かけがえのない人だったのだ。
ヴァランダーはいまや警察の仕事が「漏洩とか隠蔽とか、情報のゲームになってしまった」と感じ、刑事を続けていくことに嫌気がさし、辞めてゴム工場の警備主任に応募しようかと思い始めていた。

事件には関係ないのですが、ヴァランダーが乗っている車はドラマではボルボでしたが、本ではプジョーです。車に詳しくないので知らなかったのですが、ボルボってスウェーデンの自動車ブランドだったんですね。(プジョーはフランスだって)
スウェーデンらしさを出すためにボルボにしたのかしら?

ヴァランダーとチームを組み働いているのは、マーティンソンとスヴェートベリ。
スヴェートベリは毛の生え際がかなり後退している四十男で、イースタ生まれ。
仕事にあまり熱心ではない印象を与えるが、実は仕事は正確。
マーティンソンは西海岸近くのトロルヘッタン生まれで、三十歳。
警察でキャリアを築こうという野心があり、穏健党の党員。衝動的で、仕事はあらっぽいが、いいアイディアを思いつく。野心的なので、捜査過程で問題解決の糸口を見つけると、素晴らしい活躍を見せる。たまに厭世的になる。

モスビー・ストランドに二体の死人を乗せた救命ボートが打ち上げられたと、犬の散歩に出かけた女性が通報してきた。
二人は金髪の二十代の若者で、拷問された痕があり、歯の治し方からロシアか東欧諸国の人間だと思われた。
外務省から慎重に捜査するように言われる。

事件発生後四日目、救命ボートの二人はラトヴィア市民であるとラトヴィアのリガの警察から連絡が来る。
翌日、リガの犯罪捜査官リエパ中佐がスウェーデンにやって来る。
彼は背が低く、首がないように見える男で、チェーンスモーカーだが洞察力のある優れた警官だった。
しばらくして調査は打ち切られ、事件はリガに引継がれることになり、リエパ中佐はラトヴィアに帰る。
しかし帰国した日に殺される。
中佐の上司、プトニスがイースタ署に協力を求めてきた。

ヴァランダーはラトヴィアへ向かう。
1990年代初頭のソ連崩壊間際の共産主義国家ラトヴィアで、独立運動たけなわの中、ヴァランダーは一体何ができるのか…。

ラトヴィアでリエパ中佐の意志を継ぎ、命の危険をものともせずに活躍するヴァランダーですが、ちょっと残念なのは、彼が女に惚れっぽいというところです。
リエパ中佐の妻、バイバに惚れちゃって、一旦スウェーデンに帰ったにもかかわらず、再度、非合法的方法でラトヴィアに入り込むんですから。
おいおいミステリーではなくてメロドラマかよと思ってしまいました、笑。
映像化しやすいですね。

気になっていたヴァランダーのお父さんは、原っぱにぽつんと建っている一軒家に一人で住んでいます。
彼は三文画家で、日没の田舎の景色ばかり描いているようです。
ドラマではヴァランダーは滅多に会いに行っていませんでしたが、本ではまめに電話をかけたり、画材を買いに連れて行ったり、色々としています。
二人とも頑固で、似たもの親子のようで、会うと互いに反発し合うんです。
娘のリンダはストックホルム近くの専門学校に通っていて、学校の近くに下宿しています。
ヴァランダーと父の関係と彼と娘の関係が似ています。
娘も父親に似ているんです。
親子の関係はどこの国でも難しいんですね。

この本でヴァランダーは過労とストレスで、心因性(たぶん)の心臓発作や不整脈を感じ身体の心配をし、労働意欲を無くしています。
そして残虐な犯罪が増えている、こんな時代についていけないと思い、仕事を辞めたいとまで思いますが、それでも辞められないのは性でしょうか。
唯一の友人、リードベリが死んで、自分には話し相手がいない、信じられる人がいないと思うのはきついでしょうね。それに女性にも相手にされないようだしww。
そうそう、いいもの食べてないです。食べるのはオムレツ、ハンバーガー、ピッツァ…でコーヒーがぶ飲み。スウェーデン料理に美味しい物はないのかしら?
このままいくと、太ったブヨブヨの身体をしたさえない中年男で、糖尿病か心臓病持ちになりそう。
シリーズが終わる頃にはどうなっているのかしら。

ラトヴィアの名前は知っていましたが、それ以外の政治的、経済的、文化的なことなど全く知らないので、調べてみようと思いました。
ドラマとの違いが沢山あり、違い探しが面白そうなので(笑)、シリーズ九作品をすべて読んでいくことにします。