この頃読んだ本2022/10/14

大分前に読んで、忘れそうになったので、思い出しながら書いてます。
短時間で簡単に読める、文庫本です。


ほしおさなえ 『菓子屋横丁月光荘 金色姫』
シリーズも五作目になりました。
月光荘に住んでいる遠野守人は無事に修士論文を書き上げました。
卒業後も月光荘に住み続け、イベントスペースの運営を任されることになっています。
小正月に新井で行われる繭玉飾り作りを取材することになった守人は、友人の田辺にイベントの話をすると、田辺の祖母で守人と同じように家の声が聞こえる喜代さんも参加することになります。
繭玉って養蚕に関係があったんですね。
様々な人との縁が次々と繋がっていきます。
時には嬉しい再会があり、そして悲しい別れがあり…。
孤独だった守人の祖先のことがわかり、その上親戚が見つかったりと、彼の未来も明るいものとなっていくのでしょうね。
川越の町が描かれているので、一度行ってみたいと思っています。

池永陽 『珈琲屋の人々5 心もよう』
東京下町の商店街で「珈琲屋」を営む宗田行介のもとにやって来る人たちのお話。
今回は刑務所で知り合い、行介を兄貴と慕う順平と最近おでん屋を営み始めた美人女将・利央子の因縁話がメインです。
最初は面白く感じていたのですが、五巻目まで来るとだんだんと違和感が…。
人を殺した行介を見たいと思ってわざわざ「珈琲屋」まで行きますかぁ。
そんなに皆さん、人殺しを見たいんですかぁ。
いつまでもグダグダ言ってないで、冬子とサッサと結婚しなさい。
なんて言いたくなります。
なんで訳アリの人ばかりやって来るんでしょうねぇ。(そうじゃなきゃお話が進みませんがw)

長月天音 『神楽坂スパイス・ボックス』
美味しそうなものが出てくるのかと思って読んでみました。
読み始めてから失敗したかと思いました。だって男に振られた女がって、ありがちですもの。
五年間付き合っていたイタリアンレストランのシェフに振られた雑誌編集者のみのりは、彼を見返すために、シェフの夫が亡くなってから引きこもりを続けている姉のゆたかを強引に連れ出し、スパイス料理専門店を開店させる。
お姉さんのゆたかが有能で、次々と疲れた人たちを癒やす料理をあみ出していきます。
みのりと元彼が今一だけど、お料理は美味しそうで、こんなお店があったらいいなと思いました。

望月麻衣 『わが家は祇園の拝み屋さん EX 愛しき回顧録』
拝み屋さんシリーズを読んでいた方には必須の、その後のお話です。
あれから五年後。小春たちが高等部を卒業し、チームOGMは自然消滅したはずなのに、小春たちの活動を見て、自分もやりたいと思っていた後輩たちが集まり、再度チームOGMが結成されました。
先輩達に会いに行くと…。
オールメンバー登場の回ですので、ファンの方、読みましょうね。

十三湊 『出張料理みなづき 情熱のポモドーロ』
二十四歳になる遠藤季実は東京の本郷のおばあちゃんの家で暮らすことになります。
実は彼女、新卒で入った会社を二年も経たずに辞めてしまい、再就職する気力をなくし、家で引きこもり生活をしていたのです。
おばあちゃんは下宿屋をやっていて、今は皆月桃子という二十八歳の女性が下宿しています。桃子はろくでなし親父、母親蒸発、二十三歳でバツイチという女性で、普通なら不幸な部類に入りますが、とんでもない、とてもすごい女性なんです。何と言っても彼女が作る料理がとてもおいしいのです。
桃子は<出張料理みなづき>を仕事にしていて、依頼人の家や指定された会場に出向いて料理を作っています。
引きこもりだった季実は桃子の計略に乗せられ、ご飯を炊くことから始まり、野菜の皮むき、調理道具運びなどに使われ、アシスタントにされてしまいます。
無気力になっていた季実でしたが、下宿で桃子が作ったものを食べ、出張料理で様々なお客さんと接することで、だんだんと生きる意欲を取り戻していきます。

気に入った言葉。
「結局、人は自分の人生しか生きられないってこと」
「どんなに素敵なごはんも、毎日続いたら、それが『普通』になっちゃう。当たり前になったら、感謝もしないし、喜んだりもしないんですよ」
「毎日のことなのだから、一回一回の質よりも続けることが大切なのだ」

食べることを大事にしていきたいと思わせられたお話でした。

福澤徹三 『俠飯 8 やみつき人情屋台篇』
ごめん、今までこの本に出てくるお料理はあまり食べたいと思いませんでした。
でも今回の屋台のお好み焼きと鯛焼きはものすごく食べたいです。
どう見てもヤクザにしか見えない柳刃と火野のコンビが、極秘捜査をしながら、出会った若者に美味しいご飯を与えていく(?)というお話です。
今回彼らの手にかかった若者は、底辺ユーチューバーの葉室浩司。
コロナ禍で入ったホテルから希望退職を促され、それ以来就職もできず、バイトさえ探すのが大変という状態で、なんとか貯金を崩して暮らしてます。
ある日、浩司は上野公園で行われる「ダウンタウン、秋の美食フェス」で彼女がイベントスタッフのバイトをしているので、動画のネタ探しに行きます。
たまたま会場のすぐ外でやっていた屋台のお好み焼きと鯛焼きを食べたのがきっかけになり、まかないをご馳走され、レシピを教える代わりに屋台を手伝うことになってしまいます。
さて、柳刃たちの今回の捜査はなんでしょうね。

「親ガチャ」という言葉を今は使うのですか。なんか嫌な言葉ですね。
そう思っている人に「他人になにかを求め続ける限り、おまえはいつまで経っても満たされない」という柳刃の言葉をあげたいですね。
そして将来のことが不安で、一歩が踏み出せない人には、「将来を気に病んで、いまを粗末にするな。人生はいつでも、いまがいちばん若い。いまを充実させられない者は、将来もきっと悩んでいるだろう」。
そして、大人たちに。
「若者が将来に希望を持てない最大の原因は、こんなふうになりたいと思わせる大人がまわりにいないことだ」
耳が痛いですね。

どの本もそれなりに面白いので、お暇な時に手に取ってみて下さい。